ネットワークの設計や設定において避けて通れないのが「サブネット」の理解と計算です。
IPアドレスにサブネットマスクを組み合わせることで、ネットワークを分割・整理し、効率的に通信を行うことができます。
本記事では、サブネットの基本的な概念から、実際の計算方法、CIDR(サイダー)表記の読み方まで、初心者の方にもわかりやすく丁寧に解説します。
サブネットとは何か?基本から理解しよう
IPアドレスは、ネットワーク部分とホスト部分に分けられています。
この分け方を調整するために使われるのが「サブネットマスク」です。
たとえば、IPアドレス「192.168.1.10」に「255.255.255.0」というマスクをつけると、「192.168.1」がネットワーク部分、「10」がホスト部分という意味になります。
つまり、サブネットとは、大きなネットワークを小さなグループに分割する仕組みのこと。
ネットワークの分割によって、効率的なIPアドレスの割り当て、トラフィックの管理、セキュリティ強化などのメリットが得られます。
サブネットマスクの役割と構造を理解しよう
サブネットマスクは、IPアドレスと同様に32ビットで表されます。
ビットが「1」であればネットワーク部、「0」であればホスト部を意味します。
例:
- サブネットマスク「255.255.255.0」は、ビットで書くと「11111111.11111111.11111111.00000000」
- つまり最初の24ビットがネットワーク部、残りの8ビットがホスト部になります。
このマスクをIPアドレスとAND演算することで、そのIPがどのネットワークに属するかがわかるのです。
CIDR表記とは?簡単にマスターしよう
CIDR(Classless Inter-Domain Routing)表記とは、IPアドレスの後ろにスラッシュ(/)とビット数を付けて、サブネットマスクの長さを表す方法です。
例:
- 「192.168.1.0/24」 → サブネットマスクは255.255.255.0
- 「10.0.0.0/16」 → サブネットマスクは255.255.0.0
CIDR表記を使うと、柔軟なネットワーク設計が可能になります。
たとえば、「/27」なら32個のIPアドレスが使えます(うち30個がホスト用)。
サブネットの計算手順をステップで解説
サブネットの計算は、一見すると複雑に見えるかもしれませんが、手順に沿って行えば理解できます。
ステップ1:必要なホスト数を決める
たとえば、20台の機器にIPアドレスを割り当てたい場合、必要なホスト数は「20台 + 2(ネットワークアドレスとブロードキャストアドレス)」=22台です。
ステップ2:ホスト部のビット数を計算
2のn乗-2 ≥ 必要なホスト数になる最小の「n」を求めます。
例:2⁵-2=30 ≥ 22 ⇒ ホスト部は5ビット必要
ステップ3:ネットワーク部のビット数を算出
32ビットからホスト部のビット数を引くと、ネットワーク部の長さが求まります。
例:32-5=27 ⇒ CIDR表記は「/27」
ステップ4:サブネットマスクを求める
「/27」は、ビットで書くと「11111111.11111111.11111111.11100000」
⇒ これを10進数に変換すると「255.255.255.224」
サブネットの例題:実際にやってみよう
例題:192.168.10.0/26 のネットワークを分解してみる
- 「/26」なので、ネットワーク部は26ビット、ホスト部は6ビット
- ホスト数は 2⁶-2 = 62台
- 利用可能なIP範囲は?
- ネットワークアドレス:192.168.10.0
- ブロードキャストアドレス:192.168.10.63
- 利用可能範囲:192.168.10.1~192.168.10.62
このように、IPアドレスの範囲を細かく分けて、必要に応じたネットワーク設計が可能になります。
よく使うCIDRとホスト数の早見表
CIDR | サブネットマスク | 利用可能ホスト数 |
---|---|---|
/30 | 255.255.255.252 | 2 |
/29 | 255.255.255.248 | 6 |
/28 | 255.255.255.240 | 14 |
/27 | 255.255.255.224 | 30 |
/26 | 255.255.255.192 | 62 |
/25 | 255.255.255.128 | 126 |
/24 | 255.255.255.0 | 254 |
これを使えば、設計時にぱっと最適なサブネットサイズを見つけることができます。
サブネット分割の注意点とベストプラクティス
- ホスト数の余裕をもたせる:将来的な拡張を考慮し、ギリギリのサイズにしない
- クラスC以上のIPは分割に注意:/30や/29などはVPNやルーター間接続に使われることが多い
- 用途ごとに分割:社内LAN、ゲストWi-Fi、監視機器など用途ごとに分けると管理しやすい
- セキュリティ面でも有効:サブネットを分けておくことで、意図しない通信を防ぐことができます
まとめ:サブネットの理解はネットワーク構築の第一歩
サブネットの計算は、最初は苦手意識を持つ方も多いですが、仕組みを理解していけば自然と身につきます。
IPアドレスの設計や管理において、サブネットを使いこなせることは大きな強みです。
本記事を参考に、ぜひ手を動かしてサブネットの計算にチャレンジしてみてください。