Power BIを使いこなすために欠かせないのが「クエリ」の理解です。
クエリとは、データを読み込み、整形し、分析に使える形へ変換するための処理のこと。Power BIでは「Power Queryエディター」を使って、コードを書かなくてもデータを自由自在に整えることができます。
しかし、クエリの仕組みや編集方法がわかっていないと、「意図しないデータになる」「更新時にエラーが出る」「複雑な表に対応できない」といった問題が発生することもあります。
この記事では、Power BIのクエリについて、初心者でも理解しやすいように基礎から応用まで詳しく解説します。実際の業務で役立つ機能や、効率的なデータ整形のコツ、知っておくと便利なM言語も紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
Power BIにおける「クエリ」とは何か
Power BIにおける「クエリ」とは、外部データを読み取り、必要な形に加工するための一連の処理を指します。
クエリはPower BI Desktopの「Power Queryエディター」で実行され、ExcelのPower Queryと同じ仕組みで動いています。
● クエリの役割
クエリは、次のようなデータ変換を行うために使われます。
- 不要な列を削除する
- 列名を変更する
- データ型を変換する(文字列 → 日付など)
- 行のフィルタリング
- 集計・グループ化
- 列の追加(計算列、条件列など)
- 複数テーブルの結合・マージ
- 重複の削除やソート
これらを、GUI操作だけで順番に実行でき、クエリの設定内容は画面右側の「適用したステップ」に記録されます。
● クエリは“データを分析する前の重要工程”
Power BIはビジュアル分析ツールですが、分析を成功させるには「データの品質」が欠かせません。
クエリはまさに「データ整形」「品質向上」を担う重要ステップであり、クエリの理解はPower BI習得のカギとなります。
Power Queryエディターの基本操作
まずは、Power BIでクエリ編集を行うための画面「Power Queryエディター」の特徴と基本操作について説明します。
● Power Queryエディターを開く方法
Power BI Desktopのホームタブ →「データの変換」をクリックすると開くことができます。
● 主な画面構成
- クエリ一覧(左側)
読み込んだデータソースや、結合後のテーブルが一覧表示されます。 - プレビュー画面(中央)
実際のデータを確認しながら加工できます。
※この画面のデータは「プレビュー」であり、本物のデータソースを書き換えることはありません。 - 適用したステップ(右側)
列削除やデータ型変換など、行った処理が自動的に記録されます。
ステップ順序の変更・削除も可能です。 - リボンメニュー(上部)
「変換」「列の追加」「ホーム」「表示」などのタブがあり、主要な機能が集約されています。
● クエリの処理は“ステップ方式”
Power Queryは「ステップごとに変換内容を積み重ねていく」方式で動作します。
例:
- 列Aを削除
- 列Bのデータ型を文字列に変更
- 行をフィルタリング
- 新しい列を追加
という処理がステップとして順番に記録され、更新時に同じ手順が自動実行されます。
よく使うクエリ操作(基本編)
ここでは、Power Queryでよく使う基本操作をまとめて紹介します。日常業務でも頻繁に登場する機能ばかりです。
● 1. 不要な列・行の削除
データには不要な列や欠損行が含まれていることがよくあります。
右クリック →「削除」で簡単に除去できます。
● 2. データ型の変更
Power BIはデータ型によって扱い方が変わるため、適切な型に変換することが重要です。
- 文字列(Text)
- 数値(Int / Decimal)
- 日付
- 日付時刻(DateTime)
- True/False
型が合っていないと、グラフ化や並び替えでエラーが発生します。
● 3. フィルターで必要な行のみ抽出
列の右上にあるフィルターボタンから簡単に絞り込みが可能。
例:
- 「売上 > 1,000 のみ」
- 「2024年以降に絞る」
- 「空白行を除外」など
● 4. 列名の変更
レポートでわかりやすい名前にしておくと後々便利です。
● 5. ソート(並び替え)
昇順・降順を選ぶだけで並べ替えできます。
これらはクエリ編集の基本ですが、データ整形の土台として非常に重要な操作です。
クエリ操作の応用編(便利機能を詳しく解説)
基本操作に慣れてきたら、次の応用操作を使うことで効率が大きく向上します。
● 1. 列の分割
「姓と名が同じ列に入っている」
「日付と時刻が1つの列」
といったケースに便利です。
例:
「2024/04/01 12:00」
→ 「日付」「時間」に分割
● 2. 列の結合(マージ)
別テーブルと結合したいときに使います。
ExcelのVLOOKUPに近い機能です。
結合方法には次の種類があります。
- 左外部結合(最も一般的)
- 内部結合
- 右外部結合
- 完全外部結合
キー列を選ぶだけで簡単にテーブルを統合できます。
● 3. 行の追加(アペンド)
Excelでいう「表を縦に並べる」操作です。
月ごとにファイルが分かれている場合などに便利。
● 4. 条件列の追加
IF文のような条件分岐で新しい列を作れます。
例:
売上が10万円以上 → 「優良顧客」
10万円未満 → 「一般」
● 5. グループ化(集計)
カテゴリごとに
- 数値の合計
- 平均
- 件数
- 最大値
- 最小値
などを集計できます。
● 6. ピボット/アンピボット
縦持ち ↔ 横持ちの変換に使います。
- アンピボット:列を行方向に展開
- ピボット:行を列方向に変換
アンケート集計や人事データの整形に大変便利です。
M言語とは?クエリを支える仕組みを理解する
Power Queryでは、裏側で「M言語」というコードが動いています。
GUI操作だけで多くの作業ができますが、M言語を理解すると次のことが可能になります。
● M言語を理解するメリット
- 複雑な処理をより簡潔に書ける
- GUIではできない細かい条件を追加できる
- ステップの編集を直接コードで修正できる
- データ整形のロジックを読み解ける
● 実際のM言語の例
列の削除ステップは次のように記録されます。
= Table.RemoveColumns(PreviousStep,{"列名1","列名2"})
データ型の設定は次のようになります。
= Table.TransformColumnTypes(PreviousStep,{{"日付列", type date}})
これらは自動生成されるため、基本的には覚える必要はありませんが、理解しておくとトラブル時の対応が非常に早くなります。
クエリ編集を効率化するためのコツ
ここでは、Power BIでよく使われる「効率化テクニック」を紹介します。
● 1. ステップ名をわかりやすく変更する
デフォルトでは「変更された型」など抽象的な名前が付くため、後から見返すとわかりづらいことがあります。
例:
- 「日付列の型を日付に変更」
- 「不要列を削除」
- 「売上の条件列追加」
● 2. 不要なステップは削除または統合
ステップが多すぎると処理が重くなります。
一度に同じ列操作をやる場合はまとめた方が効率的です。
● 3. ソースデータの変更に強いクエリを作る
ファイル名やフォルダ名をハードコードすると更新で失敗しやすいです。
フォルダ読み込み機能や相対パスの利用が推奨。
● 4. 参照クエリを活用する
同じ元データを基に複数の加工テーブルを作る場合、クエリの「参照」を利用することで管理が楽になります。
● 5. 列の追加は必要最低限に
計算列を多用しすぎるとモデルが重くなります。
必要なものだけを作るのがポイント。
実務でよくあるクエリ活用例
Power BIを企業で活用する場合、次のようなケースでクエリが役立ちます。
● 1. 毎月更新される売上データの自動整形
- CSVファイルをフォルダに保存するだけ
- Power BIが自動で結合・整形
- レポートも更新
月次業務がワンクリックで完了します。
● 2. 人事データの縦横変換
- アンピボットで年度ごとの評価データを縦持ちに
- ピボットで部署別の人数集計を作成
● 3. 複数システムからのデータ統合
販売管理・勤怠・基幹システムのデータをクエリでマージし、一元化できます。
● 4. ログデータのクレンジング
- 空白行の削除
- 型の統一
- エラーデータの除外
クエリによって、レポートの正確性が大きく向上します。
まとめ|クエリを理解するとPower BIが一気に使いこなせるようになる
Power BIのクエリは、データ分析の土台を作る非常に重要な機能です。
クエリ編集の基本操作から応用、M言語の仕組み、効率化のコツまで理解しておくことで、レポート作成のスピードと品質が大きく向上します。
