Excelでデータを扱う際、「複数の表を結合したい」と思ったことはありませんか?
Power Queryを使えば、関数を使わずに複雑なデータ結合を簡単に行うことができます。
本記事では、Power Queryで使える2種類の結合方法「マージ(縦方向の結合)」と「追加(横方向の結合)」について、初心者にもわかりやすく解説します。
さらに、よくあるエラーの原因や実務で使える応用テクニックも紹介します。
Power Queryとは?結合を理解する前に知っておきたい基本
Power Queryは、ExcelやPower BIに搭載されている「データの取り込み・整形・結合」を自動化できる強力な機能です。
「データの前処理ツール」とも呼ばれ、複数のCSVやExcelファイルをまとめて処理できるのが特徴です。
Power Queryを使うと、次のような作業が簡単になります。
- 部署ごとの売上表を1つにまとめる
- 顧客マスタと取引データを結合して分析用の表を作る
- 毎月更新されるデータを自動で統合
特に「結合」はPower Queryの中でも最もよく使われる機能です。
その結合には「マージ(Merge)」と「追加(Append)」という2つの方法があります。
Power Queryの結合には2種類ある
Power Queryでは、データを結合する方法として次の2種類があります。
① マージ(Merge)
→ 共通の列(キー)をもとに、横方向にデータを結合します。
例:顧客IDで「顧客マスタ」と「売上表」を結合する。
② 追加(Append)
→ 同じ構造の表を縦方向に結合します。
例:4月、5月、6月の売上データを1つの表にまとめる。
それぞれの使い方を順番に見ていきましょう。
マージ(Merge)で表を横に結合する方法
1. マージを使う場面
- 共通のキー(例:社員ID、商品コードなど)で2つの表を組み合わせたいとき
- Excelの「VLOOKUP関数」と同じようなことをしたいとき
2. マージの手順
Step 1. Power Queryエディターを開く
Excelの[データ]タブ → [データの取得] → [テーブルまたは範囲から]を選択し、Power Queryエディターを開きます。
Step 2. 結合したい両方のクエリを用意
2つの表をそれぞれPower Queryに読み込みます。
(例:「顧客マスタ」「売上データ」)
Step 3. [ホーム]タブ → [クエリの結合] → [クエリのマージ]をクリック
マージ画面が開いたら、上側に「主テーブル」、下側に「結合するテーブル」を選択します。
Step 4. 共通の列(キー)を選択
顧客IDなど、両方の表に共通する列をクリックして選択します。
結合の種類も選択できます。
Step 5. 結合の種類を選ぶ
Power Queryでは次の6種類の結合方法を選択できます。
| 結合の種類 | 説明 |
|---|---|
| 左外部結合 | 主テーブルのすべての行を残し、該当する行だけを結合 |
| 右外部結合 | サブテーブルのすべての行を残す |
| 内部結合 | 両方に共通するキーだけを結合 |
| 完全外部結合 | 両方のテーブルのすべての行を残す |
| 左反結合 | 主テーブルのうち、サブに存在しない行を抽出 |
| 右反結合 | サブテーブルのうち、主に存在しない行を抽出 |
Step 6. 展開して列を追加
結合後、右端に「テーブル」という列が追加されます。
そこにある「展開」アイコンをクリックして、取り込みたい列を選択します。
追加(Append)で表を縦に結合する方法
1. 追加を使う場面
- 毎月の売上データなど、同じ構造の表を一つにまとめたいとき
- ファイルを分けて管理している部署データを統合したいとき
2. 追加の手順
Step 1. Power Queryエディターを開く
同様に、結合したい全ての表をPower Queryに読み込みます。
Step 2. [ホーム]タブ → [クエリの結合] → [クエリの追加]を選択
「2つのテーブルを追加」または「3つ以上のテーブルを追加」を選択します。
Step 3. 結合する順序を選ぶ
どのテーブルを上に置くか選択し、「OK」をクリックします。
Step 4. 結果を確認
同じ列名の項目が自動的に揃えられ、1つの表にまとめられます。
結合でよくあるエラーと対処法
① キーのデータ型が違う
結合キー(例:顧客ID)が「文字列」と「数値」で異なる場合、結合されません。
対処法:両方の列を選択して「データ型を変換」→「テキスト」または「数値」に統一します。
② 列名が一致していない
追加結合の場合、列名が異なると別の列として扱われます。
対処法:Power Query上で「列の名前を変更」し、統一します。
③ 同じ列名が重複している
マージ後に「列名1」「列名2」と自動的に付与される場合があります。
対処法:「展開」時に列名を手動で設定するか、後でリネームします。
実務で役立つ応用テクニック
1. フォルダ内の複数ファイルを自動で結合
毎月のCSVをまとめたい場合は、
「データの取得」→「フォルダから」→ Power Queryで読み込むと自動的に追加結合されます。
2. 結合後に不要な列を削除
マージ後の余分な列は、右クリックで「列の削除」を選択。
処理が軽くなり、後の分析がしやすくなります。
3. 結合を自動更新
Power Queryは一度設定すれば、[データの更新]をクリックするだけで最新データに反映されます。
毎月のレポート作成を自動化できます。
Power Queryの結合とVLOOKUPの違い
| 比較項目 | Power Query | VLOOKUP関数 |
|---|---|---|
| 対応範囲 | 複数のファイル・シート | 同一ブック内が基本 |
| 更新方法 | [更新]ボタンで自動反映 | 手動で再計算 |
| 結合方向 | 横(マージ)・縦(追加)両方 | 横方向のみ |
| 処理速度 | 大量データでも高速 | データが多いと遅い |
| 再利用性 | クエリを保存可能 | 関数を毎回書く必要あり |
Power Queryを使うと、より柔軟かつ自動化された結合が可能になります。
Power Query結合での注意点
- 結合キーは必ずデータ型と内容を揃える
- 結合する列が多いと処理が重くなる
- Excel 2016以降であればPower Queryは標準搭載
- 旧バージョンでは「Power Queryアドイン」をインストールする必要あり
まとめ
Power Queryの「結合」は、Excelの作業効率を劇的に向上させる便利な機能です。
- マージ(Merge):共通キーを使って横に結合
- 追加(Append):同じ構造の表を縦に結合
一度設定すれば、自動で最新データに更新できるため、
「毎月の売上集計」「部署ごとの統合」「顧客マスタとの照合」など、幅広い場面で活躍します。
VLOOKUPよりも柔軟で再利用性が高いPower Queryを使いこなすことで、
あなたのExcel業務は確実にスピードアップします。
