葬儀の場では、参列者から「香典」をいただくことが一般的です。
しかし、遺族の意向や故人の希望によって「香典を辞退したい」と考える場合も少なくありません。香典を受け取らないことを決めた場合、どのように伝えれば相手に失礼なく、気持ちを汲んでもらえるのでしょうか。
本記事では、香典を辞退する際の基本的な考え方やマナー、そして実際に使える具体的な例文を紹介します。場面に応じた表現を知っておくことで、遺族側も参列者側も心穏やかに見送ることができます。
香典を辞退する背景と理由
香典を辞退する背景には、さまざまな理由があります。代表的なものを整理してみましょう。
- 故人の遺志による場合
故人が生前から「香典は辞退してほしい」と望んでいたケースです。生前の希望を尊重するため、遺族が辞退を伝えることがあります。 - 経済的な負担を避けるため
香典を受け取ると、返礼品を準備しなければなりません。遺族側の負担を軽減するために、香典を一律に辞退することがあります。 - 家族葬や直葬の場合
小規模な葬儀や直葬では「身内だけで静かに見送りたい」という意向から、香典辞退が一般的に行われます。 - 参列者への配慮
遠方から参列してくれる方や高齢の方に対し、金銭的な負担をかけないように配慮して辞退を選ぶこともあります。
香典を辞退する際の基本マナー
香典を辞退する場合には、次の点を意識すると相手に失礼なく伝えられます。
- 事前に案内で明記する
通夜や葬儀の案内状に「誠に勝手ながら香典は辞退させていただきます」と記載することで、混乱を避けられます。 - 表現は丁寧かつ簡潔に
長々と説明するのではなく「ご厚志はご辞退申し上げます」とシンプルに伝えるのが基本です。 - 気持ちを受け取る姿勢を示す
「お気持ちだけありがたく頂戴いたします」と添えると、相手の心情を尊重できます。
香典を辞退する例文(案内文)
実際に葬儀の案内で使える例文を紹介します。
例文1:一般的な葬儀案内
「このたびの葬儀に際しましては、誠に勝手ながら香典は固くご辞退申し上げます。皆様のご厚志につきましてはお気持ちだけありがたく頂戴いたします。」
例文2:家族葬の場合
「なお、故人の遺志により、葬儀は家族葬にて執り行います。つきましては、誠に勝手ながらご香典やご供物はご辞退申し上げます。」
例文3:返礼不要を強調する場合
「皆様のご厚志は大変ありがたく存じますが、今回の葬儀では香典の儀は固くご辞退申し上げます。何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。」
香典辞退を口頭で伝える例文
受付や電話で香典を辞退する場合の言い回しも紹介します。
例文4:受付で伝える場合
「本日はご会葬いただきありがとうございます。恐縮ですが、故人の遺志により香典はご辞退させていただいております。」
例文5:電話で伝える場合
「お気遣い誠にありがとうございます。ただ、誠に勝手ながら今回は香典を辞退させていただいておりますので、お気持ちだけありがたく頂戴いたします。」
香典辞退を丁寧に伝えるコツ
- 相手の厚意を受け止める言葉を添える
「お気持ちは十分に伝わっております」と添えることで、角が立ちません。 - 故人の意向を理由にする
「故人の生前の希望により」とすれば、個人の都合ではなく尊重すべき理由として受け取られやすいです。 - 「固辞」よりも「辞退」の表現を使う
「固辞します」よりも「辞退申し上げます」の方が柔らかい印象になります。
香典辞退に関するよくある質問
Q1. 香典を辞退したのに持参された場合は?
その場で強く断ると相手を傷つけることもあります。受け取った上で「後日、返却する」または「供養料として扱う」方法があります。
Q2. 香典を辞退しても供花は受け取ってよい?
香典と供花は別の扱いですが、辞退の意向を徹底する場合は「供花も辞退」と明記しておくのが望ましいです。
Q3. 香典辞退は失礼にならない?
決して失礼にはあたりません。ただし、伝え方が不十分だと誤解を生むため、案内や口頭で明確に伝えることが重要です。
まとめ
香典を辞退することは珍しいことではなく、近年では家族葬や直葬が増えたことから一般的になりつつあります。
大切なのは「故人や遺族の思いを尊重しながら、相手に失礼なく伝える」ことです。
- 案内文では「誠に勝手ながら香典は辞退させていただきます」とシンプルに書く。
- 口頭では「お気持ちだけありがたく頂戴いたします」と添える。
- 故人の希望を理由にすると、理解を得やすい。
これらのポイントを押さえておけば、参列者にも誠意が伝わり、落ち着いた雰囲気で故人を見送ることができます。