未成年者は法律上、自己の権利を完全に行使する能力が制限されています。これは、判断能力が未熟な未成年者を保護し、不利な契約やトラブルから守るための制度です。そこで、親権者や未成年後見人といった「法定代理人」が未成年者をサポートする仕組みが用意されています。
法定代理人には、主に以下の4つの権限があります。
- 取消権：未成年者が法律行為をした場合に、それを取り消す権利
- 同意権：未成年者が法律行為をする際に事前に同意を与える権利
- 追認権：未成年者が成年になった後に、過去の法律行為を有効と認める権利
- 代理権：未成年者に代わって法律行為を行う権利
本記事では、これらの権限の内容や具体的な適用場面について詳しく解説します。未成年者の法的保護に関する知識を身につけ、正しい理解を深めましょう。
未成年者の法的保護とは？
日本の民法では、未成年者（20歳未満・※成人年齢は18歳）が単独で法律行為を行うことは原則として認められていません。これは、未成年者が契約などを行う際に不利益を被る可能性が高いためです。そのため、親権者や未成年後見人が法定代理人となり、未成年者を保護するための権限を持っています。
以下、法定代理人の持つ4つの主要な権限について詳しく見ていきましょう。
① 取消権とは？未成年者の契約は取り消せる？
取消権とは、未成年者が法律行為（契約など）をした場合に、後から法定代理人がその行為を取り消せる権利です。
【具体例】
- 高校生が親に無断で高額なスマートフォンを契約した場合
- 中学生がインターネット通販で高価なゲーム機を購入した場合
これらの契約は、親権者（または未成年者自身）が取り消すことができます。取消権は未成年者を保護するために非常に重要な役割を果たしています。
【取消権の制限】
ただし、以下のような場合は取り消しができません。
- 法定代理人の同意があった場合（例：親が購入を許可した）
- 未成年者が成人（18歳以上）になり、自分で契約を認めた場合
- 未成年者が「営業を許可」されている場合（例：個人事業主として親の許可を得て営業している）
未成年者が一度契約をしたとしても、親権者が取消権を行使できることを知っておくことが重要です。
② 同意権とは？未成年者が契約する際の事前同意
同意権とは、未成年者が法律行為をする際に、事前に法定代理人の同意を得る必要がある権利のことです。
【具体例】
- 高校生がアルバイト契約を結ぶ場合、親の同意が求められることが多い
- 18歳未満の子どもがスポーツクラブの会員契約をする際、親のサインが必要
事前に法定代理人の同意を得ることで、未成年者が不用意に不利な契約を結ぶのを防ぐ役割を果たします。
【同意が不要な場合】
一方で、以下のような場合は未成年者が単独で法律行為をすることができます。
- 日常的な買い物（少額のもの）（例：コンビニでお菓子を買う）
- 未成年者自身が成年になった場合（18歳以上）
③ 追認権とは？未成年者が成人後に契約を認める
追認権とは、未成年者が成年（18歳以上）になった後に、過去の法律行為を「有効」と認める権利のことです。
【具体例】
- 17歳のときに親の同意なくバイクを購入したが、18歳になって「この契約を有効にしたい」と思った場合
- 16歳のときにオンラインゲームの課金契約を結び、18歳になってその契約を正式に認める場合
追認することで、未成年時の契約が確定的に有効となります。ただし、追認せずに取り消すことも可能です。
④ 代理権とは？未成年者に代わって行動できる権利
代理権とは、法定代理人が未成年者に代わって法律行為を行う権利のことです。
【具体例】
- 親が未成年者に代わって賃貸契約を結ぶ
- 未成年者の銀行口座開設を親が代行する
代理権があることで、未成年者が行えない行為を親が代わりに実施できるようになります。
【まとめ】未成年者の保護制度を正しく理解しよう
未成年者を法律的に保護するため、法定代理人には以下の4つの重要な権限があります。
- 取消権：未成年者の契約を取り消せる
- 同意権：事前に親の許可が必要な契約を管理
- 追認権：未成年者が成人後に過去の契約を認める権利
- 代理権：親が未成年者に代わって契約を行う
未成年者が社会で安心して生活できるように、法定代理人の権限がどのように働くのかを知ることが重要です。また、18歳になると成年となり、一部の権限が適用されなくなるため、自身の権利と責任についても理解を深めておくことが求められます。