スマートフォンやパソコンで「連絡先をエクスポートする」と出てくる「VCFファイル」。
拡張子が“.vcf”のこのファイルは、連絡先情報を保存・共有するための標準形式です。
しかし、「中身はどうなっているの?」「他の端末に移すにはどうすればいい?」と疑問に思う方も多いでしょう。
この記事では、VCFファイルの基本的な仕組み、ファイル構造の読み方、そしてスマホやPC間での移行方法までをわかりやすく解説します。
VCFファイルとは?基本の仕組みを理解しよう
VCFファイルとは、「vCard(ブイカード)」と呼ばれる電子名刺フォーマットの1つで、主に連絡先情報を保存するためのテキストファイルです。
拡張子が“.vcf”で、名前、電話番号、メールアドレス、住所、会社名などの個人情報を1人分または複数人分まとめて記録できます。
もともとは1990年代に電子メールの普及とともに誕生し、現在ではほぼすべてのスマートフォン(iPhone、Android)やメールアプリ(Outlook、Thunderbirdなど)で対応しています。
連絡先データを簡単に共有・移行できる利便性から、ビジネスや個人利用のどちらでも広く使われています。
VCFファイルの構造を詳しく見る
VCFファイルは、実は「プレーンテキスト」で書かれています。
メモ帳などのテキストエディタで開くと、中身を直接確認できます。
例:VCFファイルの中身(1件分)
BEGIN:VCARD
VERSION:3.0
FN:山田 太郎
TEL;TYPE=CELL:09012345678
EMAIL:taro.yamada@example.com
ORG:株式会社サンプル
END:VCARD
各項目には意味があり、以下のように構成されています。
| 項目 | 意味 |
|---|---|
| BEGIN:VCARD / END:VCARD | vCardデータの開始と終了を示す |
| VERSION | vCardのバージョン(2.1、3.0、4.0など) |
| FN | フルネーム(Full Name) |
| TEL | 電話番号(TYPEで携帯、固定などを指定) |
| メールアドレス | |
| ORG | 所属組織(会社名など) |
複数人分の連絡先をまとめる場合は、この構造が繰り返されるだけです。
シンプルでありながら、多様なデータを格納できるのがVCFの特徴です。
VCFファイルのバージョンの違い
vCardにはいくつかのバージョンが存在します。
代表的なものは以下の3種類です。
- vCard 2.1:古い携帯電話などで使われていた形式。Shift-JISで書かれている場合も多い。
- vCard 3.0:現在最も一般的。UTF-8対応で、スマホやパソコン間での互換性が高い。
- vCard 4.0:新しい規格。SNSやWeb連携などにも対応しているが、対応アプリはまだ少なめ。
連絡先を移行する際は、相手側のデバイスがどのバージョンをサポートしているかを確認するのがポイントです。
特に古いガラケーやOutlookの一部バージョンでは、vCard 3.0以上が読み取れないこともあります。
VCFファイルをスマホで扱う方法
Androidの場合
Androidでは、連絡先アプリから簡単にVCFファイルをエクスポート・インポートできます。
エクスポート手順
- 「連絡先」アプリを開く
- メニューから「設定」→「エクスポート」
- 保存先(内部ストレージやGoogleドライブ)を選択
contacts.vcfが生成される
インポート手順
- 「連絡先」アプリを開く
- 「設定」→「インポート」
- 保存しておいた
contacts.vcfを選択 - 連絡先が端末に復元される
Googleアカウントと連携していれば、自動的に同期されるため、VCFファイルを経由せずにバックアップも可能です。
iPhoneでVCFファイルを使う方法
iPhoneでもVCFファイルを簡単に読み込めます。
ただし、扱い方はAndroidと少し異なります。
エクスポート
iPhone単体ではVCF出力機能が制限されているため、以下の方法が便利です。
- iCloudにアクセスし、ブラウザで「連絡先」を開く
- 連絡先を全選択
- 左下の「歯車アイコン」→「vCardを書き出す」を選択
.vcfファイルがPCにダウンロードされる
インポート
- メールやAirDropでVCFファイルをiPhoneに送信
- ファイルを開くと自動的に「連絡先に追加」画面が表示される
- 「新規連絡先を作成」または「既存の連絡先に追加」を選ぶ
このように、iPhoneでも手軽にVCFファイルでの連絡先移行が可能です。
パソコンでVCFファイルを読み込む方法
WindowsでもMacでも、VCFファイルは簡単に開けます。
特別なアプリを使わなくても、テキストとして内容を確認できます。
Outlookの場合
- Outlookを起動
- 「ファイル」→「開く/エクスポート」→「インポート/エクスポート」
- 「vCardファイル(.vcf)」を選択してインポート
Thunderbirdの場合
- Thunderbirdを開く
- 「アドレス帳」→「ツール」→「インポート」
- 「vCardファイル」を選択し、対象ファイルを指定
これでVCFファイル内の連絡先がメールソフトに追加されます。
VCFファイルを他の形式に変換する方法
VCFファイルは万能ですが、他のシステムで扱う際にはCSV形式に変換したいこともあります。
たとえば、Excelで編集したい場合などです。
オンライン変換サイトを使う
無料の「VCF to CSV Converter」などのサイトを利用すれば、数クリックで変換できます。
コマンドやスクリプトで変換する
技術的に詳しい人であれば、Pythonなどで以下のように変換も可能です。
import vobject
import csv
with open('contacts.vcf', 'r', encoding='utf-8') as f:
vcards = vobject.readComponents(f.read())
with open('contacts.csv', 'w', newline='', encoding='utf-8') as csvfile:
writer = csv.writer(csvfile)
writer.writerow(['Name', 'Phone', 'Email'])
for v in vcards:
name = v.fn.value if hasattr(v, 'fn') else ''
phone = v.tel.value if hasattr(v, 'tel') else ''
email = v.email.value if hasattr(v, 'email') else ''
writer.writerow([name, phone, email])
これにより、VCFファイルの内容をCSV形式で出力できます。
VCFファイルを使った連絡先移行のポイント
VCFファイルを使って連絡先を移行する際には、以下の点に注意しましょう。
- 文字化けに注意
特に古い端末で作成されたVCF(vCard 2.1)はShift-JISで書かれているため、UTF-8の環境では文字化けすることがあります。 - 重複登録の確認
インポート時に同じ連絡先が複数回追加される場合があるため、整理しておくことが大切です。 - クラウド連携の活用
GoogleアカウントやiCloudを活用すれば、VCFを経由せずに連絡先が自動同期されるため、管理がより簡単になります。
まとめ
VCFファイルは、連絡先情報を安全かつ簡単に移行・共有できる便利なデータ形式です。
中身はテキスト構造で、バージョンによって互換性が異なる点に注意が必要です。
スマホ間のデータ移行やバックアップ、メールソフトへの取り込みなど、さまざまな場面で活用できるVCF。
その仕組みを理解すれば、データ移行のトラブルもぐっと減らせます。
次回の機種変更やバックアップの際には、ぜひVCFファイルを活用してみてください。
