Power Queryは、ExcelやPower BIに搭載されている強力なデータ変換ツールです。
「関数が難しい」「データ整形に時間がかかる」と悩む方でも、Power Queryを使えば複雑な処理を自動化できます。
この記事では、Power Queryでできることをわかりやすく解説し、実務で役立つ活用例も紹介します。
Power Queryとは?
Power Queryは、Microsoftが提供する「データの取得・変換・整形」を簡単に行えるツールです。
Excelでは「データ」タブの「データの取得と変換」グループから起動できます。
もともとはアドインとして提供されていましたが、現在ではExcel 2016以降に標準搭載されています。
プログラミング知識がなくても、複数のデータソース(CSV、データベース、Webなど)を取り込み、整理、結合することが可能です。
「Power Queryエディター」という専用画面でステップごとに操作を記録でき、同じ処理を自動で再実行できるのが最大の特徴です。
Power Queryでできること①:データの取得と接続
Power Queryの基本機能は「データの取り込み」です。
Excelだけでなく、さまざまな外部データに接続できます。
主な対応ソース:
- Excelブック
- CSV、TSVなどのテキストファイル
- Webページ(HTMLテーブルなど)
- SQL Server、MySQL、Oracleなどのデータベース
- SharePointやOneDrive
- Power BIやAzureサービス
たとえば、複数のCSVファイルをまとめて読み込むことも可能です。
フォルダー単位で取り込む設定をすれば、ファイルが追加されても自動で統合できます。
Power Queryでできること②:データの整形・クリーニング
取り込んだデータをそのまま使えるケースは少なく、列名やフォーマットの調整が必要です。
Power Queryはこの「整形処理」が得意分野です。
主な変換操作:
- 不要な列・行の削除
- 列名の変更
- 空白やエラー値の削除・置換
- 日付・数値・文字列の型変換
- 重複データの削除
- セルの分割・結合
- 条件に応じたフィルター
これらの操作は「ステップ」として記録され、後から自動で再実行できます。
たとえば、毎月更新される売上データを同じ形に整える作業を、ワンクリックで完了させることが可能です。
Power Queryでできること③:データの結合・集約
Power Queryでは複数のデータを簡単にまとめることができます。
Excel関数でのVLOOKUPやINDEX/MATCHのような作業を、GUI操作で直感的に行えます。
結合の種類:
- 結合(Merge):共通キーで2つのテーブルを結合(左結合・右結合など)
- 追加(Append):行を縦に結合し、同じ構造のデータを一つにまとめる
さらに、グループ化機能を使えば、商品別・日付別などで集計することも可能です。
「SUM」「COUNT」「AVERAGE」などの関数を指定するだけで、自動的に集計結果を作成できます。
Power Queryでできること④:自動更新・再利用
Power Queryの大きな魅力は、自動更新ができる点です。
一度クエリ(処理手順)を設定しておけば、次回からは「更新」ボタンを押すだけで最新データを反映できます。
例えば、毎月売上CSVを同じフォルダに保存する運用なら、データを追加するだけで最新の集計結果が自動生成されます。
また、同じ整形処理を他のデータに使いたい場合も「クエリの複製」「参照」で簡単に再利用可能です。
Power Queryを使うことで、毎月の定型業務を完全に自動化できます。
Power Queryでできること⑤:M言語による高度なカスタマイズ
Power Queryでは裏側で「M言語」という専用スクリプトが動いています。
普段は自動的に生成されるため意識する必要はありませんが、上級者はこのM言語を編集して柔軟な処理を追加できます。
例:特定の条件に基づいて列を動的に作成する場合
= Table.AddColumn(前のステップ, "評価", each if [売上] > 100000 then "優秀" else "通常")
このように、ExcelのIF関数と同じようなロジックを組み込むことが可能です。
M言語を理解すれば、Power Queryを「ノーコード+ローコードツール」として活用できます。
Power Queryの活用例①:営業データの集計自動化
営業部門では、毎月の売上報告や顧客別分析が欠かせません。
Excel関数で手作業していたデータ集計を、Power Queryで自動化すれば作業時間を大幅に短縮できます。
具体例:
- 各担当者が提出した売上Excelをフォルダーにまとめる
- Power Queryでフォルダーを指定して自動で統合
- 不要列を削除し、日付順に並び替え
- 商品カテゴリ別に集計
- 結果をピボットテーブルに出力
これにより、毎月数時間かかっていた作業が、数秒で完了するようになります。
Power Queryの活用例②:CSVファイルの一括整形
複数のシステムからCSVを出力する場合、列構成や文字コードがバラバラなことがあります。
Power Queryなら、取り込む時に一括で統一できます。
操作例:
- フォルダーからすべてのCSVを読み込む
- 文字コードをUTF-8に統一
- 不要な列を削除
- 列名を統一(例:Customer → 顧客名)
- 結果をExcelシートに書き出し
この手順を保存しておけば、翌月以降は同じ操作を再実行するだけです。
Power Queryの活用例③:Webデータの自動取得
Power QueryはWebスクレイピング機能も備えています。
ニュースサイトや統計データなど、Webページ上の表を直接Excelに取り込むことが可能です。
たとえば:
- 政府統計のWebページから毎月の物価指数を取得
- 株価情報や為替レートを定期的に更新
- 社内ポータルサイトの一覧表を集計
「URLを指定 → テーブルを選択 → 読み込み」で簡単に設定できます。
Webページが更新されても、「更新」ボタン一つで最新データを反映できます。
Power Queryのメリットと他ツールとの違い
項目 | Power Query | VBA | 関数 |
---|---|---|---|
操作性 | GUIで簡単 | コードが必要 | セルごとに指定 |
処理速度 | 高速 | 中速 | 遅い場合あり |
再利用性 | 高い | 高い | 低い |
保守性 | ステップ管理で容易 | デバッグが必要 | 手作業 |
Power Queryは、VBAのように自動化ができ、関数より簡単という中間的な立ち位置です。
プログラミング経験がなくても扱えるため、非エンジニアでもデータ処理を効率化できます。
まとめ
Power Queryは、Excelユーザーにとって「業務効率化の切り札」といえるツールです。
データの取得、整形、結合、集計、そして自動更新までを一貫して行えるため、毎月の定型作業を大幅に削減できます。
特に次のような方におすすめです。
- 毎月の報告資料を手作業で作っている
- CSVやExcelのデータ整形に時間がかかる
- 同じ処理を何度も繰り返している
Power Queryを使いこなせば、Excelがまるで「自動集計システム」に変わります。
まずは「データの取得と変換」メニューを開き、Power Queryエディターに触れてみましょう。