宅地建物取引士試験(宅建試験)では、法律だけでなく、消費者保護に関わるルールも出題されます。その中でも「景品表示法」と「公正競争規約」は、広告や販売促進に関わる重要なテーマです。
不動産広告の内容が適切か、過剰な景品を提供していないかなど、業務上の注意点にも直結する内容のため、合格を目指す方にとってはしっかり押さえておきたい分野です。
この記事では、景品表示法の基本から、公正競争規約の概要、試験対策として知っておくべきポイントや違反事例までわかりやすく解説します。
景品表示法とは?
景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)は、消費者を守るための法律です。
事業者が商品やサービスを販売する際に、「不当な表示」や「過大な景品提供」によって消費者を誤認させることを防止する目的があります。
景品表示法の目的
- 消費者が商品やサービスを正しく選べるようにする
- 誇大広告や虚偽表示などによる被害を防ぐ
- 公正な取引を保ち、事業者間の競争を健全にする
この法律の根幹は、「表示の公正さ」と「景品の適正さ」の2点にあります。
不当表示の種類
景品表示法では、次のような「不当表示」を禁止しています。
優良誤認表示
実際よりも著しく優良であるかのように見せる表示です。
例:築20年の中古住宅を「築浅」として広告する。
有利誤認表示
実際よりも著しく有利であるかのように見せる表示です。
例:「今だけ半額」と広告しているが、実際は常にその価格で販売している。
その他誤認されるおそれのある表示
景品表示法ではこの3つ目の表示も規制対象です。
例:エコ住宅とうたっているが、省エネ基準を満たしていない。
不動産広告においては、物件の築年数、構造、駅からの距離、価格など、誤認される表現が多々あります。こうした表示は違反となる可能性があるため、注意が必要です。
景品類の規制について
景品表示法は「景品の提供」に関してもルールを定めています。
景品類とは、商品・サービスの購入者や利用者に対して提供される金品やサービスのことです。
景品の種類
- 一般懸賞:くじ・抽選・応募などで景品を提供
- 共同懸賞:複数の事業者が合同で懸賞を実施
- 総付(そうづけ)景品:購入者全員に提供する景品
景品額の制限(例:総付景品)
- 取引額が1,000円未満:200円まで
- 取引額が1,000円以上:取引額の2割以内(上限10,000円)
不動産会社が契約者全員に贈答品を渡す場合も、この上限を超えないように注意しなければなりません。
公正競争規約とは?
公正競争規約は、業界ごとに定められる自主的なルールであり、景品表示法に基づいて設定されます。
不動産業界にも「不動産の表示に関する公正競争規約」があります。
公正競争規約の目的
- 表示の適正化
- 業界全体の信頼性向上
- 消費者に対する誤解を防ぐ
この規約は、不動産業者の広告表示におけるガイドラインとして機能し、違反すると行政処分の対象となる可能性もあります。
不動産業界における具体的な規制内容
駅からの距離表示
「徒歩○分」と表示する場合は、1分=80メートルで計算。信号や坂道などの実際の条件は考慮しない。
築年数表示
築年月を明記しなければならず、「新築」と表示できるのは、建築後1年未満かつ未使用である場合のみ。
価格表示
価格は税込価格を原則とし、オプション費用や管理費などが別途かかる場合はその旨を明記。
面積表示
物件の専有面積や延床面積は、正確な数値を使う必要があります。「約○㎡」などの表現も、規約に基づいた範囲内でのみ使用可能です。
違反した場合のペナルティ
景品表示法に違反した場合、次のような処分が行われます。
- 措置命令(消費者庁):表示の修正、公表などを命じられる
- 課徴金制度:違反によって得た売上の一定割合を納付
- 社会的信用の失墜:業者名の公表によって信用が大きく損なわれる
また、公正競争規約に違反した場合は、業界団体からの指導や除名処分などが行われることもあります。
宅建試験で問われるポイント
宅建試験では、「景品表示法」や「不動産の表示に関する公正競争規約」の理解が問われる問題が出題されます。頻出ポイントは以下の通りです。
- 「新築」と表示できる条件
- 駅からの距離計算ルール
- 景品の上限額と種類
- 不当表示の3分類(優良誤認・有利誤認・その他)
- 公正競争規約に基づく広告表示のルール
選択肢問題として具体的な広告文が提示され、「適切か否か」を判断させる設問もあります。
まとめ
景品表示法と公正競争規約は、消費者の利益を守るために設けられた重要なルールです。
不動産業界は特に広告や契約が密接に関係しており、ルール違反は信頼を失うだけでなく、宅建業者としての存続にも影響します。
宅建試験では、これらの知識を「実務に活かす視点」で問われます。数字や条件を正確に覚え、具体的な表示例をもとに判断できる力を養いましょう。
しっかりと理解して、得点源にしていきたい分野です。