宅建試験における民法分野の中でも、「制限行為能力者」は毎年のように出題される頻出テーマです。成年年齢の引き下げ(2022年施行)により、18歳以上は原則として「成年」と扱われますが、試験では未成年者や成年被後見人、被保佐人、被補助人といった制限行為能力者について深く問われます。
本記事では、それぞれの制限行為能力者の意味と特徴を解説し、覚えるべき暗記ポイントを表形式で整理しました。試験直前の見直しにも役立つよう、具体例や実際の出題パターンも交えながら徹底的に解説していきます。
制限行為能力者とは?
制限行為能力者とは、「法律行為を単独で完全に行うことができない人」を指します。
民法では、すべての人が契約などの法律行為を行えるわけではなく、その判断能力に制約がある人に対しては特別なルールを設けています。
宅建試験で問われるのは、主に以下の4種類です。
- 未成年者
- 成年被後見人
- 被保佐人
- 被補助人
この4つの区分ごとに、「どの法律行為が単独でできるのか?」「同意が必要なのか?」を正しく理解しておく必要があります。
未成年者(18歳未満)
未成年者は、原則として親権者の同意がなければ契約行為を行えません。
ただし、日用品の購入など「日常生活に必要な行為」については単独で行うことができます。
暗記表:未成年者
行為 | 単独で可能か | 備考 |
---|---|---|
日用品の購入 | 〇 | 文房具や食料品など日常に必要な行為 |
親の同意を得た契約 | 〇 | 同意後は取り消し不可 |
親の同意がない契約 | × | 原則として取り消し可能 |
親が未成年者に営業を許可した場合 | 〇 | その営業に関しては成年者と同じ扱い |
相続の承認・放棄 | × | 親権者の同意が必要 |
単純贈与を受ける | 〇 | 権利のみを得る場合は単独で可能 |
成年被後見人
成年被後見人とは、精神上の障害により判断能力を欠く常況にある人で、家庭裁判所の審判により成年後見開始が宣告された者です。
暗記表:成年被後見人
行為 | 単独で可能か | 備考 |
---|---|---|
日用品の購入 | △ | 本人に利益となる日用品は可能 |
その他一般契約 | × | 原則として後見人が代理 |
取消権 | 〇 | 被後見人自身も取り消し可能 |
後見人の代理権 | 強い | ほぼ全面的に代理する |
後見人の同意権 | 不要 | そもそも代理で処理するため |
被保佐人
被保佐人は、判断能力が著しく不十分である人を対象に、家庭裁判所の審判で保佐開始が宣告された者です。成年被後見人ほど重度ではありませんが、重要な行為には保佐人の同意が必要です。
暗記表:被保佐人
行為 | 単独で可能か | 備考 |
---|---|---|
日用品の購入 | 〇 | 問題なし |
借金、保証契約 | × | 保佐人の同意が必要 |
不動産の売買・賃貸 | × | 同意必要 |
訴訟行為 | × | 同意必要 |
保佐人の同意を得た契約 | 〇 | 取り消し不可 |
同意がない契約 | × | 取り消し可能 |
被補助人
被補助人は、判断能力が不十分な人で、比較的軽度の制限が課されます。補助人が関与する範囲は、家庭裁判所の審判で個別に決定される点が特徴です。
暗記表:被補助人
行為 | 単独で可能か | 備考 |
---|---|---|
日用品の購入 | 〇 | 問題なし |
借金や不動産売買 | 場合による | 家庭裁判所の定めによる |
同意が必要とされた行為 | × | 同意がなければ取り消し可能 |
取消権 | 〇 | 被補助人自身も取消可能 |
試験でよく問われるポイント
- 「未成年者でも単独でできる行為は何か?」
- 「成年被後見人と被保佐人の違い」
- 「補助人の関与範囲が裁判所の決定による点」
- 「日用品の購入は原則自由」
- 「同意を得た行為は取り消せない」
宅建試験では、「この契約は取り消せるか?」という設問が頻出します。暗記表を使って整理しておくと得点に直結します。
過去問での出題パターン
例えば、以下のような問題が典型です。
問題例
「未成年者Aが、親の同意なく中古マンションを購入した場合、この契約は有効か?」
👉 答え:取り消すことができる。
問題例
「成年被後見人Bが、スーパーで日用品を購入した。この契約は取り消すことができるか?」
👉 答え:取り消すことはできない(日用品の購入は認められる)。
暗記用まとめ表(全体版)
種類 | 主な特徴 | 単独でできる行為 | 同意必要な行為 | 取消権 |
---|---|---|---|---|
未成年者 | 原則親の同意必要 | 日用品の購入、権利のみ得る契約 | 不動産売買、借金など | 〇 |
成年被後見人 | 判断能力なし | 日用品購入 | ほぼ全て | 〇 |
被保佐人 | 判断能力著しく不十分 | 日用品購入 | 借金、不動産売買など重要行為 | 〇 |
被補助人 | 判断能力やや不十分 | 日用品購入 | 裁判所の定めによる | 〇 |
まとめ
制限行為能力者の分野は、宅建試験で必ずといっていいほど出題される分野です。特に「どの行為が単独でできるのか?」「同意がなければ取り消せるのか?」を正しく整理して覚えることが合格への近道です。
本記事では、暗記すべきポイントを表形式でまとめ、試験直前のチェックにも使える形にしました。繰り返し見直して知識を定着させてください。