退職日を決めるとき、多くの人は「次の仕事の開始日」や「有給消化の残り」を基準に考えがちです。
しかし、実は退職日によって健康保険料の支払い額が大きく変わることをご存じでしょうか。
健康保険料は「月単位」で発生する仕組みのため、退職日が1日違うだけで1か月分の保険料を支払うかどうかが変わってきます。
この記事では、退職日と健康保険料の関係、月末退職と月途中退職の違い、具体的な注意点、さらにスムーズに手続きを進めるためのポイントを詳しく解説します。
これから退職を考えている方にとって、お金の面でも賢く判断できる参考になれば幸いです。
退職日と健康保険料の関係
会社員が加入している健康保険(協会けんぽや健康保険組合)は、月末に在籍しているかどうかでその月の保険料が決まります。
- 月末に在籍している → その月は会社の健康保険に加入している扱いとなり、保険料が発生します。
- 月末に在籍していない → その月は会社の健康保険に加入していない扱いとなり、保険料は発生しません。
つまり、同じ月でも「月末退職」か「月中退職」かで支払いが大きく異なります。
月末退職と月途中退職の違い
例を挙げてみましょう。
- ケース1:3月31日退職(=月末退職)
3月分の健康保険料が発生します。給与から天引きされるか、退職後に請求される場合があります。 - ケース2:3月30日退職(=月途中退職)
3月31日時点で会社に在籍していないため、3月分の健康保険料はかかりません。
このように、わずか1日の違いで1か月分の保険料が変わってしまうのです。
国民健康保険との関係
月末に会社を退職した場合、その月は会社の健康保険が有効ですが、翌月からは新たな保険への加入が必要です。
選択肢は主に以下の2つです。
- 国民健康保険に加入する
市区町村で手続きを行い、翌月から国民健康保険料を支払います。 - 任意継続被保険者制度を利用する
退職後も最長2年間は、会社で加入していた健康保険を任意で継続できます。保険料は全額自己負担(会社負担分も自己負担)ですが、扶養家族が多い場合や医療費が多い場合にはメリットがあります。
退職日を決める際の損得勘定
退職日を「月末」にするか「月中」にするかで、次のような損得があります。
- 月末退職のメリット
・その月の健康保険が切れず安心
・すぐに国保の手続きをする必要がない
・保険証の空白期間が生じない - 月末退職のデメリット
・その月の健康保険料を丸々1か月分支払う必要がある - 月中退職のメリット
・その月の健康保険料が不要
・金銭的にはお得になる場合が多い - 月中退職のデメリット
・退職日の翌日から国民健康保険に加入する必要がある
・すぐに手続きしないと保険証がなくなる期間が生じる可能性がある
退職日の決め方で注意すべきポイント
単純に「月中退職の方がお得」とは言えません。以下の点を考慮して退職日を決めるのが大切です。
- 次の会社の入社日
次の会社に月初から入社するなら、月中退職でも保険の空白は発生しません。
一方で次の会社が翌月からの入社であれば、国保加入が必要になります。 - 扶養家族の有無
扶養家族がいる場合は、任意継続や国保の方が有利かどうかを試算した方が良いです。 - 医療費の予定
通院や手術などが控えている場合、保険証の切り替えがスムーズにいかないとトラブルになる可能性があります。 - 有給休暇の消化
有給を消化してから退職すると自然に月末退職になる場合があり、結果として保険料がかかるケースがあります。
具体的なシミュレーション
仮に健康保険料が月額2万円とします。
- 3月30日退職(翌日から国保加入)
→ 会社の保険料 0円、国保は翌月から発生 - 3月31日退職
→ 会社の保険料 2万円発生
1日の違いで2万円変わると考えると、決して小さい金額ではありません。
退職手続きと健康保険証の返却
退職後は、会社に健康保険証を返却し、新しい保険に加入する必要があります。
国保の場合は市役所で手続きし、任意継続の場合は退職日から20日以内に申請を行う必要があります。
手続きが遅れると保険証が使えず、医療費を一時的に全額自己負担することになりかねません。
まとめ
退職日を決めるとき、健康保険料のことを意識している人は意外と少ないですが、月末か月中かで1か月分の保険料が変わるというのは重要なポイントです。
- 月末退職 → その月の保険料が発生
- 月中退職 → その月の保険料は発生しないが、国保などの手続きが必要
退職日を決める際は、お金の損得だけでなく、保険の空白や扶養の有無、次の入社日との兼ね合いを踏まえて判断するのがベストです。
「あと1日ずらすだけで何万円も変わる」ことを知っておくと、賢く退職スケジュールを立てられるでしょう。