有価証券の会計処理ガイド|株式・債券の取得・売却の仕訳と実務ポイント

企業会計において、有価証券の取得や売却はよくある取引のひとつです。特に株式や債券といった投資目的の有価証券は、企業の資産管理や利益調整に大きく関わります。しかし、その会計処理は複雑に感じられることもあります。

本記事では、有価証券の分類から始まり、それぞれの取得・売却時の仕訳方法や評価方法までを、実務で役立つ形で解説します。会計初心者から実務担当者まで、しっかり理解できる内容になっていますので、ぜひ最後までご覧ください。


有価証券とは何か?分類と特徴を押さえよう

有価証券とは、財産的価値を有する証券のことで、主に以下の4つに分類されます。

  1. 売買目的有価証券:短期的な売却益を目的とした株式や債券。
  2. 満期保有目的債券:満期まで保有する予定の債券。
  3. 子会社・関連会社株式:支配目的で保有する株式。
  4. その他有価証券:上記以外の有価証券(中長期の投資目的など)。

それぞれの目的に応じて会計処理が異なるため、分類が最初の重要ポイントになります。


株式の取得時の会計処理と仕訳

株式を取得したときには、原則として取得原価で記帳します。たとえば、取引手数料や印紙代も含めて取得価額に算入します。

仕訳例(売買目的株式を取得)

10万円分の株式を現金で取得し、手数料として1,000円を支払った場合:

(借)売買目的有価証券 101,000円  
(貸)現金         101,000円

※目的によって勘定科目が「その他有価証券」などに変わります。


債券の取得時の会計処理と注意点

債券の取得には、額面金額と取得価額の差が重要です。たとえば、利回りを調整するために額面より高く(プレミアム)あるいは安く(ディスカウント)取得することがあります。

その場合、差額は償却原価法を用いて償却していきます。

仕訳例(満期保有目的債券を取得)

額面100,000円の債券を101,000円で購入した場合:

(借)満期保有目的債券 101,000円  (貸)現金           101,000円  

決算時にプレミアム分を償却:

(借)有価証券利息 500円  (貸)満期保有目的債券 500円  

株式・債券の売却時の会計処理と利益認識

売却時は、取得価額との差額を「売却益」または「売却損」として認識します。

仕訳例(売買目的有価証券を売却)

取得価額10万円の株式を12万円で売却し、手数料1,000円を支払った場合:

(借)現金         119,000円  (貸)売買目的有価証券 100,000円  
(借)支払手数料   1,000円 (貸)有価証券売却益   20,000円


※売却損の場合は「有価証券売却損」になります。


決算時の評価と評価差額の処理方法

決算時には、保有している有価証券を評価替えする必要があります。評価の方法は、保有目的によって異なります。

区分評価方法損益処理の有無
売買目的有価証券時価評価(洗替法)損益に反映
満期保有目的債券償却原価法損益に反映しない
その他有価証券時価評価純資産の部に計上(評価差額金)

仕訳例(その他有価証券の評価替え)

取得価額100,000円の株式の時価が決算時に110,000円になった場合:

(借)その他有価証券 10,000円   (貸)その他有価証券評価差額金 10,000円  

※評価差額は「その他の包括利益累計額」に計上されます。


実務でよくある注意点とミス

  1. 取得目的の分類ミス
     → 売買目的とその他有価証券を混同すると、損益計上のタイミングを誤ります。
  2. 手数料の処理漏れ
     → 手数料も取得原価に含めるかどうかで損益が変わります。
  3. 評価替えの誤り
     → 評価差額金と損益の区別を明確にする必要があります。

まとめ|有価証券の会計処理は目的別に正確な対応を

有価証券の会計処理では、まず保有目的によって分類をしっかりと行い、それに基づいた仕訳や評価を行うことが重要です。特に株式や債券は金額も大きくなりがちで、会計上の影響も大きいため、誤りのないよう慎重に処理しましょう。

企業の資産構成や財務戦略を理解するためにも、有価証券の正しい処理は欠かせません。この記事を通じて、その基本がしっかり押さえられていれば幸いです。

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