
「5M」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。製造業や品質管理の現場でよく使われる用語ですが、実は業種を問わず、問題解決や業務改善に活用できる便利な考え方です。ミスの原因を整理したいとき、トラブルの再発を防ぎたいとき、業務を効率化したいときに大きな力を発揮します。本記事では、5Mの意味から、それぞれの要素の詳しい解説、具体的な活用方法、実践例までをわかりやすく丁寧に解説します。
5Mとは何か
5Mとは、主に製造業や品質管理の分野で用いられる原因分析のフレームワークです。
問題や不良の原因を「5つのM」に分類して整理することで、抜け漏れなく原因を洗い出すことができます。
5Mは以下の5つの要素で構成されます。
- Man(人)
- Machine(機械)
- Material(材料)
- Method(方法)
- Measurement(測定)
この5つの視点から問題を分析することで、「どこに原因があるのか」「どの要素を改善すべきか」を明確にできます。
5Mは特別な資格や専門知識がなくても使える実践的な考え方であり、工場だけでなく、オフィス業務やサービス業、IT業界などでも応用可能です。
Man(人)
Manは「人」に関する要因です。
具体的には以下のようなものが該当します。
- 作業者のスキル不足
- 教育・訓練不足
- 不注意
- コミュニケーション不足
- モチベーション低下
- 人員不足
例えば、製品の組み立てミスが発生した場合、「作業手順が悪い」のではなく、「作業者が十分な教育を受けていなかった」という可能性があります。
オフィス業務での例を挙げると、資料の誤送信が発生した場合も、単なるミスではなく、
- ダブルチェック体制がなかった
- 業務が過密で集中力が落ちていた
- 新人で経験が浅かった
など、人に関する原因が考えられます。
人の問題は精神論で片付けてしまいがちですが、5Mの視点では「仕組みの問題」として客観的に捉えることが重要です。
Machine(機械)
Machineは「設備・機械・システム」に関する要因です。
例えば、
- 機械の老朽化
- 設備の故障
- メンテナンス不足
- システムのバグ
- 処理速度の遅さ
などが該当します。
製造業では、寸法不良が出た原因が機械の微妙なズレであることがあります。
IT業界であれば、システムエラーやサーバーの不具合が問題の原因になることもあります。
重要なのは、「人のミス」と決めつけないことです。
実際には機械の操作性が悪く、人がミスしやすい設計になっているケースもあります。
5Mを使うことで、「人が悪い」から「仕組みが悪い」へと視点を変えることができます。
Material(材料)
Materialは「材料・原料・情報」に関する要因です。
具体例としては、
- 材料の品質ばらつき
- 不適切な部品の使用
- 情報の誤り
- データの不備
- 仕様書の間違い
などが挙げられます。
製造業では、材料ロットによって品質に差が出ることがあります。
ITや事務作業では、「元データが間違っていた」というケースがMaterialに該当します。
例えば売上集計ミスが発生した場合、計算方法ではなく「入力データが誤っていた」ことが原因である可能性があります。
材料や情報の品質は、最終成果物の品質に直結します。
そのため、Materialの管理は非常に重要です。
Method(方法)
Methodは「作業方法・手順・ルール」に関する要因です。
- 作業手順が曖昧
- マニュアルがない
- 手順が複雑すぎる
- 標準化されていない
- 更新されていないルール
などが該当します。
多くのトラブルは、実はMethodの問題です。
「属人化」している業務は特に注意が必要です。
例えば、
- ベテランしかできない作業
- 人によってやり方が違う業務
- 口頭でしか伝えられていないルール
こうした状態は、品質のばらつきやミスの原因になります。
Methodを改善するには、標準化・マニュアル化・簡素化が効果的です。
Measurement(測定)
Measurementは「測定・評価・検査」に関する要因です。
- 測定器の精度不足
- 測定方法の誤り
- 検査基準の曖昧さ
- データの取り方のばらつき
- KPIの設定ミス
などが該当します。
例えば、製品の不良率が急増した場合でも、実は「検査基準を厳しくした」ことが原因であるケースがあります。
営業成績が悪化したように見えても、
- 評価基準が変わった
- 集計方法が変わった
- データ取得期間が違った
というMeasurementの問題である可能性があります。
正しい測定ができていなければ、正しい改善はできません。
5Mを使った問題解決の進め方
5Mを実際に使う手順は以下の通りです。
- 問題を明確にする
- 5つのMに分けて原因を書き出す
- それぞれの原因を深掘りする
- 真因を特定する
- 改善策を立てる
ポイントは、「とにかく数を出す」ことです。
最初から正解を求める必要はありません。
ホワイトボードに5Mを書き、ブレインストーミング形式で原因を出していく方法が効果的です。
5Mと他のフレームワークとの違い
5Mは原因分析に特化したフレームワークです。
例えば、
- なぜなぜ分析(Why分析)
- 特性要因図(フィッシュボーン図)
- PDCAサイクル
などがあります。
5Mは特性要因図と組み合わせて使われることが多く、
大きな骨として5Mを配置し、その下に細かい原因をぶら下げていく形で活用されます。
PDCAは改善の流れを示す考え方ですが、
5Mは「原因の切り口」を与えてくれる点が特徴です。
製造業以外での5M活用例
オフィス業務
書類ミスの原因分析
- Man:確認不足
- Machine:入力システムが使いにくい
- Material:元データの誤り
- Method:チェック体制がない
- Measurement:誤り率を測定していない
IT業界
システム障害の原因分析
- Man:設定ミス
- Machine:サーバー負荷
- Material:不完全なデータ
- Method:テスト不足
- Measurement:監視体制の甘さ
サービス業
クレーム増加の分析
- Man:接客スキル不足
- Machine:POSシステム遅延
- Material:商品品質
- Method:接客マニュアル不備
- Measurement:顧客満足度未測定
このように、5Mは業種を問わず活用できます。
5Mを活用するメリット
5Mを使うメリットは以下の通りです。
- 原因の抜け漏れを防げる
- 客観的に議論できる
- 責任追及になりにくい
- 改善の方向性が明確になる
- 再発防止につながる
特に「人のせい」にしない仕組み作りに役立ちます。
5Mを使う際の注意点
- 形だけ使わない
- 思い込みで分類しない
- データを確認する
- 感情論にしない
- 改善策まで落とし込む
5Mは分析ツールであり、使うことが目的ではありません。
改善までつなげることが重要です。
まとめ
5Mとは、Man(人)、Machine(機械)、Material(材料)、Method(方法)、Measurement(測定)の5つの視点から問題を分析するフレームワークです。
製造業だけでなく、オフィス業務やIT、サービス業など、あらゆる分野で活用できます。
問題が発生したときに「なぜ起きたのか」を体系的に整理できるため、再発防止や業務改善に非常に効果的です。
トラブルを感情で処理するのではなく、構造で捉える。
それが5Mの本質です。
日々の業務の中で5Mの視点を取り入れることで、組織全体の品質向上と効率改善につながります。
