Excelは表計算ソフトとして有名ですが、実は「簡易データベース」としても優れた機能を持っています。
例えば、顧客リスト・商品管理・売上データなどを一元管理し、必要な情報を素早く抽出することが可能です。
さらに、AccessやSQLなどの本格的なデータベースほど複雑ではないものの、「リレーション」を利用することで、複数の表をつなげて効率的に管理できます。
本記事では、Excelを使ったデータベースの基礎から、リレーションの仕組み、具体的な作り方、実践的な活用事例までを詳しく解説します。
初心者から業務効率化を目指す方まで、今日から役立つ知識を身につけられる内容です。
Excelでデータベースを作るメリット
Excelでデータベースを作る最大のメリットは「手軽さ」です。
新しいソフトを導入する必要がなく、多くの企業や個人がすでにExcelを使っているため、すぐに運用を始められます。
具体的なメリットとしては以下の通りです。
- 導入コストが不要:Office製品に含まれているため追加費用がかからない。
- 学習コストが低い:既にExcelの基本操作を知っていれば応用しやすい。
- 柔軟なデータ構造:必要に応じて列やシートを追加できる。
- 分析機能が豊富:ピボットテーブルや関数を使って集計や分析が可能。
例えば、小売店で「顧客名簿」「商品リスト」「売上記録」を別シートで管理し、それらを組み合わせて販売状況を分析することができます。
Excelで作るデータベースの基本構造
Excelでのデータベースは「表形式」で管理するのが基本です。
1行が1件のデータ(レコード)、1列が項目(フィールド)になります。
データベースの基本例:顧客リスト
顧客ID | 氏名 | 電話番号 | メールアドレス | 登録日 |
---|---|---|---|---|
C001 | 山田太郎 | 090-1111-2222 | taro@example.com | 2024/04/01 |
C002 | 佐藤花子 | 090-3333-4444 | hanako@example.com | 2024/04/03 |
C003 | 鈴木一郎 | 090-5555-6666 | ichiro@example.com | 2024/04/05 |
このように、ID列を必ず作ることが重要です。IDはデータの重複を防ぎ、リレーションで表同士を結びつける際のキーになります。
リレーションとは何か?
リレーション(関係)とは、異なる表(テーブル)同士を共通のキーで結びつける仕組みです。
これにより、複数の表に分散している情報を関連付けて活用できます。
例えば、「顧客リスト」と「売上記録」をリレーションで結びつけることで、顧客ごとの購入履歴を簡単に集計できます。
リレーションの種類
- 1対1(One to One)
1つの顧客が1つの会員情報を持つ場合など。 - 1対多(One to Many)
1人の顧客が複数回の注文をする場合など。 - 多対多(Many to Many)
複数の顧客が複数の商品を購入する場合。中間テーブルを使って管理します。
Excelの場合、Accessのように正式なリレーション設定機能はありませんが、VLOOKUPやXLOOKUP、INDEX/MATCH関数を使うことで実質的なリレーションを作ることができます。
Excelでのリレーション構築例
ここでは「顧客リスト」と「売上記録」を結びつける例を紹介します。
顧客リスト(Customers)
顧客ID | 氏名 | 電話番号 |
---|---|---|
C001 | 山田太郎 | 090-1111-2222 |
C002 | 佐藤花子 | 090-3333-4444 |
C003 | 鈴木一郎 | 090-5555-6666 |
売上記録(Orders)
注文ID | 顧客ID | 商品名 | 金額 | 日付 |
---|---|---|---|---|
O001 | C002 | ノートPC | 120000 | 2024/04/10 |
O002 | C001 | マウス | 2000 | 2024/04/12 |
O003 | C002 | プリンタ | 15000 | 2024/04/15 |
VLOOKUPで氏名を結びつける
売上記録に「顧客名」を追加するには以下の関数を使用します。
=VLOOKUP(B2, Customers!A:C, 2, FALSE)
B2
… 売上記録の顧客IDCustomers!A:C
… 顧客リストの範囲2
… 顧客名がある列の番号FALSE
… 完全一致で検索
これにより、売上記録表に顧客名が自動的に表示され、分析が容易になります。
リレーション活用のメリット
Excelでリレーションを活用することで以下のメリットがあります。
- データの重複を減らせる
顧客情報を1つの表にまとめ、売上記録には顧客IDだけを記録すればよい。 - 修正が簡単
顧客の電話番号を変更する場合、顧客リストだけを修正すればすべてに反映できる。 - 分析が強化できる
ピボットテーブルや集計関数で顧客別・商品別の売上分析が容易になる。
実務での活用例
- 在庫管理システム
- 商品マスタ表(商品ID・商品名・仕入先)
- 入出庫記録表(商品ID・数量・日付)
- 商品IDをキーに在庫数を自動計算。 - 人事データ管理
- 社員マスタ表(社員ID・氏名・部署)
- 勤怠記録表(社員ID・出勤日・勤務時間)
- 部署別労働時間の集計。 - 販売管理
- 顧客マスタ表(顧客ID・住所)
- 注文履歴表(顧客ID・商品ID・数量)
- 顧客別購入傾向の分析。
Excelデータベース運用の注意点
- セル結合を使わない:データベースでは整列が崩れるため。
- 見出し行は1行にする:関数やピボットで認識しやすくするため。
- 不要な空白行・空白列を作らない:データ範囲が正しく認識されない原因になる。
- 必ずID列を持たせる:重複や誤認識を防ぐ。
- 入力規則を使う:ドロップダウンリストなどで入力ミスを減らす。
まとめ
Excelは単なる表計算ソフトではなく、軽量で柔軟なデータベースとして活用できます。
特に「リレーション」の概念を理解し、VLOOKUPやXLOOKUPで表同士を結びつけることで、業務効率は飛躍的に向上します。
IDを活用し、データの重複を避け、修正や分析が容易な仕組みを作ることがポイントです。
日々の業務で複数の表を扱っている方は、ぜひ今回紹介した方法を取り入れてみてください。