「分数の割り算って、どうして逆数をかけるんだろう?」
多くの人が学生時代に一度は抱いた疑問ではないでしょうか。算数の授業では「分数の割り算は、割る数の逆数をかける」と教わりますが、なぜそうなるのかまで深く説明されることは少ないかもしれません。この記事では、分数の割り算のやり方を丁寧に確認しながら、逆数を使う理由をわかりやすく解説していきます。算数が苦手な方や子どもに教える立場の方でも理解できるよう、具体例や図解イメージを交えて紹介します。
分数の割り算の基本ルール
分数の割り算には、必ず出てくる有名なルールがあります。
「分数 ÷ 分数 = 割る数の逆数をかける」
たとえば、 23÷45\frac{2}{3} ÷ \frac{4}{5}32÷54
という計算をするとき、次のように変換します。 23÷45=23×54\frac{2}{3} ÷ \frac{4}{5} = \frac{2}{3} × \frac{5}{4}32÷54=32×45
このように、後ろの分数をひっくり返して掛け算に直すのです。
では、なぜ割り算なのに掛け算に直して良いのでしょうか。
「逆数」とは何か?
まず、逆数という言葉を確認しましょう。
逆数とは「掛け算をして1になる数」のことです。
- 2の逆数 → 1/2
- 3/4の逆数 → 4/3
- -5の逆数 → -1/5
つまり、 a×1a=1a × \frac{1}{a} = 1a×a1=1
となる関係を持つ数を逆数と呼びます。
逆数は「割り算」を「掛け算」に変えるときに重要な役割を果たします。
割り算と逆数の関係
そもそも割り算とは「ある数を何倍したら別の数になるか」を問う計算です。
たとえば、
「6 ÷ 2」は「2を何倍したら6になるか?」を意味します。答えは3です。
この考えを分数に当てはめてみましょう。
例: 23÷45\frac{2}{3} ÷ \frac{4}{5}32÷54
これは「4/5を何倍したら2/3になるか?」という問いです。
そこで「逆数を使う」と、その「何倍か」を掛け算で求められるようになります。
実際に具体例で確認してみよう
具体例で考えると直感的に理解しやすいです。
例:
ケーキが2/3個あります。これを「4/5個ずつ」に分けたいとします。
何人に分けられるでしょうか?
式にすると 23÷45\frac{2}{3} ÷ \frac{4}{5}32÷54
このとき「2/3の中に、4/5がいくつ入るか?」を数えています。
しかし直接割り算をするのは難しい。そこで工夫します。
「4/5を1にするために何を掛ければいいか?」を考えると、それは「5/4」です。
つまり、式全体に「5/4」を掛ければ割り算が消えて、掛け算で答えを出せるのです。
実際に計算すると、 23÷45=23×54=1012=56\frac{2}{3} ÷ \frac{4}{5} = \frac{2}{3} × \frac{5}{4} = \frac{10}{12} = \frac{5}{6}32÷54=32×45=1210=65
答えは「5/6」。
つまり「4/5ずつ分けたら、5/6人分になる」ということです。
なぜ「逆数をかける」のかを数式で説明
数学的には次のように説明できます。
割り算 ab÷cd\frac{a}{b} ÷ \frac{c}{d}ba÷dc
これは ab×dc\frac{a}{b} × \frac{d}{c}ba×cd
に変形できます。
理由:
「÷ (c/d)」とは「× (1 ÷ (c/d))」を意味します。
そして「1 ÷ (c/d)」は「d/c」と同じです。
つまり、割り算を「掛け算+逆数」で表すことができるのです。
割り算を掛け算に変えるメリット
なぜここまでして「掛け算」に変えるのでしょうか?
理由は単純で、「分数の掛け算の方が計算が簡単」だからです。
- 足し算・引き算 → 通分が必要
- 割り算 → ややこしい操作が必要
- 掛け算 → 分子どうし、分母どうしを掛ければよいだけ
掛け算に変えれば、複雑な操作をせずにシンプルに計算できます。
整数の割り算とつなげて考える
実は整数の世界でも同じことが起きています。
「6 ÷ 2」は「6 × 1/2」と言い換えることができます。
つまり、整数の割り算も「逆数をかける」仕組みで処理しているのです。
分数の場合だけ特別なルールがあるわけではなく、整数の割り算も本質的には同じ考え方に基づいているのです。
子どもに説明するときの工夫
小学生に「なぜ逆数をかけるの?」と聞かれたら、次のように説明できます。
- 割り算は「いくつ入るか」を調べること。
- でも分数どうしだと直接比べるのが難しい。
- そこで「割る数を1に変える工夫」をする。
- その工夫が「逆数をかける」こと。
身近な例を使うとさらに理解しやすくなります。
ケーキやピザを「何人分に分けられるか」で考えると、イメージしやすいでしょう。
まとめ
分数の割り算が「逆数をかける」に変わるのは、数学的なルールではなく、割り算の意味を保つための合理的な変形です。
- 逆数とは「掛けると1になる数」
- 割り算は「何倍か?」を調べること
- 割る数を1にするために逆数を使う
- その結果、分数の割り算は掛け算に変えられる
算数は暗記ではなく、意味を理解すればぐっとわかりやすくなります。
「なぜ逆数をかけるのか?」を知ることで、分数の計算も自信を持って解けるようになるでしょう。