近年、結婚のスタイルは多様化し、従来の一夫一婦制だけでなく、新しい形のパートナーシップが注目されるようになっています。その中でも話題に上がるのが「オープンマリッジ」という結婚形態です。オープンマリッジは、夫婦が互いに合意のもと、配偶者以外との恋愛や性的関係を認め合う仕組みを指します。自由で柔軟な関係を築ける一方、トラブルや葛藤も生じやすく、日本ではまだ馴染みの薄い概念でもあります。本記事では、オープンマリッジの意味や背景、メリット・デメリット、そして日本社会における受け止められ方までを詳しく解説していきます。
オープンマリッジとは?基本的な意味と定義
オープンマリッジ(Open Marriage)とは、結婚している二人が合意の上で、配偶者以外との性的または恋愛的な関係を認める結婚形態を指します。
通常の結婚は「排他性(他の人との恋愛・性的関係を持たないこと)」が前提とされますが、オープンマリッジはこの前提を緩め、夫婦関係において「自由な選択の余地」を設けているのが特徴です。
アメリカをはじめ欧米の一部地域では1970年代から議論が活発化しました。特に性の解放運動やフェミニズムの流れの中で「従来の結婚観への挑戦」として広まりました。日本では一般的とは言えませんが、近年SNSやメディアを通じて話題になるケースも増えています。
オープンマリッジが生まれた背景
オープンマリッジの背景には、社会や価値観の変化があります。
- 性の自由化と個人主義の台頭
1960〜70年代にかけて欧米では「性の解放」が進みました。個人の幸福や選択が尊重され、結婚においても「所有」や「束縛」という考え方を見直す動きが広がりました。 - 離婚率の増加と結婚観の変化
「結婚=一生涯続けるもの」という価値観が揺らぎ、離婚率が高まる中で、夫婦のあり方を柔軟に考える流れが強まりました。 - パートナーシップの多様化
同性婚や事実婚、別居婚など、結婚のスタイルそのものが多様化する中で、オープンマリッジもその選択肢の一つとして位置づけられるようになりました。
オープンマリッジと似た概念との違い
オープンマリッジと混同されやすい概念がいくつかあります。
- ポリアモリー(Polyamory)
複数の人と恋愛関係を築くことを前提とする考え方。オープンマリッジが「夫婦関係を基盤にしつつ他の関係を認める」のに対し、ポリアモリーは「複数の恋愛を同時に正当なものとして認める」点が異なります。 - 浮気・不倫
オープンマリッジは夫婦間で合意のもと行われるのに対し、浮気や不倫は「隠れて」行うため根本的に違います。透明性と信頼が前提にある点が最大の違いです。
オープンマリッジのメリット
オープンマリッジには、次のようなメリットがあるとされています。
- 自由な自己表現ができる
人によっては、1人のパートナーだけでは満たされない部分があり、他の人との関係を持つことで心の安定につながる場合があります。 - 夫婦関係の維持に役立つこともある
お互いが「外の世界で欲求を満たせる」ため、夫婦間のプレッシャーが減り、むしろ安定した関係を続けられると感じる人もいます。 - 誠実さと透明性を重視できる
隠れて浮気するのではなく、あくまで「合意」のもとで行われるため、裏切りではなくオープンな関係を築けます。
オープンマリッジのデメリットとリスク
一方で、オープンマリッジにはリスクも多く存在します。
- 嫉妬や不安がつきまとう
理屈では「合意」でも、実際にパートナーが他の人と親密になると嫉妬や不安が強まるケースは少なくありません。 - 感情のコントロールが難しい
一度始めてみても「やっぱり耐えられない」と感じる人も多く、精神的な負担が大きくなることがあります。 - 周囲の理解が得にくい
日本を含め、多くの社会では「結婚=排他性を伴う関係」と見なされるため、親族や友人からの理解を得にくい側面があります。 - 離婚につながる可能性
合意のはずが、次第に夫婦関係そのものが希薄になり、結果的に離婚に至るケースもあります。
日本社会におけるオープンマリッジの受け止め方
日本ではまだオープンマリッジは一般的ではありません。その理由には以下の点が挙げられます。
- 文化的に「結婚=一途であるべき」という価値観が根強い
- 世間体や親族からのプレッシャーが大きい
- 法制度上は一夫一婦制が前提であり、複数パートナーは認められない
しかし一方で、少子化やライフスタイルの変化により「結婚しない選択肢」や「事実婚」が広まってきたように、将来的にはオープンマリッジが一部の人にとって現実的な選択肢になる可能性もあります。
オープンマリッジを選ぶ際の注意点
オープンマリッジを検討する場合には、次の点が重要です。
- 徹底的な話し合い
どこまで認めるのか、ルールはどうするのかを明確に決める必要があります。 - 嫉妬や不安を正直に伝える
相手に遠慮せず、自分の感情を共有することが信頼関係を守るカギになります。 - 第三者への影響を考慮する
もし子どもがいる場合や、親族・職場に知られるリスクも考える必要があります。 - 無理をしない
一方が納得していない状態で始めると、大きなトラブルを招く可能性が高まります。
まとめ
オープンマリッジは「結婚の多様な形」の一つとして注目されつつあります。合意のもとで自由な関係を築ける可能性がある一方で、嫉妬や不安、社会的な偏見といった課題も大きいのが実情です。大切なのは「夫婦双方が本当に納得しているかどうか」です。無理に取り入れるのではなく、自分たちの関係性や価値観に合った形を選ぶことが重要と言えるでしょう。