VLANとは?ネットワーク分割の基本とメリットをやさしく解説

社内ネットワークの混雑やセキュリティの問題を解決するために、多くの企業で導入されている「VLAN(ブイラン)」。
ネットワークの知識があまりなくても「なんとなく耳にしたことがある」という方も多いのではないでしょうか。

本記事では、VLANの基本的な意味から、実際の設定例、導入のメリット・注意点までをわかりやすく解説します。
ネットワーク管理者はもちろん、これからネットワークを学びたい初心者の方にも役立つ内容となっています。


VLANとは何か?

VLANとは「Virtual LAN(仮想LAN)」の略称で、物理的な接続形態に依存せず、論理的にネットワークを分割する技術です。
従来のネットワークでは、物理的に同じLANケーブルでつながっている端末同士は同じネットワークに所属していました。

しかし、VLANを利用することで、同じスイッチに接続されているPCでも、グループを論理的に分けることができます。

たとえば、部署ごとにVLANを分けておくことで、ネットワークを使った情報のやりとりを制限し、セキュリティ向上やトラフィックの効率化が図れます。


VLANの仕組みとタグ付け(IEEE 802.1Q)

VLANを実現するための主要な技術として、「IEEE 802.1Q」という規格があります。
これはイーサネットフレームに「VLANタグ」と呼ばれる情報を追加し、どのVLANに属しているかを識別するための仕組みです。

タグには以下のような情報が含まれます:

  • VLAN ID(0〜4095の番号)
  • 優先度(QoSを設定するため)

タグ付けに対応したスイッチでは、受信したフレームのVLANタグを読み取り、対応するVLANにフレームを転送します。

なお、VLANタグが付いていないフレームは「デフォルトVLAN」として処理されることが多く、設定によっては無視される場合もあります。


VLANの種類:ポートベースVLANとタグVLAN

VLANにはいくつかの分類方法がありますが、主に以下の2種類が使われます。

ポートベースVLAN

スイッチのポート単位でVLANを割り当てる方法です。
物理的に決まったポートに対してVLANを設定するため、シンプルかつ設定も容易です。
ただし、PCを別のポートに差し替えるとVLANが変わってしまうため、柔軟性には欠けます。

タグVLAN(IEEE 802.1Q)

フレームにVLANタグを付けて、ネットワーク上を通過させる方法です。
複数のVLANを1本の物理回線で伝送することができ、スイッチ間接続(トランクポート)では必須の手法です。
社内ネットワークの柔軟な拡張や設計に向いています。


VLANのメリット

VLANを導入することで、以下のような多くの利点が得られます。

セキュリティの向上

部署や役職ごとにネットワークを分けることで、不要なアクセスを遮断でき、情報漏洩のリスクを軽減できます。

ブロードキャストの制限

ブロードキャストは同じネットワーク内のすべての機器に影響を与えます。
VLANを導入することで、ブロードキャストドメインを分割でき、ネットワークの効率を向上できます。

ネットワークの柔軟性

物理的な構成に縛られず、論理的にネットワークを設計できるため、部門移動や増設にも柔軟に対応できます。


VLANの設定例(Ciscoスイッチを例に)

実際のスイッチでのVLAN設定の例を紹介します。ここでは、Cisco製スイッチを使用する場合を想定します。

# VLANの作成
Switch(config)# vlan 10
Switch(config-vlan)# name HR
Switch(config-vlan)# exit

Switch(config)# vlan 20
Switch(config-vlan)# name Sales
Switch(config-vlan)# exit

# 各ポートにVLANを割り当て
Switch(config)# interface fastEthernet 0/1
Switch(config-if)# switchport mode access
Switch(config-if)# switchport access vlan 10

Switch(config)# interface fastEthernet 0/2
Switch(config-if)# switchport mode access
Switch(config-if)# switchport access vlan 20

上記の例では、ポート0/1をVLAN10(HR)、ポート0/2をVLAN20(Sales)に割り当てています。


VLAN導入時の注意点

便利なVLANですが、設計や運用の際には以下の点に注意が必要です。

  • VLAN同士の通信には「ルータ」や「レイヤー3スイッチ」が必要
  • VLAN設計をドキュメント化し、構成を明確にしておく
  • トランクポートの設定ミスによる通信障害が発生しやすい

また、VLAN IDの重複や、タグ未対応機器との接続にも注意しましょう。


VLANとルーティング(Inter-VLAN Routing)

異なるVLAN間で通信を行うには、通常のスイッチでは不可能です。
そのため「Inter-VLAN Routing(インターヴィーラン・ルーティング)」という技術を使い、ルータまたはレイヤー3スイッチでVLAN間の通信を仲介します。

Ciscoスイッチの場合、SVI(Switch Virtual Interface)を使ってVLANごとに仮想インターフェースを設定することで、通信が可能になります。

Switch(config)# interface vlan 10
Switch(config-if)# ip address 192.168.10.1 255.255.255.0
Switch(config-if)# no shutdown

Switch(config)# interface vlan 20
Switch(config-if)# ip address 192.168.20.1 255.255.255.0
Switch(config-if)# no shutdown

まとめ:VLANでネットワークをスマートに管理しよう

VLANはネットワークを効率的に管理・運用するうえで欠かせない技術です。
物理的な制限を超えて論理的にネットワークを分割することで、セキュリティ、パフォーマンス、柔軟性のすべてを向上させることができます。

企業ネットワークや中小規模オフィス、さらには家庭内でもVLANの知識は今後ますます重要になっていくでしょう。
ぜひこの記事を参考に、ネットワークの設計や構築にVLANを活用してみてください。

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