停電や電源トラブルによる機器の停止は、業務の生産性や信頼性に大きな影響を与えることがあります。そんなトラブルから大切なデータや機器を守る手段として、UPS(無停電電源装置)の導入が注目されています。しかし、「どのUPSを選べばいいのか?」「設置場所はどうする?」「保守点検は必要?」など、実際に導入を検討すると多くの疑問が出てくるものです。
この記事では、UPS導入を検討する際に押さえておきたいポイントから、設置、運用までをわかりやすく解説します。安心・安全な電源対策を実現するために、ぜひ参考にしてください。
UPSとは?その役割と必要性
UPS(Uninterruptible Power Supply)は、停電や瞬間的な電源トラブルが発生した際に、機器へ一時的に電力を供給し続ける装置です。主にサーバーやネットワーク機器、医療機器、POSレジ、製造装置など、電源が切れると業務や安全に重大な影響を及ぼす機器に使用されます。
突然の停電によってデータが消失したり、作業中のファイルが壊れるといったリスクを最小限に抑えるために、UPSの導入は極めて有効です。また、落雷などによる瞬間的な電圧変動やノイズにも対応できるモデルもあり、電源の質を安定化させる目的でも活用されています。
UPS導入前に考えるべきポイント
UPS導入にあたっては、単に「あると便利そうだから」という理由だけで選んではいけません。目的や環境に応じて、導入するUPSのタイプや容量をしっかり検討する必要があります。
1. どの機器に対してUPSを使うのか
まずは、UPSで守りたい機器をリストアップしましょう。サーバー、PC、NAS、ルーター、スイッチなどが代表例ですが、全ての機器にUPSを付ける必要はありません。業務にとって重要な機器、再起動や故障が致命的な機器を優先するのが基本です。
2. 必要な電力容量を確認する
UPSには「何ワットまで供給できるか」という容量制限があります。守りたい機器の消費電力を合計して、少し余裕を持った容量のUPSを選びましょう。消費電力は機器の仕様書や裏面ラベルなどに記載されています。
3. 停電時にどれくらい動作させたいか
UPSのバッテリーでどれくらいの時間動作させたいかも重要です。5分~10分だけバックアップできればよいのか、30分以上持たせたいのか。短時間で自動シャットダウンできるような運用も可能なので、自社の要件に応じた時間を決めましょう。
4. オンライン式か、常時商用給電か
UPSには主に「常時商用給電(ラインインタラクティブ方式)」と「常時インバータ給電(オンライン方式)」があります。より高精度な電圧制御や無瞬断給電が必要な場合はオンライン方式が適していますが、価格が高くなります。一般的なオフィス機器ならラインインタラクティブ方式で十分な場合も多いです。
UPS設置時の注意点
UPSの設置にあたっては、いくつかの実務的な注意点があります。誤った設置は機器のトラブルを引き起こす可能性があるため、以下のポイントを押さえておきましょう。
設置場所の選定
UPSはバッテリーを内蔵しており、ある程度の熱が発生します。そのため、風通しのよい場所で、直射日光や高温・多湿を避ける必要があります。また、埃が溜まりやすい場所や、振動の多い場所も避けたほうがよいでしょう。
電源ケーブルの取り回し
UPSに接続するケーブルは多くなる傾向があります。きれいに配線をまとめないと、メンテナンス時にトラブルの原因となります。特にサーバーラック内で設置する場合は、ケーブル管理用のグッズを活用するとよいでしょう。
接続するコンセントに注意
UPSによっては、家庭用のコンセント(100V)では使用できないものもあります。また、UPS自体の最大出力にも限界があるため、延長タップを無理に使って多くの機器をつなぐと過負荷になります。正しい電源の知識と接続数の確認が重要です。
UPS導入後の運用と保守
UPSは導入して終わりではありません。定期的な点検やバッテリー交換など、日常的な管理が重要です。
定期点検のすすめ
UPSはバッテリーを内蔵しているため、年月が経つと劣化します。一般的には2〜4年程度でバッテリー交換が推奨されており、放っておくとバックアップ機能が働かなくなります。メーカーによってはバッテリー残量をチェックできるソフトも提供されています。
自動シャットダウン設定
PCやサーバーに専用ソフトをインストールすることで、UPSのバッテリー残量が一定以下になると自動でシャットダウンさせることができます。これにより、バッテリーが切れる前に安全に機器を停止させ、データの損失やシステム破損を防げます。
非常時のマニュアル整備
停電時の対応手順やUPSの状態確認方法などをまとめたマニュアルを用意しておくと、いざというときに慌てずに対応できます。担当者の交代や新任時にも役立ちます。
まとめ:安心のために、今こそUPSを
UPSの導入は、災害やトラブルから機器やデータを守るための第一歩です。特に近年では、自然災害の激甚化やテレワークの拡大に伴い、安定した電源環境の重要性が高まっています。
「何を守るか」「どれだけの時間バックアップするか」「どんな設置場所が適切か」などを明確にして、自社に合ったUPSを選びましょう。そして、導入後も定期的な点検と管理を行うことで、長く安心して活用することができます。
停電はいつ起こるか分かりません。備えあれば憂いなし。ぜひこの機会にUPSの導入を前向きに検討してみてください。