システム開発におけるテーブル設計の作成法:実践的なステップと注意点

システム開発において「テーブル設計」は、土台となる重要な工程のひとつです。どんなに優れたアプリケーションを作っても、データベースの設計が不十分であれば、性能の低下やメンテナンス性の悪化、データの不整合といったトラブルが発生します。テーブル設計は、単なる項目の並べ方ではなく、利用者の業務フローや将来の拡張性までを見据えた「情報の設計図」といえるでしょう。本記事では、システム開発で実践されるテーブル設計の作成法について、基本的な流れから実践的な手順、さらに注意すべきポイントまでをわかりやすく解説します。


テーブル設計とは何か

テーブル設計とは、システムで扱うデータを整理し、データベースに格納するための「構造」を定義することです。システムが扱う情報は、ユーザー、商品、注文、在庫などさまざまな要素に分解されます。これらを効率的かつ正確に保存し、必要なときに取り出せるようにするための設計図がテーブル設計です。


テーブル設計の基本的な流れ

テーブル設計は、以下のステップで進めます。

  1. 業務要件の整理
  2. エンティティの抽出
  3. 属性の定義
  4. 正規化
  5. キーの設定
  6. 物理設計

エンティティの抽出と関係性の把握

ECサイトを例にすると、以下のようなエンティティを考えられます。

  • 顧客(Customer)
  • 商品(Product)
  • 注文(Order)
  • 注文詳細(OrderDetail)

サンプルER図

以下のような関係図を作成するとわかりやすくなります。

[Customer] 1 ---- * [Order] 1 ---- * [OrderDetail] * ---- 1 [Product]
  • 顧客は複数の注文を持つ(1対多)
  • 注文は複数の商品を含む(多対多 → 中間テーブルとしてOrderDetailを作成)

正規化によるデータの整理

正規化のステップを踏むことで、冗長なデータや不整合を避けられます。例えば、注文ごとに顧客の住所を繰り返し保存するのではなく、顧客テーブルに住所をまとめて管理し、注文テーブルから参照する形にします。


キー設定の重要性

  • 主キー(PK):行を一意に識別
  • 外部キー(FK):テーブル間の関係を明確化
  • ユニークキー(UK):重複を防止

SQLによるテーブル定義例

ER図をもとに、実際のSQLでテーブルを作成する例を示します(MySQLを想定)。

-- 顧客テーブル
CREATE TABLE Customer (
    customer_id INT AUTO_INCREMENT PRIMARY KEY,
    name VARCHAR(100) NOT NULL,
    email VARCHAR(100) UNIQUE NOT NULL,
    address VARCHAR(255),
    phone VARCHAR(20),
    created_at TIMESTAMP DEFAULT CURRENT_TIMESTAMP
);

-- 商品テーブル
CREATE TABLE Product (
    product_id INT AUTO_INCREMENT PRIMARY KEY,
    product_name VARCHAR(100) NOT NULL,
    price DECIMAL(10,2) NOT NULL,
    stock INT DEFAULT 0,
    created_at TIMESTAMP DEFAULT CURRENT_TIMESTAMP
);

-- 注文テーブル
CREATE TABLE `Order` (
    order_id INT AUTO_INCREMENT PRIMARY KEY,
    customer_id INT NOT NULL,
    order_date TIMESTAMP DEFAULT CURRENT_TIMESTAMP,
    total_amount DECIMAL(10,2) NOT NULL,
    FOREIGN KEY (customer_id) REFERENCES Customer(customer_id)
);

-- 注文詳細テーブル
CREATE TABLE OrderDetail (
    order_detail_id INT AUTO_INCREMENT PRIMARY KEY,
    order_id INT NOT NULL,
    product_id INT NOT NULL,
    quantity INT NOT NULL,
    unit_price DECIMAL(10,2) NOT NULL,
    FOREIGN KEY (order_id) REFERENCES `Order`(order_id),
    FOREIGN KEY (product_id) REFERENCES Product(product_id)
);

この構造により:

  • 顧客テーブルでユーザーを管理
  • 注文テーブルで注文情報を記録
  • 注文詳細テーブルで注文ごとの商品を管理
  • 商品テーブルで在庫や価格を保持

といった役割分担が可能になります。


テーブル設計でよくある失敗例

  • カラム粒度の不明確さ
  • 冗長データの発生
  • キー設定の不備
  • 将来拡張を考慮しない設計

テーブル設計を効率化するツール

  • ER図作成:Draw.io、Astah、ERMaster
  • データベース設計支援:MySQL Workbench、Oracle SQL Developer Data Modeler

実務で意識すべきポイント

  1. 業務担当者との対話を重視
  2. 拡張性を確保
  3. パフォーマンスを考慮
  4. 命名規則を統一

まとめ

テーブル設計はシステム開発の基盤を支える重要な工程です。業務要件を正しく理解し、エンティティを整理し、正規化とキー設定を適切に行うことで、信頼性の高いデータベースを構築できます。さらに、ER図で視覚化し、SQLで具体化することで、チーム全体で共有できる「強固な設計図」となるのです。

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