風俗営業を始めるには、営業所の所在地を管轄する警察署を通じて「風俗営業許可申請」を行う必要があります。許可がなければ営業は違法となり、罰則の対象になることもあります。とはいえ、申請には多くの書類や厳しい要件があり、初めての方には難しく感じるかもしれません。この記事では、風俗営業許可申請の概要から必要書類、手続きの流れ、申請時の注意点までをわかりやすく解説します。これから風俗営業を始めようと考えている方や、申請を検討している方にとって、参考になる情報を網羅しています。
風俗営業とは?定義と種類の確認
風俗営業とは、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)に基づいて定められた業種のことです。風営法において、風俗営業は以下の7種類に分類されています。
1号営業:キャバクラ・ホストクラブなどの接待を伴う飲食店
2号営業:低照度飲食店(照度10ルクス以下)
3号営業:区画のない飲食店(ショーパブなど)
4号営業:ダンスホール・ナイトクラブ
5号営業:マージャン店・パチンコ店
6号営業:ゲームセンターなどの遊技場
7号営業:個室ビデオ店などの視聴覚施設
これらの営業を行うには、それぞれの業種に応じた風俗営業許可が必要です。許可なしで営業すると、営業停止命令や罰金、懲役などの法的措置が取られることがあります。
風俗営業許可が必要な理由
風俗営業は一般的な飲食店と比べ、深夜営業や接待行為を伴うケースが多いため、公共の秩序や青少年の保護といった観点から厳しく規制されています。これにより、周辺住民とのトラブルの防止や、営業内容の適正な管理が求められるのです。
許可を受けることで、法的な裏付けをもって営業が可能となり、トラブルの抑止にもつながります。また、金融機関からの融資や物件契約時にも、許可取得が信頼性の証とされることがあります。
許可申請の流れ
風俗営業許可申請の流れは以下の通りです。
- 事前調査・物件の確認
営業場所が風営法の規制区域(保全対象施設から一定の距離内など)に該当しないか確認します。自治体によって規制内容は異なります。 - 必要書類の準備
申請書のほか、添付資料として多数の書類が必要です(後述)。 - 管轄警察署への申請
申請書類を揃えて警察署の生活安全課に提出します。 - 警察による審査・実地調査
書類審査と現地の確認が行われます。必要に応じて補足説明を求められることも。 - 許可証の交付(約55日後)
審査に問題がなければ、約55日で許可証が交付されます。
申請に必要な主な書類
風俗営業許可申請では、以下のような書類が必要です(地域によって異なる場合があります)。
- 申請書(警察署指定の様式)
- 営業所の賃貸契約書や登記簿謄本
- 営業所の平面図・周辺図・照明図などの設計図面
- 住民票・身分証明書(申請者・管理者)
- 管理者選任届
- 営業所周辺の保全対象施設調査報告書
- 照明・音響設備の仕様書
- 営業所の写真
- 誓約書類など
図面作成や調査資料の作成には専門知識が必要なことも多く、行政書士に依頼する事業者も多く見られます。
許可を取得するための要件
風俗営業許可を取得するためには、以下のような基準を満たしている必要があります。
人的要件
- 申請者および管理者が成人であること
- 犯罪歴がなく、過去に風営法違反で処分を受けていないこと
- 破産していないこと(免責が確定していない場合)
場所的要件
- 学校、病院、児童福祉施設などから一定の距離(例:100m以上)を確保していること
- 用途地域の規制に適合していること(商業地域や準工業地域など)
- ビルの構造や避難経路などが風営法に適合していること
これらの要件を満たさない場合は、申請が却下される可能性があります。
行政書士に依頼するメリット
風俗営業許可申請は、書類作成の専門性が高く、ミスや漏れがあると再提出や審査の遅延につながります。そのため、行政書士に依頼することで以下のメリットがあります。
- 書類作成や図面作成を正確に行ってもらえる
- 保全対象施設の調査や距離測定も正確に実施できる
- 警察とのやり取りも代行してもらえる
- スムーズかつスピーディな申請が可能になる
費用は15万円〜30万円程度が相場ですが、スムーズな取得と確実性を考慮すると、専門家に依頼するのは有効な選択肢です。
許可取得後の注意点
許可を取得した後も、風営法に基づいた営業管理が必要です。以下のような義務が課されます。
- 営業開始後10日以内に営業開始届を提出
- 管理者の変更時には届出が必要
- 営業時間の制限(深夜0時までなど)を遵守
- 従業員名簿の作成と管理
- 店内の構造変更時には事前に届出を行う
これらの義務を怠ると、営業停止や許可の取消につながることもあるため注意が必要です。
よくある申請時のトラブルと対策
トラブル1:場所の制限に該当していた
営業所の場所が保全対象施設からの距離制限に抵触していたため、不許可になるケースがあります。事前に用途地域や距離制限を調査することが重要です。
トラブル2:図面の不備
設計図面に不備があると、補正や再提出を求められ、許可が大幅に遅れることがあります。行政書士に図面作成を依頼すると安心です。
トラブル3:本人や関係者に欠格事由がある
申請者や管理者に犯罪歴がある、過去に風営法違反があるなどの場合、許可が下りないことがあります。身元確認を事前に行っておきましょう。
まとめ|しっかり準備して確実な許可取得を
風俗営業許可申請は、多くの準備と正確な手続きが必要な申請です。物件の場所、書類の整備、人員の選定など、いずれも審査に影響を与える重要な要素です。事前調査と正しい手続きを怠らず、必要であれば専門家のサポートも受けながら、確実な許可取得を目指しましょう。
風俗営業は法律で定められた営業形態です。正しく許可を得て、社会的信頼とともに安全な営業を行っていくことが、長期的な成功への第一歩となります。