制限行為能力者の問題点とは?相手方の催促権・取り消し・法定追認のポイントを解説

制限行為能力者とは、未成年者や成年被後見人など、法律上、契約などの行為を単独で行う能力が制限されている人のことを指します。
これは制限行為能力者を保護するための制度ですが、一方で取引の相手方にとっては問題となることもあります。

例えば、「契約を取り消されてしまった」「ウソをつかれて契約を結ばされた」など、トラブルが発生する可能性があります。
また、制限行為能力者が契約を行った場合、相手方には「催促権」があり、一定の条件下で「法定追認」が成立することもあります。

本記事では、制限行為能力者の問題点について、特に 相手方の催促権・取り消し・ウソによる影響・法定追認 について詳しく解説します。

制限行為能力者の基本的な仕組みとは?

制限行為能力者とは、法律上の取引を行う際に単独で契約をする能力が制限されている人のことを指します。
これは、本人を保護するための制度ですが、取引の相手方にとってはリスクとなることがあります。

制限行為能力者の種類

以下の4つのタイプに分類されます。

  1. 未成年者(親権者の同意が必要)
  2. 成年被後見人(判断能力が著しく低く、法律行為が制限される)
  3. 被保佐人(重要な契約には保佐人の同意が必要)
  4. 被補助人(特定の行為に補助人の同意が必要)

それぞれの行為能力が制限されるため、契約を自由に行えず、取り消しが可能なケースがあります。
この点が、取引の相手方にとって問題になることがあります。


相手方の催促権とは?

制限行為能力者が契約を結んだ場合、相手方は 契約が確定するのかどうか不安 になります。
そこで民法では、取引の相手方に 催促権 を認めています。

催促権とは?

相手方は、制限行為能力者の法定代理人(親権者や後見人など)に対して、「契約を追認するのか、取り消すのか」を決めるように催促する権利を持ちます。
催促を受けた側は、1か月以内に回答 しなければなりません。
この期間内に返答がなければ、契約は 追認したものとみなされます

相手方にとってのリスク

もし催促しないまま長期間経過すると、後から契約を取り消される可能性があり、損失を被るリスクがあります。
そのため、相手方としては できるだけ早く催促する ことが重要です。


取り消しができるのはどんな場合?

制限行為能力者が結んだ契約は、原則として 取り消し可能 です。

取り消しのルール

  • 取り消せるのは 制限行為能力者本人またはその法定代理人(親権者・後見人など)
  • 相手方は取り消しができない
  • 取り消しが行われると、契約は 最初から無かったことになる(遡及効)

例えば、未成年者が 親の同意なし に高額なスマホを購入した場合、親が契約を取り消すことができます。
この場合、契約は無効となり、未成年者はスマホを返し、販売店も支払われた代金を返す義務が生じます。

取り消しができないケース

ただし、次のような場合は取り消しができません。

  1. 制限行為能力者が成年に達した後に契約を認めた場合
  2. 取り消し可能な契約であることを知りながら、相手方が善意で取引した場合
  3. 取り消しの前に「法定追認」が成立した場合(次章で解説)

制限行為能力者がウソをついた場合はどうなる?

問題となるのは、制限行為能力者が 故意にウソをついて契約を結んだ場合 です。

「成人しています」とウソをついた場合

未成年者が「私は18歳です」と偽って契約を結び、後から「未成年だから取り消します」と主張することがあります。

この場合、裁判例では 「信義則」に反するとして取り消しを認めないケース もあります。

ウソを防ぐために

  • 契約時に 身分証明書の提示を求める
  • 「未成年者は契約できません」と明確に表示する
  • 契約書に「未成年者の場合は取り消し不可」と明記する(ただし法的には無効の場合が多い)

相手方としては、未成年者かどうか 慎重に確認 することが重要です。


法定追認とは?契約が確定するポイント

「法定追認」とは、制限行為能力者が 一定の行動を取ることで契約を認めたとみなされること です。

法定追認の条件

以下のような行為を行うと、契約を追認したとみなされ、取り消しができなくなります

  1. 契約の 履行を完了 した(例:未成年者が購入した商品をそのまま使い続ける)
  2. 契約後に 「この契約で問題ない」と意思表示 した
  3. 取り消しできることを知りながら 契約内容を一部でも変更 した
  4. 契約後に、法定代理人の許可を得て 支払いを行った など

成年に達すると、自動的に追認したとみなされる ケースもあるため、注意が必要です。

相手方にとっての対策

  • 契約後も制限行為能力者の動向を確認する
  • 履行の状況を記録し、追認の証拠を残す

まとめ

制限行為能力者との取引には、さまざまなリスクが伴います。
特に、相手方にとっては 催促権の行使・取り消しリスク・ウソの問題・法定追認 などを理解し、適切に対応することが重要です。

相手方の対策ポイント

  • 契約時に年齢確認を徹底する
  • 契約後は早めに催促権を行使する
  • 法定追認の証拠をしっかり記録する

このような対応を取ることで、制限行為能力者との契約リスクを最小限に抑えることができます。

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