地建物取引士(宅建)の試験では、毎年高い確率で出題される「借地借家法」。特に借地権や借家権に関する知識は、実務でも非常に重要です。この法律は借主を保護するために制定されており、一般的な民法とは異なる特例が数多く存在します。そのため、暗記だけではなく、内容をしっかりと理解しておくことが合格のカギになります。この記事では、宅建試験対策として押さえておきたい「借地借家法」の基本から、試験によく出るポイントまでをやさしく丁寧に解説していきます。
借地借家法とは?民法との違いをおさえよう
借地借家法は、正式には「借地借家法(平成3年法律第90号)」といい、民法における賃貸借契約の特例を定めた法律です。特に借主(借地人・借家人)の立場を保護する目的で作られています。
民法上の賃貸借契約では、契約期間が終わると借主は原則として明け渡さなければなりませんが、借地借家法では、正当な理由がなければ貸主は契約を終了できないなど、借主に有利なルールが定められています。
つまり、借地借家法は「借主を守るための特別法」と理解しておくと良いでしょう。
借地権とは?定義と種類をチェック
借地権とは、建物を建てる目的で他人の土地を借りる権利のことを指します。借地借家法では、借地権には以下の2種類があります。
旧借地権(借地法による借地権)
1992年(平成4年)7月31日以前に締結された借地契約は、旧法(借地法)の適用を受けます。旧法では、借地権の存続期間が非常に長く、また更新が原則として認められており、実質的に半永久的に土地を借りられるという特徴がありました。
試験では「旧法借地権は存続期間30年、更新は20年、さらに更新ごとに20年」などの具体的数値も問われるので、丸暗記しておくことも重要です。
定期借地権(新法による借地権)
1992年8月1日以降に締結された契約は、原則として新借地借家法の適用を受けます。新法では、契約の種類として以下の3つの定期借地権があります。
- 一般定期借地権(50年以上)
- 建物譲渡特約付借地権(30年以上)
- 事業用借地権(10年以上50年未満)
特に「更新がないこと」「公正証書など書面で契約すること」などが試験で問われやすいポイントです。
借家権とは?借地権との違いも理解しよう
借家権とは、建物を借りて使用する権利のことです。住居や事務所としての利用が対象になります。
借家権においても、借主の保護が優先されており、貸主が契約を終了したいときには、「正当事由」がなければ契約の更新を拒むことができません。更新の申し入れを借主がすれば、契約は自動的に更新されます。
民法だけだと貸主有利になりがちですが、借家人が不当に追い出されないよう、借地借家法が大きな役割を果たしています。
借地権・借家権の「正当事由」とは?
試験でよく出るキーワードが「正当事由」です。貸主が契約の更新を拒むには、「正当事由」が必要です。
この正当事由には次のような要素が総合的に考慮されます。
- 建物の使用状況や経済的事情
- 借主の居住年数や生活への影響
- 貸主の土地の利用予定や必要性
- 代替提供の有無(立退料を提示するなど)
つまり、貸主が「自分で使いたいから」と言っても、それだけでは足りず、代替の提案なども含めて総合的に判断されます。
試験では、「正当事由が必要なのはどのケースか?」というような問題で出題されやすいです。
定期借家契約と普通借家契約の違い
借家契約には「普通借家契約」と「定期借家契約」があります。
普通借家契約
- 更新が原則認められる
- 更新拒絶には正当事由が必要
- 期間は自由(1年以上が望ましい)
定期借家契約
- 契約更新なし(終了時に必ず退去)
- 書面での契約が必須(口頭不可)
- 契約の終了通知が必要(1年〜6ヶ月前まで)
試験では、「定期借家契約は更新があるか」「終了の通知が必要か」「書面でないと無効か」などがよく問われます。
試験対策ポイントまとめ
最後に、宅建試験における借地借家法の対策ポイントを簡単に整理しておきます。
- 旧借地権は「建物所有を目的とした地上権・賃借権」で更新がある
- 定期借地権には種類ごとの「最低期間」や「更新なし」のルールがある
- 借家契約でも「正当事由」がキーワードになる
- 定期借家契約は必ず「書面」での契約が必要
- 「立退料の提示=正当事由が補完される」などの判例知識も活かす
細かい数値や文言も出題されるため、過去問で繰り返しチェックしながら、体系的に理解していくのが合格への近道です。