新しいシステムを導入する際には、費用・機能・サポート体制などを比較検討したうえで、適切な業者を選定する必要があります。そのために欠かせないのが「稟議書」です。この記事では、相見積もりによる複数業者の比較結果を明記したうえで、どのように稟議書を構成すべきかを具体的な例文とともに解説します。これからシステム導入を検討している方、稟議書の作成を任された方にとって役立つ内容となっています。
システム導入に稟議書が必要な理由
システム導入は通常、数十万円から数百万円に及ぶコストが発生するため、組織内での承認が必須です。特に以下のような点で稟議書の重要性が増します。
- 投資対効果(ROI)を上層部に示す必要がある
- 導入後の業務効率改善の根拠を明示する必要がある
- 客観的な比較に基づいた業者選定が求められる
このような背景から、稟議書には「導入目的」「比較結果」「選定理由」を論理的に記載することが重要です。
稟議書に記載すべき基本構成
以下のような構成で稟議書を作成すると、内容が整理されて伝わりやすくなります。
- 件名
- 背景・目的
- 導入予定のシステム概要
- 相見積もり結果の比較
- 業者ごとの長所・短所
- 最終選定理由
- 費用明細
- 導入スケジュール
- 承認依頼事項
相見積もりの比較方法と記載ポイント
業者ごとの見積もりを比較する際は、単に価格だけを見るのではなく、以下のような観点から多面的に評価することが重要です。
項目 | A社 | B社 |
---|---|---|
初期費用 | 150万円 | 180万円 |
月額運用費 | 3万円 | 2万円 |
機能範囲 | 標準機能のみ | カスタマイズ可 |
サポート体制 | 平日9-17時 | 24時間365日 |
導入実績 | 中小企業中心 | 大手含む豊富な実績 |
表のように視覚的に整理すると、説得力が増し、読み手も理解しやすくなります。
稟議書内での「長所・短所」記載の具体例
以下に、それぞれの業者の特徴をまとめた例を紹介します。
A社の長所:
- 初期費用が抑えられており、導入コストが軽減される
- 国内中小企業向けに特化したUIで操作性が高い
A社の短所:
- カスタマイズ対応が不可で、自社独自業務に完全適合しない
- サポートが平日のみで緊急時の対応に不安がある
B社の長所:
- 柔軟なカスタマイズが可能で、自社業務に合わせた運用が可能
- サポート体制が充実しており、リスク管理がしやすい
B社の短所:
- 初期費用がやや高額
- 一部機能に過剰な仕様があり、使いこなすまでに時間を要する可能性がある
選定理由と決定に至った経緯の書き方
選定理由は、「費用」だけでなく「業務適合性」「将来性」「保守体制」などを加味して判断する必要があります。以下に稟議書に記載する決定理由の一例を紹介します。
【選定理由の例文】
今回のシステム導入にあたっては、A社およびB社の2社から見積もりを取得し、機能、価格、サポート体制等を総合的に評価いたしました。
初期費用に関してはA社が有利であるものの、当社業務に必要なカスタマイズが行えない点、およびサポート体制の限定性を鑑みると、長期的には運用上のリスクが高いと判断されました。
一方、B社は初期費用こそ高めですが、業務に適合した柔軟なカスタマイズが可能であり、加えて24時間のサポート体制を有しているため、導入後の安定性および拡張性に優れていると評価されました。
以上の理由から、B社によるシステム導入を進めたく、承認をお願い申し上げます。
稟議書全体の例文(テンプレート)
diffコピーする編集する件名:販売管理システム導入に関する稟議書
1.背景および目的
当社ではこれまでExcelベースで販売管理業務を行ってきましたが、業務の煩雑化と属人化により、ミスや遅延が発生するケースが増加しております。これに伴い、業務効率化と品質向上を目的として、新たに販売管理システムを導入したく、稟議いたします。
2.システム概要
導入を予定しているのは、販売データの一元管理、受発注管理、請求処理までをカバーするクラウド型販売管理システムです。
3.相見積もり結果
以下2社から見積を取得し、比較検討いたしました(詳細は添付資料をご参照ください)。
4.選定理由
上記の通り、B社は当社の業務フローに柔軟に対応でき、かつ安定したサポート体制が整っているため、長期的な視点で最も適していると判断しました。
5.費用
- 初期導入費用:180万円(税込)
- 月額利用料:2万円(税込)
6.導入スケジュール
- 稟議承認後:即日契約手続き
- 1か月以内:初期設定・トレーニング
- 2か月後:本稼働予定
7.承認依頼事項
上記内容に基づき、B社との契約およびシステム導入に関する承認をお願い申し上げます。
まとめ:比較と判断が明確な稟議書が信頼を生む
稟議書は単なる申請書ではなく、関係者に「なぜそれが必要なのか」「なぜその業者を選んだのか」を明確に伝えるための重要な文書です。相見積もりによる公平な比較、客観的な長所短所の提示、そして合理的な決定理由の記載があってこそ、スムーズな承認につながります。この記事を参考に、納得感のある稟議書を作成してみてください。