改葬(お墓の引っ越し)を行う際には、関係者や親族に対して事前に「挨拶状」を送ることが望まれます。改葬は先祖代々の供養に関わる大切な行事であり、心を込めて丁寧にお知らせすることがマナーです。しかし、いざ文章を作ろうとすると、「どういう表現が適切か」「失礼にならない書き方は?」と悩む方も多いでしょう。
本記事では、改葬挨拶状の基本的なマナーや構成、そしてすぐに使える文例を複数ご紹介します。改葬の事情や相手との関係に合わせて、安心して使える文章作成の参考にしてください。
改葬とは何か
改葬とは、既存の墓地や納骨堂から遺骨を別の場所に移すことを指します。主な理由としては、墓地の管理が難しくなった、故郷から離れた場所に移り住んだ、後継者がいないなどがあります。
改葬は市町村の許可が必要で、手続きの一環として親族や関係者への連絡も欠かせません。この際に用いられるのが「改葬挨拶状」です。
改葬挨拶状を送る目的
改葬挨拶状は、単なる事務連絡ではなく、感謝の気持ちや事情説明を込める大切な手段です。
- 感謝の表明:これまで供養や管理に協力してくれた人々への感謝
- 事情説明:改葬の理由を簡潔かつ誠実に説明
- 今後の案内:新しい墓地や納骨場所についての情報
この3つの要素をバランスよく盛り込むことで、円滑な理解と協力を得られます。
改葬挨拶状の書き方のポイント
- 冒頭の挨拶:時候の挨拶や相手を気遣う言葉から始める
- 改葬の報告:事実を簡潔に伝える
- 理由の説明:詳細になりすぎず、要点を押さえる
- 感謝の言葉:これまでの支援や供養へのお礼
- 結びの挨拶:今後の変わらぬお付き合いをお願いする一言
文例① 一般的な改葬挨拶状
拝啓 ○○の候、皆様には益々ご健勝のこととお喜び申し上げます。
さて、このたび諸般の事情により、先祖代々の墓を○○市○○町の○○寺より、○○市○○町の○○霊園へ改葬いたしました。
これまで長年にわたり、ご先祖の供養や墓守にご厚情を賜りましたこと、心より御礼申し上げます。
今後とも変わらぬご厚誼をお願い申し上げます。
敬具
文例② 距離的理由による改葬
拝啓 ○○の候、皆様にはご健勝のことと存じます。
このたび、私どもの居住地と墓所との距離が遠く、管理が困難になったため、○○霊園へ改葬いたしました。
長年のご厚意に深く感謝申し上げますとともに、今後も変わらぬお付き合いをお願い申し上げます。
敬具
文例③ 後継者不在による改葬
拝啓 ○○の候、皆様にはお健やかにお過ごしのことと存じます。
このたび、将来の墓守の継承が困難となるため、○○市○○町の○○納骨堂へ改葬いたしました。
長年にわたり温かいご供養をいただき、心より御礼申し上げます。
敬具
文例④ 墓地統合の場合
拝啓 ○○の候、皆様にはますますご健勝のこととお喜び申し上げます。
このたび、親族間で相談の結果、墓地を○○霊園へ統合することとなりました。
長年のご支援とご供養に心から感謝申し上げます。
敬具
文例⑤ 簡潔な改葬通知
拝啓 ○○の候、皆様にはお健やかにお過ごしのことと存じます。
このたび○○寺より○○霊園へ改葬いたしましたのでご報告申し上げます。
長年のご厚情に深く感謝いたします。
敬具
挨拶状を送るタイミング
挨拶状は改葬前に送るのが基本です。特に親族や檀家関係者には、事前に了承を得る意味もあります。やむを得ず事後になった場合でも、速やかに報告することが大切です。
封筒・用紙の選び方
- 封筒:白無地か淡い色。慶弔兼用の便箋・封筒が無難。
- 用紙:縦書きが正式だが、近年は横書きも増加。
- 筆記具:万年筆やボールペンで黒インクを使用。
まとめ
改葬はご先祖様や親族への想いを大切にしながら行うべき大事な行事です。挨拶状は、その想いを形にして伝える重要な役割を果たします。本記事の文例を参考に、相手の立場に配慮した心温まる文章を作成すれば、改葬の報告も円滑に進められるでしょう。