会社員や公務員として働いていると、毎月のお給料から自動的に健康保険料が引かれています。
このときの計算の基準になるのが「標準報酬月額」という数字です。
聞き慣れない言葉かもしれませんが、実は毎月の給与やボーナスに関わる重要な概念であり、将来受け取る年金額にも影響します。
本記事では「標準報酬月額とは何か」「どのように決まるのか」「保険料や将来の給付にどう関わるのか」を、わかりやすく解説します。
標準報酬月額とは?
標準報酬月額とは、健康保険料や厚生年金保険料を計算するために用いられる基準額のことです。
実際の給与額そのものを使うのではなく、厚生労働省が定める「等級表」に当てはめて決められます。
例えば、月収が28万円の人は「28万円」という実額ではなく、等級表の中から「標準報酬月額28万円」という区分に割り振られ、その額を基に保険料が算出されます。
この仕組みによって、給与が細かく異なる人同士でも、保険料を公平に負担できるようになっています。
標準報酬月額の決まり方
標準報酬月額は「4月・5月・6月の給与」を基準にして決められるのが基本です。
この3か月間の平均給与をもとに、毎年7月に標準報酬月額が決定され、9月から翌年8月までの保険料計算に使われます。
決定方法の流れ
- 4月~6月に実際に支払われた給与を集計する
- 各月の合計額を3で割り、平均額を算出
- その平均額を「標準報酬月額等級表」に当てはめる
- 該当する等級が、その人の標準報酬月額として登録される
例:月給28万5千円の場合
- 4月:285,000円
- 5月:286,000円
- 6月:284,000円
3か月の平均 → 285,000円
標準報酬月額表で確認 → 「等級28万円」に該当
→ 標準報酬月額は28万円として決定される
この仕組みを「定時決定」と呼びます。
標準報酬月額に含まれるもの・含まれないもの
標準報酬月額を決めるときには、給与の中でも「報酬」とみなされるものだけが対象です。
含まれるもの
- 基本給
- 時間外手当(残業代)
- 通勤手当
- 各種手当(役職手当、住宅手当など)
含まれないもの
- 退職金
- 出張の旅費や実費精算分
- 慶弔見舞金
要するに「労務の対価」として支払われるものは含まれ、単なる実費精算や臨時的なものは除外されます。
随時改定(給与が大きく変わった場合)
給与は常に一定ではなく、昇給や降給、手当の変動があります。
そのため「定時決定」だけでは実態に合わない場合が出てきます。
このときに使われる仕組みが「随時改定」です。
例えば昇給で月収が大きく増えた場合、3か月連続で給与が変動し、従来よりも2等級以上差が出ると、標準報酬月額が変更されます。
これにより、保険料負担が現実の給与水準に合うようになります。
標準賞与額との違い
毎月の給与に対しては「標準報酬月額」が使われますが、ボーナス(賞与)に対しては「標準賞与額」という別の基準が用いられます。
賞与はその都度の支給額を基準に計算され、1回の支給額の上限は573万円と決められています。
したがって、月給に基づく標準報酬月額とは別枠で保険料が加算される仕組みです。
標準報酬月額と健康保険料の関係
健康保険料は、次のように計算されます。
標準報酬月額 × 保険料率 ÷ 2
保険料は労使折半で、会社と従業員が半分ずつ負担します。
例えば標準報酬月額が28万円で、健康保険料率が10%の場合:
- 保険料全体:28万円 × 10% = 28,000円
- 会社負担:14,000円
- 従業員負担:14,000円
実際の保険料率は加入している健康保険組合や協会けんぽによって異なります。
標準報酬月額は将来の年金額にも影響する
標準報酬月額は、単に毎月の保険料計算に使われるだけでなく、将来の年金額にも直結します。
厚生年金保険の加入者の場合、「標準報酬月額と標準賞与額の平均」が年金額の計算基礎になります。
つまり、若いときから高い標準報酬月額で長く働いた人ほど、将来受け取れる年金額が多くなるのです。
標準報酬月額を確認する方法
自分の標準報酬月額は、給与明細や会社からの通知書で確認できます。
特に「健康保険・厚生年金保険 被保険者標準報酬月額決定通知書」が毎年発行されるため、そこに等級と金額が明記されています。
また、マイナポータルや年金ネットからも確認可能です。
まとめ
標準報酬月額は、健康保険料や年金保険料の計算の基準になる非常に重要な数字です。
- 4~6月の給与を基にして毎年決定される
- 賃金変動が大きい場合は「随時改定」で変更される
- 健康保険料だけでなく将来の年金額にも影響する
普段はあまり意識しませんが、長い目で見れば家計や老後の生活に大きく関わる仕組みです。
自分の標準報酬月額を把握しておくことで、毎月の保険料負担や将来の年金額の見通しを立てやすくなるでしょう。