企業における「現金」や「預金」の管理は、経理業務のなかでも基礎中の基礎でありながら、最も重要な部分でもあります。現金出納帳を正しく記帳することや、小口現金の管理ルールを整備すること、当座預金を安全に活用することは、会社の資金繰りや信用に直結します。この記事では、現金と預金の管理方法について、「現金出納帳」「小口現金」「当座預金」などのキーワードを中心に、基本知識から実務的な運用方法までをわかりやすく解説します。経理初心者の方にも理解しやすいように、具体例を交えて紹介していきます。
現金管理の基本とは
企業が扱う「現金」とは、紙幣や硬貨だけではなく、金券や切手なども含まれることがあります。日々の取引に関わる金銭の動きを正確に記録し、過不足なく保管することが求められます。
現金管理の目的は以下のとおりです。
- 資金の流れを可視化する
- 横領や不正を防止する
- 決算時に正確な帳簿と照合できる状態に保つ
現金は「見えるお金」ですが、使途が細かく分かれているため、厳密なルールと記録が欠かせません。代表的な記録媒体が「現金出納帳」です。
現金出納帳の役割と記入方法
現金出納帳とは、日々の現金の出入りを記録する帳簿のことです。以下のようなフォーマットで記入します。
日付 | 内容 | 摘要 | 入金 | 出金 | 残高 |
---|
現金出納帳をつけるポイント
- 日々の入出金をその都度記帳
- 領収書・レシートと紐づけて記録
- 残高と実際の現金を定期的に照合(実査)
例えば、4月5日に備品を現金で3,000円購入した場合、出金欄に3,000円を記録し、摘要欄には「備品購入」と記入します。
小規模事業者ではExcelやノートで管理することも多いですが、規模が大きくなると専用の会計ソフトで記帳・管理されることが一般的です。
小口現金の仕組みと管理方法
小口現金とは、日常的な少額支出に備えて社内に保管しておく現金のことです。たとえば、郵便料金、備品購入、来客用のお茶代などに使用されます。
小口現金の流れ
- 小口現金の金額をあらかじめ決定(例:2万円)
- 支出が発生するたびに記録と領収書を保管
- 残高が一定額を下回ったら、精算して補充する(小口現金精算)
小口現金帳の書き方
現金出納帳と同様に記録しますが、金額が少額であることが特徴です。また、小口現金の管理者を定めて、第三者が確認できるように定期的にチェックを行います。
例:
日付 | 支出内容 | 金額 | 支払先 | 備考 |
---|---|---|---|---|
4/1 | 切手代 | 500 | 郵便局 | 郵送費用 |
当座預金の特徴と管理のポイント
当座預金とは、企業が主に振込や小切手などの決済用に利用する銀行口座のことです。普通預金と異なり、利息はつきませんが、ビジネス用途に特化しています。
当座預金のメリット
- 小切手・手形の決済に使用可能
- 資金移動の記録が明確に残る
- 大口取引先との信用性が高まる
管理で注意すべき点
- 常に残高の把握が必要
- 小切手の不渡りは信用問題に直結
- 通帳が発行されない場合が多く、帳簿管理が必須
当座預金の出納管理は、会計ソフトやエクセルの「預金出納帳」で管理されます。
現金と預金の違いと仕訳のポイント
「現金」は手元にあるお金、「預金」は金融機関に預けているお金です。両者は勘定科目として分けて記録します。仕訳をする際には、用途と取引の性質を明確にすることが重要です。
仕訳例
- 現金でコピー用紙を購入した場合:
消耗品費 1,000 / 現金 1,000 - 預金から光熱費を振込で支払った場合:
水道光熱費 8,000 / 普通預金 8,000
このように、正確な仕訳によって資金の流れを把握できます。
よくあるトラブルとその対処法
現金や預金の管理では、以下のようなトラブルが起こることがあります。
1. 実際の現金と帳簿残高が合わない
- 原因:記帳ミスやレシート紛失
- 対処:差額の原因を突き止め、修正仕訳を行う
2. 小口現金の使途が不明瞭
- 原因:領収書がない、摘要欄が曖昧
- 対処:領収書提出を義務化し、用途を具体的に記載
3. 当座預金の残高不足による小切手不渡り
- 原因:残高管理の不徹底
- 対処:支払い前に残高確認を必須化、アラート設定
正確な現金・預金管理が企業を守る
現金や預金の管理は、ミスがあった場合に会社の信用を大きく損なう可能性があります。正しい知識と記録を徹底することで、内部統制を強化し、資金繰りの改善にもつながります。
日々の経理処理を丁寧に行い、必要に応じてツールや会計ソフトを活用することで、誰が見ても明確な帳簿管理が可能となります。
まとめ
- 現金出納帳は毎日の記録と実査が基本
- 小口現金は運用ルールを明確にし、管理者を設ける
- 当座預金は決済用口座として慎重に運用する
- 勘定科目の仕訳は正確に行う
- トラブルを未然に防ぐルール整備が鍵
現金と預金の管理を「ルール化」「見える化」することで、経理担当者の負担軽減だけでなく、企業全体の健全な経営にも寄与します。初心者の方もまずは基本を押さえ、実務で少しずつ慣れていきましょう。