相手にうまく伝わらない。
自分の考えをまとめようとすると言葉が出てこない。
そんなときに効くのが、「ざっくり→なぜ→例えば」という超シンプルな三段階フレームワークです。
最初に全体像を“ざっくり”提示し、理由や背景を“なぜ”で補強し、最後に“例えば”で具体化する。
この順番を意識するだけで、論点が整理され、聞き手が迷子になりません。
本記事では、このフレームワークの使い方を、実際の例・テンプレート・訓練法まで含めて徹底解説します。
言語化が難しいのは「順番」と「抽象度」がバラつくから
言語化につまずく典型パターンは次の2つです。
- いきなり細部から話し始めて、全体像が見えない。
- 抽象と具体を行き来する順番がバラバラで、聞き手がどこを聞けばいいか迷う。
「ざっくり→なぜ→例えば」は、この2つの課題を**“順番”と“抽象度の階段”**で一気に解消します。
まず結論の方向性(ざっくり)を提示し、次に理由(なぜ)で納得を作り、最後に具体例(例えば)で理解を固定する。
この3段階が揃うと、聞き手は「なるほど、そういうことね」とスッと腹落ちします。
フレームワークの全体像:「ざっくり→なぜ→例えば」
- ざっくり:一言・一文で要点(結論 or 主張 or 要約)を伝える
- なぜ:根拠・背景・メリット/デメリット・データなどで補強する
- 例えば:具体例・事例・ケーススタディ・数字・比喩で着地させる
使う順番が大事
多くの人は「例えば」から話したくなります。
ですが、聞き手は「この例は何を説明したいの?」と迷いがち。
必ず「ざっくり」で旗を立ててから説明を展開しましょう。
ステップ1:まず「ざっくり」――相手の脳内に“旗”を立てる
ポイント
- 15秒以内、1〜2文で言える形に削る。
- 「要するに」「結論から言うと」「一言で言うと」を口癖にする。
- 相手にとってのメリットがわかる形に置き換える。
例
- ざっくり:「次の四半期は新規より既存顧客向けに注力します。」
- ざっくり:「この本は“言語化の筋トレ本”です。読むだけで、考えを整理して伝えられるようになります。」
ステップ2:「なぜ」で納得を作る――理由・背景・根拠を置く
ポイント
- 3つの柱(理由を3点にまとめる)を意識すると整理しやすい。
- データ・事実・経験・比較など、客観性のある材料を混ぜる。
- 「反対意見が来るとしたら?」を自問して、先回りで答えておく。
例(前節のビジネス例を続けて)
- なぜ:「新規獲得コストが高騰しており、既存顧客のLTV向上の方がROIが高いからです。さらに、既存顧客の解約率が直近2四半期で悪化しており、まずはそこを止血する必要があります。」
ステップ3:「例えば」で理解を固定する――具体例・数字・比喩
ポイント
- 聞き手が知っている文脈・数字・シーンに落とし込む。
- 1つめの例は“わかりやすさ重視”、2つめの例は“汎用性重視”にすると刺さりやすい。
- 比喩を使うなら、抽象度をぐっと下げて“日常のもの”とつなぐ。
例(さらに続けて)
- 例えば:「既存顧客500社のうち、上位50社の追加受注が前年比−20%です。ここを元に戻すだけで、全体売上の8%を回復できます。」
- 例えば:「家の雨漏りを放置して新築の相談に行くようなものです。まずは雨漏りを止めましょう。」
フレームワークを丸ごと当てはめた実例(4シーン)
1. 仕事(提案の初手)
ざっくり
「来期は“既存顧客のアップセル強化”を最優先にします。」
なぜ
「新規のCAC(顧客獲得コスト)が1.5倍に上がっており、既存のLTVを引き上げるほうが効率的です。さらに解約率が悪化しているので、まずは顧客体験の改善が必要です。」
例えば
「上位50社に専任CSを配置し、導入後90日でのオンボーディング完了率を95%まで引き上げる施策を打ちます。」
2. 自己紹介(初対面・面接)
ざっくり
「私は“数字で語るPM”です。」
なぜ
「プロダクトの方向性判断に感覚ではなくデータを使い、A/Bテストや行動ログを設計して意思決定を早めてきました。」
例えば
「直近では、オンボーディングフローを2パターン検証してCVRを28%改善しました。」
3. 教育(部下・後輩へのフィードバック)
ざっくり
「結論を先に言う癖をつけよう。」
なぜ
「上司は時間がない。最初に“何を決めたいのか”が分かると話が前に進むから。」
例えば
「『報告です。エラーの原因はAで、対処案はBとCです。私はBを推します。理由は…』という順番で話してみて。」
4. 日常会話(パートナーへの相談)
ざっくり
「今月は外食を減らしたい。」
なぜ
「旅行の資金を貯めたいし、最近食費が膨らんでいるから。」
例えば
「平日は自炊を基本にして、週末だけ外食にしない?」
よくあるつまずきと、その直し方
- 「ざっくり」が長くなる問題
- 対策:「つまり」「一言で」「要するに」を付けてから話し始める練習をする。
- 「なぜ」が主観だけで終わる問題
- 対策:データ・比較・第三者の視点(ユーザー、競合、過去の自分)を最低1個入れる。
- 「例えば」が抽象的すぎる問題
- 対策:数字・固有名詞・期間・対象者など“測れる情報”を一緒に入れる。
- 逆順で話してしまう問題
- 対策:スライドやメモに「Z→N→T(Zakkuri / Naze / Tatoeba)」と書いておく。話す前に深呼吸して順番確認。
上達のためのトレーニングメニュー(毎日5分でOK)
- ワンフレーズ要約トレーニング
今日見た記事・動画を**「ざっくり:◯◯」「なぜ:◯◯」「例えば:◯◯」**とTwitter/X風にまとめる。 - 日報の型を“ZNT(ざっくり・なぜ・例えば)”に固定
上司やチームに送る報告文の最初の3行をこの順にする。 - 読書メモを「ざっくり一行+刺さった理由+引用」で書く
抽象→理由→具体の往復を体で覚える。 - 会議の冒頭で“ざっくり”を宣言する役を担う
「今日の会議の結論の方向性は◯◯です。理由は◯◯。例えば…」と自ら秩序を作る。
チームで使うなら「フォーマット化」してしまう
- 議事録テンプレ
- ざっくり(決まったこと/決めたいこと)
- なぜ(背景・根拠・懸念)
- 例えば(施策案・具体手順・担当・期限)
- 提案書テンプレ
- ざっくり(提案の要点・一言サマリー)
- なぜ(課題・機会・データ)
- 例えば(ロードマップ・PoC・KPI)
全員が同じ“型”で書くと、レビューが一気にスムーズになります。
そのまま使える「ZNTテンプレート集」
文章テンプレ
ざっくり:(結論・要点を一文で)
なぜ:(理由・背景・根拠を3点以内で)
例えば:(具体例・数字・期間・担当などを入れて)
Slack/Chat用ショート版
Z:◯◯
N:◯◯
T:◯◯
1分スピーチ版
- ざっくり(10秒):「今日は“◯◯の重要性”について話します。」
- なぜ(30秒):「理由は3つあります。1つ目は…」
- 例えば(20秒):「例えば私たちの現場では…」
明日からのToDo(超実践)
- メール・チャット・会議発言の最初に**「ざっくり言うと…」を強制する**。
- 「なぜ」を3点以内に圧縮してから話す(3点に収まらない=論点が整理できていないサイン)。
- 具体例は数字(% / 件数 / 期間)を最低1つ添える。
- チーム文書にZNTテンプレを埋め込む。
- 1日1回、「今日の学び」をZNTで1ツイート分にまとめる。
まとめ
言語化はセンスではなく、順番と型で上達します。
「ざっくり→なぜ→例えば」。
この3ステップを、メールでも会議でも自己紹介でも、とにかく“回数”をこなして習慣にしましょう。
最初は不自然でも、やがて「結論から話す」「理由で支える」「具体で落とす」という脳の回路が自動化されます。
今日から、あなたの言葉はもっと短く、もっと強く、もっと届くはずです。