Excelには、関数で文字列を柔軟に扱うための便利な機能として「ワイルドカード」があります。特定の文字をあいまいに検索したり、一部だけ一致するデータを抽出したいときに大活躍します。特に大量のデータから該当項目を見つける業務では、ワイルドカードを使いこなせるかどうかで作業効率が大きく変わります。本記事では、Excel関数におけるワイルドカード文字「＊」「？」「~」の基本的な使い方から応用テクニックまでをわかりやすく解説します。
ワイルドカード文字とは？
ワイルドカードとは、文字列の検索・一致を柔軟に行うための「代用文字」です。Excelでは主に次の3種類があります。
*（アスタリスク）：任意の文字列（0文字以上）に一致?（クエスチョンマーク）：任意の1文字に一致~（チルダ）：ワイルドカード文字を通常の文字として扱うエスケープ記号
例えば「a*」とすれば、「apple」「ant」「a」など、aで始まる任意の文字列に一致します。
基本の関数でワイルドカードを使う
Excelでは以下のような関数でワイルドカードが使えます。
COUNTIF/COUNTIFSSUMIF/SUMIFSIF関数（SEARCHやISNUMBERなどと併用）VLOOKUP（検索値にワイルドカードを使う）
具体的な使い方を見ていきましょう。
COUNTIF関数でのワイルドカード使用例
「特定のパターンに一致するデータの個数」をカウントしたい場合、COUNTIFにワイルドカードを使うと便利です。
例1：”A”で始まる名前の数を数える
=COUNTIF(A2:A100, "A*")
この関数は、セルA2〜A100の範囲で、”A”で始まる文字列をカウントします。
例2：3文字目が「z」である文字列をカウントする
=COUNTIF(A2:A100, "??z*")
2文字目までが何であっても、3文字目が「z」であるものを探します。
SUMIF関数でワイルドカードを活用する
合計値を出す際にも条件付きでワイルドカードを使えます。
例：商品名に「りんご」を含む行の金額を合計する
=SUMIF(B2:B100, "*りんご*", C2:C100)
これは、B列に「りんご」が含まれている行のC列の金額を合計します。
VLOOKUPでワイルドカードを使う方法
VLOOKUPでもワイルドカードは使えますが、検索の範囲が昇順に並んでいないと正しく動かない場合があるので注意が必要です。
例：文字列「S」で始まる製品を検索
excelコピーする編集する=VLOOKUP("S*", A2:C100, 2, FALSE)
この関数は「S」で始まる文字列をA列から検索し、その行の2列目の値を返します。
IF関数とSEARCH関数で柔軟な文字列検索
IFとSEARCHを組み合わせることで、より柔軟な判定が可能です。
例：「りんご」を含む場合は「フルーツ」と表示
=IF(ISNUMBER(SEARCH("りんご", A2)), "フルーツ", "その他")
SEARCH関数ではワイルドカードは不要です。含まれるかどうかを判定できます。
H2: ワイルドカード文字を文字として扱う方法（~チルダ）
ワイルドカードを「記号そのもの」として扱いたいときは、~（チルダ）を使います。
例：「重要」という文字列を検索したいとき
=COUNTIF(A2:A100, "*~*重要~**")
ここでは、「*」を通常の文字として扱うために、前に「~」をつけています。
ワイルドカード使用時の注意点
- ワイルドカードが使えない関数もある（例：
MATCHで0を使うときなど） - 大文字・小文字は区別されない
- 正確な一致が必要な場合はワイルドカードを使わない方がよい
*や?が含まれる検索値をユーザーが入力する可能性がある場合は、~でエスケープ処理を検討
H2: 実務で役立つ活用例
顧客名から会社名だけを抽出する
=IF(COUNTIF(A2, "*株式会社*"), "法人", "個人")
品番のパターンから種類を判別
=IF(LEFT(A2,1)="A", "タイプA", IF(LEFT(A2,1)="B", "タイプB", "その他"))
これにワイルドカードを使って"A*"のようにしても柔軟なパターン検索が可能です。
ワイルドカードを使ったデータ抽出の自動化テクニック
フィルターと関数を組み合わせることで、ワイルドカードを活かした動的抽出が可能になります。
例：FILTER関数（Office365以降対応）
=FILTER(A2:B100, ISNUMBER(SEARCH("りんご", A2:A100)))
まとめ
Excelでのワイルドカードの活用は、検索や集計の精度を一気に高める強力な武器になります。「*」「?」「~」を使いこなせば、条件付きのデータ抽出や分類、検索作業が驚くほどスムーズになります。まずはCOUNTIFやSUMIFなどから試し、徐々にVLOOKUPやFILTERと組み合わせて応用の幅を広げていきましょう。