11月15日――秋の深まりとともに、気温も日差しも穏やかになってくるこの時期、日本では昔からさまざまな行事や記念日が定着しています。特に「七五三」は子どもの成長を祝う代表的な行事として、多くの家庭や神社で行われてきました。しかし、それだけではありません。11月15日には、和食・着物文化、食材、社会意識に関わる記念日も制定されており、当日を知ることで、季節と暮らしの結びつきを感じることができます。本記事では、11月15日に制定されている記念日の中から5つを取り上げ、それぞれの由来や背景、現代における意味について紹介します。
七五三(しちごさん)
起源と意義
11月15日は、日本の子どもの成長を祝う年中行事「七五三(しちごさん)」の定番日です。男の子は数え年で3歳・5歳、女の子は3歳・7歳を迎えると、晴れ着を着て神社に参拝し、健康と長寿を願います。
七五三という習慣が定着したのは鎌倉時代・室町時代あたりとされ、もともとは貴族・武家社会で子どもの成長を祝った儀礼が、庶民へと広がったものと考えられています。
「なぜ11月15日か」という理由には、いくつか説があります。旧暦で月の中日(15日付近)が満月に当たること、11月が冬至を含む月にあたるという暦の考え方、さらには徳川将軍家がこの日に子に袴を着せたという歴史記録が影響したという説などです。
現代の実践
現代では、厳密に11月15日に行われなければならないわけではなく、10月から11月の間に近い日を選んで行う家庭も多いです。
神社では「千歳飴(ちとせあめ)」を配るところも多く、赤や金の袋に長い飴が入っていて、子どもの成長を願う縁起物とされています。写真館や家族写真の需要も高まり、晴れ着を着る子どもたちの姿は秋の風物詩です。
かまぼこの日
記念日の由来
「かまぼこの日」は、魚肉練り製品である“かまぼこ”をテーマにした記念日です。全国蒲鉾水産加工業協同組合連合会(現在の日本かまぼこ協会)が1983年(昭和58年)に制定しました。
この日付が選ばれた理由には二つの説があります。ひとつは、1115年(永久3年)の祝宴の膳に「かまぼこ」が描かれていたという古文書史料を根拠に、この“1115”という数字を日付の由来とする説。もうひとつは、七五三の祝い膳に紅白のかまぼこを添える習慣があったという説です。
現代での意義と普及
この記念日は、かまぼこ・ちくわ等の練り製品の消費を促すため、業界が広報活動をする機会となっています。レシピ紹介、健康面での魚肉タンパク質の訴求、地域による素材の特色アピールなどが行われることもあります。
また、家庭での祝い膳やおせち料理を意識する人々にとって、かまぼこを再認識する日にもなっており、子どもの成長を祝う七五三と結びつきやすい面も持っています。
きものの日
制定の背景
「きものの日」は、全日本きもの振興会が1966年(昭和41年)に制定した記念日です。七五三という子どもの晴れ着の行事と結びつけ、「この日に家族そろってきものを着て楽しんでほしい」という願いが込められています。
子どもたちだけでなく、親や祖父母も着物を着て一緒に楽しむことで、和装文化の振興・普及を目指す意図があります。
現代と和装文化
近年は着物を着る機会が減ったと言われる中で、記念日やイベントに合わせて着物を着る動きが支持されています。観光地や着物レンタル業者、着付け教室などでもプロモーションがなされ、記念日をきっかけに和装を楽しむ人の入り口になることが期待されています。
また、七五三では子どもが着物でお参りする機会であるため、「きものの日」をこの日に重ねて制定したことで、衣服文化と伝統行事を結びつける意義を強めています。
生コンクリート記念日
記念日の由来
「生コンクリート記念日」は、建設・土木関係の記念日で、1949年11月15日に日本で最初の生コンクリート工場が稼働し、生コンクリート(調合されたコンクリートが現場に送られる前の状態)が初めて出荷された日を基点に制定されました。
この記念日は、コンクリート産業・建設業界における技術進歩やインフラ整備の意義を顕彰する日として位置づけられています。
意義と現代的な視点
コンクリートは土木・建築において基盤的な素材です。耐震性、耐久性の研究、環境負荷軽減、資源再利用型コンクリートなどのテーマが現在も求められており、このような記念日は業界での意識を高める契機となります。
また、建設業界を身近に感じてもらう啓発活動、土木教育の一環、基盤整備を支える技術者への敬意を表す意味などが含まれることもあります。
予防争族(相続)を考える日
記念日の設立と目的
「予防争族(相続)を考える日」は、長野県佐久市の税理士法人が制定した記念日で、2015年に日本記念日協会にも認定されました。
「争族(そうぞく)」とは、相続を巡って家族の間でトラブルや争いが起こることを意味します。この記念日は、子どもの成長を願う七五三の日に合わせ、「家族が将来にわたって仲良くあってほしい」という願いを込めて、「争う相続」に備える意識を促す日とされています。
社会背景と考察
日本では少子高齢化にともなう相続問題、遺産分割トラブル、遺言・贈与の制度利用などが注目されており、専門家・メディアでも議論が続いています。この記念日は、法律的・税務的な対策を家族で話し合うきっかけを提供する役割があります。
具体的には、遺言書の作成、生前贈与、遺産の可視化、家族の合意形成などをあらかじめ検討しておくことの重要性を訴える日です。家族間の関係悪化を未然に防ぐ意識を高める目的があります。
(番外)ブラジル:共和制宣言記念日
上記5つに加えて、国際的な視点からもうひとつ紹介すると、**ブラジルの共和制宣言記念日(Dia da Proclamação da República)も11月15日です。1889年のこの日に、ブラジルで皇帝ペドロ2世が退位し、共和政が宣言されました。
ブラジルではこの日が国の祝日となっており、パレードや式典が行われます。このように、11月15日は日本だけでなく、他国で重要な歴史的意味を持つ日でもあります。
その他、11月15日の歴史的出来事(補足)
いくつかの出来事を挙げると、以下のようなものがあります:
- 坂本龍馬暗殺(近江屋事件)
慶応3年(1867年)11月15日、京都・近江屋にて、坂本龍馬と中岡慎太郎が見廻り組らにより暗殺されました。大政奉還成立後の混乱期に起きたこの事件は、日本近代史でも重要な転機となる象徴的な事件です。 - 自由民主党結党
1955年11月15日、自民党の前身となる自由党と日本民主党が合併し、自由民主党(自民党)が結党されました。日本政治の長期政権を支える政党の成立です。 - 上越新幹線(大宮〜新潟間)開業
1982年11月15日、大宮~新潟間を結ぶ上越新幹線が開通しました。これにより首都圏と日本海側を結ぶ新たな高速鉄道ネットワークが強化されました。 - 太平洋戦争・ガダルカナル島戦線
第二次世界大戦中、1942年11月15日頃、ガダルカナル島を巡る戦闘が激化し、アメリカ海軍と日本海軍の艦隊間の交戦があったとされます。
これらの出来事を通じて、11月15日という日は、文化・政治・技術・軍事など広範な分野で日本と世界の歴史と関わる日であることがわかります。
まとめ ~11月15日の意味を感じる一日に
11月15日は、日本の伝統文化、食文化、社会意識、歴史的転換を結びつける日です。七五三のような広く親しまれた行事を入り口に、かまぼこ・きものといった暮らしの要素を再認識し、さらには相続という家族の未来を考える日へと広がっていきます。