11月13日――この日は、意外にもさまざまな記念日が重なっている日です。伝統工芸の「うるし」、健康への願いを込めた「いいひざ」、地域の誇りを祝う「県民の日」、日常の心遣いを大切にする「あいさつの日」、さらに仏教・宗教的な節目を記す「空也忌」など、ジャンルも由来も多彩です。普段は意識しないその日の「記念日」に目を向けてみると、暮らしの中の新しい視点が見えてきます。本記事では、11月13日に制定されている代表的な記念日5つを取り上げ、それぞれの意味や由来、現代での意義や関連エピソードを解説します。
1. うるしの日 — 日本の漆文化を愛でる
11月13日は うるしの日 として、日本漆工芸協会により1985年(昭和60年)に制定されました。
由来・背景
この記念日の由来には、平安時代の伝説が関わっています。文徳天皇の第一皇子・惟喬(これたか)親王が、京都嵐山の法輪寺に参籠し、その満願の日(修業を終える日)に菩薩から漆(うるし)の製法を授かったという伝承が残っています。漆を扱う職人たちは昔からこの日に酒や菓子を配って労をねぎらう風習もあったとされ、それが記念日成立の下地になりました。
漆文化の意義
漆は日本の伝統工芸を象徴する素材のひとつで、漆塗りの器や工芸品、建具、装飾品などに広く使われています。木材と漆の調和によって作られる温かみのある風合いは日本の美的感性と深く結びついています。近年では、漆の需要・後継者不足・技術継承といった問題も指摘されており、このような記念日を契機に漆文化への関心を高める動きがあります。
現代での取り組み
毎年この日を含む前後の期間には、漆に関する講演会・展示会・体験教室などが各地で開催されます。漆の器を使った食文化の紹介や、若手作家による新しい漆表現の展示なども見られるようになってきました。こうした取り組みには、「伝統を守る」だけでなく「伝統を現代に活かす」工芸の可能性を模索する意図があります。
2. いいひざの日 — 健康と語呂からの願い
11月13日は いいひざの日 として、ゼリア新薬株式会社が制定しました。語呂合わせで「いい(11)ひざ(13)」としています。
趣旨・狙い
この記念日は、膝(ひざ)の健康を見直すきっかけを作るという目的があります。特に高齢化社会において、変形性膝関節症や膝痛の悩みを抱える人が多いため、日ごろからのケアや適切な運動・栄養・予防意識を促す意図が込められています。
活用例・啓発
医療機関や健康関連企業がこの日に合わせて講座、体操教室、ポスター掲示、啓発キャンペーンを行う例があります。また、膝に関するセルフチェック方法や日々のストレッチ方法などを紹介するメディアの記事も、この日に発表されることがあります。
3. 茨城県「県民の日」 — 地域のアイデンティティを祝う
11月13日は、 茨城県の「県民の日」 として制定されています。
由来・背景
明治4年旧暦11月13日(新暦換算では異なる場合もあります)が、廃藩置県で府県統合が進む中で「茨城県」の名称が用いられた日とされます。これを記念して、1968年(昭和43年)に県民の日を制定しました。 この名称の誕生当初は、今日の茨城県域とは一部異なる構成でしたが、後に編入や境界変遷を経て現在の県域となりました。
意義・行事
県民の日は、県民が茨城県の歴史・文化・地域資源への意識を高める日として機能します。県内公共施設の無料開放、特別展、記念イベント、地域クイズ大会、郷土講座などが行われることがあります。特に地元出身者や移住者にとって、地域との結びつきを再確認する機会になるでしょう。
4. あいさつの日 — 人と人をつなぐ言葉の習慣
11月13日は あいさつの日 として、一般社団法人日本あいさつ検定協会が制定しています。
趣旨・背景
この記念日は、あいさつを通じて人と人とのつながりを育み、温かい社会を目指すための文化を創ることを目的にしています。語呂や季節とは直接の関係はないものの、日々の生活で軽視されがちな「あいさつ」の価値を見直す契機とされています。
制定団体は、毎年「挨拶大賞」などを実施して、新しいあいさつ表現や言葉のアイデアを発表・普及する取り組みも行っています。
日常での意義
あいさつは、学校、職場、地域コミュニティなどでの最小限のコミュニケーション手段であり、安心感や礼儀、信頼関係の土台としても重要視されます。あいさつの日をきっかけに、身近な場面で「おはよう」「こんにちは」「ありがとう」などの言葉を少し意識して交わすことで、日常の質感が変わることもあるでしょう。
5. 空也忌 — 仏教と鎌倉時代の記憶
11月13日は、 空也(くうや)忌 としても知られています。
第一次的意味
空也は平安~鎌倉期の僧で、念仏を庶民に広めた「踊念仏」の開祖とされます。「空也上人」と呼ばれ、京都の六波羅蜜寺と深い関係があります。 この日に彼の忌日をしのび、法要や供養が行われます。
文化・宗教的意義
空也が広めた念仏信仰は、鎌倉仏教の流れのなかでも庶民仏教として重要な役割を持ちました。その足跡は詩歌や民間信仰にも影響を与え、「踊念仏」などの宗教行為・芸能行事として現代にも伝承されています。空也忌には、仏教寺院などで法要やお話会が催されることがあります。
まとめ:11月13日を味わう視点
11月13日には、伝統工芸、健康、地域、日常礼節、宗教信仰といった多様なテーマが集まっています。これらは一見バラバラのようですが、どれも「人と暮らしをつなぐ文化の種」として共通する要素を持っています。
- うるしの日 は伝統と美の継承
- いいひざの日 は健康と自己への配慮
- 県民の日 は地域を紡ぐアイデンティティ
- あいさつの日 は人間関係の原点
- 空也忌 は信仰と歴史を重ねる時間
記念日をただ並べるだけでなく、それらを通じて日常の意識を豊かにする視点が生まれます。11月13日という日の多面性を感じながら、あなたなりの「この日を味わう」方法を見つけてみてください。