1年のなかでも、数字の「1」がずらりと並ぶ11月11日──この日は、日本をはじめ世界各地でさまざまな記念日や歴史的な出来事と重なっています。なかには広く知られた「ポッキー&プリッツの日」もあれば、戦争の終結を記念する国際的な意義をもつ日も。1がならぶ“見た目”ゆえに、細長いものや「1」にちなんだ事柄が集まりやすい日とも言われています。本稿では、11月11日に制定された記念日を5つピックアップし、それぞれの背景や意義を解説します。読者のみなさんが、この「1111の日」にちょっとした興味を持ってくれれば幸いです。
記念日をめぐる背景
まず、11月11日という日は、日本記念日協会などへの登録件数が多い日として知られており、「1」が4つ並ぶ日付という視覚的特徴から、棒状・線状・数字の1にまつわるものが記念日にされやすいという傾向があります。
また、歴史的にも意味ある出来事が重なっており、世界的には第一次世界大戦の終結に関わる日としても広く認知されています。
以下では、そのなかから5つの記念日を取り上げ、それぞれの成り立ちや意義を見ていきましょう。
第一次世界大戦停戦記念日(Armistice Day / Remembrance Day)
概要と背景
1918年11月11日、ドイツと連合国との間で停戦協定が調印され、第一次世界大戦(1914–1918年)が実質的に終結しました。欧米を中心に、この日を「停戦記念日(Armistice Day)」または「追悼の日/Remembrance Day」として、戦没者や犠牲者を偲び、平和を祈念する日としています。
世界の慣例・意義
- 英国、カナダ、オーストラリアなどでは、11月11日の午前11時に2分間の黙祷を捧げる慣習があります。
- 仏・ベルギー・ニュージーランドなどでは「11月11日=戦没者追悼日」として、記念式典が行われます。
- アメリカではこの日を「退役軍人の日(Veterans Day)」として、軍務経験者を称える祝日となっています。
- 多くの国ではこの日を「戦争犠牲者を忘れない」日として、国民的な意味合いを持ちます。
日本との関係
日本国内ではこの日を国民的な追悼の日として公式に祝うという風習は強くありませんが、歴史や国際関係を考える際には象徴的な日として扱われることがあります。
また、この記念日は日本国内の「11月11日という日付が重みを持つ」という感覚とも響き合っています。
ポッキー&プリッツの日
概要と由来
「ポッキー&プリッツの日」は、日本のお菓子メーカー(江崎グリコ)が制定した記念日で、11月11日の「1111」がポッキーやプリッツ(いずれも細長いスナック菓子)を4本並べたように見えることから、その日を記念日にしたというものです。
この日を中心に、全国的なキャンペーンや限定商品、SNSでのプロモーションなどが毎年行われています。
広がりと話題性
- 「ポッキー&プリッツ」という名称も広く定着し、一般的に「11月11日=ポッキーの日」と連想されるほどです。
- 過去には、この日にTwitterでのハッシュタグ連動キャンペーンがギネス記録を狙った例もあります。
- この記念日の成功例は、企業が数字や日付の語呂合わせを活かしてブランディングを行うケースとして注目されることがあります。
意義と批判的視点
記念日登録に際しては商業的な意図が含まれているため、純粋に「文化的・社会的意味がある記念日か?」という視点を持つ人もいます。ただし、話題性を通じて日常にちょっとした楽しみを加えるきっかけになるという面も持っています。
介護の日
制定と読み方
日本の厚生労働省が2008年に制定した「介護の日」は、「いい日いい日(11月11日)」という語呂合わせに由来します。介護についての理解促進や、介護を支える人々への感謝の意を深めるための機会と位置づけられています。
趣旨と活動例
この日に合わせて、全国各地で講演会、相談会、啓発イベント、地域のボランティア活動、交流会などが開催されることがあります。福祉施設や自治体が「介護の現場を知ってもらう」取り組みを行うことが多いです。
意味と課題
介護というテーマは高齢化社会と直結しており、介護を必要とする人、介護をする人、社会全体の理解を深める必要性が指摘されています。この記念日は、そのような対話を呼び起こす日としての役割を担う可能性があります。
電池の日
制定の背景
「電池の日」は、日本の乾電池工業会(後の電池工業会)が1987年に制定した記念日です。電池の「プラス・マイナス」が「十一(11)」に見立てられるという語呂合わせを由来とし、毎年この日に、乾電池や充電池、電池利用機器などに関する普及啓発を図る目的があります。
目的と活動
- 正しい電池の使い方、廃棄方法、リサイクルなどの知識普及
- 電池の性能や安全性に対する理解を深める
- 電池技術革新や省エネ・環境配慮型電池の紹介など
現代的な意義
近年は、再生可能エネルギーや蓄電技術、モバイル機器利用の拡大など、電池技術の重要性が高まっています。この記念日は、電池技術の社会的意義を考える機会という意味でも注目され得ます。
チンアナゴの日
由来と制定
「チンアナゴ」は、すみだ水族館が申請し、日本記念日協会により制定されたものです。チンアナゴは砂の中から体を垂直に立てて泳ぐ習性があり、その姿が「1」の形に見えることから、数字の1を重ねた11月11日を記念日とした、という命名意図があります。
意味と面白さ
このような記念日は、学びや癒しを兼ねたテーマとして人気があります。水族館や動物園では、11月11日にちなんだ展示や企画を行うことがあり、「記念日を通じて動植物への関心を高める」役割を担います。
広がりとユーモア性
こうした記念日は、必ずしも社会的意義や制度的な役割を持つわけではありませんが、記憶に残りやすく、話題性を生みやすいという意味で、ブログやSNSで語られやすいテーマでもあります。
付記:その他の興味深い記念日・出来事
上記5つ以外にも、11月11日には多くの記念日や由来が重なります。たとえば次のようなものがあります。
- 公共建築の日:公共建築の重要性や質を見直そうという意図で制定。
- 配線器具の日:住宅の電気配線や器具の安全性への関心を呼びかけるため。
- ジュエリー・デー(宝石の日):鉱物学・宝石の重さ表示体系(カラット導入)に関する記念日。
- サッカーの日:サッカーが11対11で行われることにちなんで。
- おそろいの日:11と11を「おそろい」にかけ、ペアルックや共有文化を楽しもうという趣旨。
- 波蘭独立記念日(ポーランド):ポーランドは1895~1918年の分割支配後、1918年11月11日に独立を回復したことから国の独立記念日としています。
また、歴史的な出来事としては、京都・旧西陣地域で応仁の乱が落ち着いた旧暦11月11日を転写して「西陣の日」とする風習もあります。
これらはすべて、11月11日の「1」が並ぶ視覚的・語呂的な性質をヒントに、人々が日付を意味づけようとしてきた例といえるでしょう。
総括:11月11日に思いを寄せるということ
11月11日は、単なる暦の日付以上の意味を与えられてきた日です。戦争の終結を記録・追悼する日としても、企業・団体が日付の語呂を活かしてプロモーションや啓発を行う日としても、人と自然と文化をつなぐ切り口としても、さまざまな顔を持っています。
この日をきっかけに、記念日そのものや、日常にある「1に見えるもの」「細長いもの」「数の並び」にアンテナを張ってみるのも面白いかもしれません。そして、11月11日を「ただの11月11日」として過ぎ去らせるだけでなく、ちょっとした意味や関心をもって過ごす日としてもよいでしょう。