11月10日。普段はさりげなく通り過ぎてしまうこの日にも、さまざまな「記念日」が制定され、人々の暮らしや文化、歴史と結びつく意味が宿っています。この記事では、11月10日に制定された代表的な記念日を5つ取り上げ、それぞれの由来や背景、現代とのつながりをたどります。あわせて、この日の歴史的できごとも交えながら、「今日」を再発見する視点をお届けします。
技能の日:職人の技と社会をつなぐ日
概要と制定の背景
「技能の日」は、1971年(昭和46)に厚生省(現在の厚生労働省)によって制定されました。これは、技能・技術を持つ職業人の重要性を社会に広く認識してもらうことを目的としています。11月10日が選ばれた理由には、1970年(昭和45)に日本でアジア初の技能五輪(国際職業能力競技会)が開催されたことが関係しています。
技能五輪と職業技能の意義
技能五輪 (WorldSkills) は、若手技能者が国際的な技術力を競い合うコンテストです。その開催は、職業訓練の水準向上や技能尊重の風潮を醸成する契機となりました。「手に職をつける」「ものづくり」「職業訓練」の価値を見直す動きとも重なり、日本国内でも技能者や技能教育への注目度が高まりました。
現代における意義と取り組み
近年では、AI や自動化が進むなかでも「人の手・技」が活きる領域が多く残っています。技能の日には、各地で技能職人の展示会、実演イベント、職業訓練校の公開などが行われ、若年層に技能教育や職業訓練の魅力を発信する場となっています。
エレベーターの日:技術と日常をつなぐ装置の歩み
制定と由来
「エレベーターの日」は、日本エレベーター協会が1979年(昭和54年)に制定した記念日です。1890年(明治23年)の11月10日、東京・浅草の展望塔「凌雲閣(りょううんかく)」に日本初の電動式エレベーターが設置され、一般公開されたことを記念しています。
凌雲閣と初の電動式エレベーター
凌雲閣は12階建てのレンガ造り展望塔で、当時としては東京でも高層の建築でした。その一角に電動式エレベーターが設置され、1階から8階まで昇降できる設備として運用されました。この技術の導入は、人々の日常生活や都市建築への意識を先進化させる象徴的なできごとでした。
現代とのつながりと安全意識
今日では、エレベーターはビルやマンション、駅施設などに不可欠なインフラです。エレベーターの日には、安全点検や意識啓発キャンペーン、利用者への注意喚起が行われ、「安全・安心な移動設備」に対する信頼を守る活動が展開されます。
トイレの日:暮らしと衛生と文化の視点から
語呂合わせと制定
「トイレの日」は、日本トイレ協会が1986年(昭和61年)に制定しました。語呂合わせで「いい(1)ト(10)イレ」の日とされ、トイレの清潔性・使いやすさ・環境改善を啓発する日とされています。
トイレの社会的・文化的意味
トイレは単なる排泄行為の場ではなく、公衆衛生、アクセシビリティ、環境整備、デザイン性など多様な視点と結びつきます。公共トイレの改善やユニバーサルデザイン化、清掃・維持管理の重要性が社会課題としても語られています。
「グッドトイレ賞」やイベント
トイレの日を中心に、「トイレシンポジウム」や「グッドトイレ賞」の発表などが行われ、優れたトイレ施設の表彰や改善事例の紹介、清掃・修繕への呼びかけがなされます。
断酒宣言の日:節制と健康を考える日
制定の背景と語呂合わせ
「断酒宣言の日」は、全日本断酒連盟が制定した記念日です。1963年(昭和38年)のこの日に、全日本断酒連盟の結成記念大会が開催されたことを起点としています。また、「November(もう飲めんばー)」と「酒止(10=十)」という語呂合わせも、日付選定にあたってのユニークな要素です。
断酒と社会的意義
アルコール依存や過剰飲酒は健康・社会問題として注目されます。断酒宣言の日は、自身の健康や飲酒習慣を見直すきっかけとなり、節度ある生活や節酒・断酒の意識を高める日として位置づけられています。
現代での応用
断酒を志す人々向けのセミナー、体験談の共有、支援ネットワークの紹介などがこの日に合わせて催されることがあります。また、メディアを通じて断酒・節酒の啓発が図られます。
かりんとうの日:甘さと伝統菓子を再発見
語呂合わせと制定
「かりんとうの日」は、全国油菓工業協同組合が制定した記念日で、棒状のお菓子「かりんとう」の形を「11」で、砂糖の「糖(10)」をかけた語呂合わせによるものです。
かりんとうの歴史と魅力
かりんとうは、きな粉や黒糖、白砂糖などを用いた素朴な揚げ菓子で、江戸時代以降から庶民に親しまれてきました。素朴ながら甘みと香ばしさを備え、現代ではバリエーション豊かな味付けの商品も見られます。
記念日の意義と消費拡大
かりんとうの日を通じて、伝統菓子の良さを再認識し、地域の特産や小規模菓子店の販促に結びつける動きがあります。SNSでのレシピ紹介や食べ比べイベントなども、記念日を契機に行われ得ます。
まとめ
11月10日には、「技能」「技術」「暮らし」「文化」「健康」「歴史」と、さまざまな視点で日常と社会をつなぐ要素が刻まれています。記念日に込められた願いや背景を知ることで、私たちは「今日」に新たな視点をもたらすことができます。
たとえば、エレベーターやトイレという設備を介して「安全性・快適性・デザイン性」を見直したり、技能の日をきっかけに手仕事や職業教育を考えたり、かりんとうの日を通じて地域の伝統菓子を味わってみるなど、実践的な行動につなげることも可能です。