産業廃棄物収集運搬業を始めるには、各都道府県で「産業廃棄物収集運搬業許可」の取得が必要です。申請の際に必ず求められるのが、使用する「運搬車両」の情報です。行政は車両の内容を厳しくチェックし、適合していないと許可が下りないこともあります。本記事では、許可申請に必要な運搬車両の要件や、チェックされる具体的なポイントについて詳しく解説します。申請前にしっかり確認し、スムーズに許可を取得しましょう。
産業廃棄物収集運搬業許可における「運搬車両」の重要性
産業廃棄物を安全かつ確実に運搬するためには、専用の設備や機能を備えた車両が必要です。許可申請時には、単に「車がある」だけでは不十分で、「どのような構造か」「適切な管理がなされているか」などが問われます。特に「飛散・流出・悪臭の防止措置」が求められ、これに不備があると申請が通らない可能性もあります。
チェックポイント①:車両の所有者と名義
許可申請では、申請者自身が使用する車両を「保有または使用できる状態」にあることを証明しなければなりません。具体的には以下の書類が必要です。
- 自社所有の場合:車検証の写し(使用者が申請者名義であること)
- リース車両の場合:リース契約書と車検証(使用者が申請者)
- 借用車両の場合:借用契約書と使用許諾書
車検証に記載されている「使用者名義」が申請者と一致していなければ、申請は原則として認められません。リース契約の内容も、運搬業務での使用を許可する内容である必要があります。
チェックポイント②:運搬車両の構造基準
産業廃棄物の性質に応じて、車両の構造が適切であるかが審査されます。構造の基準として見られる主な点は以下のとおりです。
- 密閉性があるか(飛散・流出・悪臭の防止)
- 積載物に応じた仕様(液体ならタンク式、粉体なら密封容器など)
- 荷台が清掃可能な構造であること
- 表示スペースが確保されていること(業許可番号やマークなど)
たとえば、液状の廃油を運ぶのにオープントラックは不適格と判断されます。逆に、金属くずなどを運ぶ場合は、フックロール車や密閉コンテナ付きトラックが推奨されます。
チェックポイント③:車両の管理体制
申請時には「この車両をどのように日常的に管理しているか」も重要な審査対象です。具体的には以下のような管理が求められます。
- 定期点検整備を行っていること(整備記録の保管)
- 清掃や消毒など衛生管理ができる体制であること
- 運搬経路やスケジュールの記録がなされていること
- 損傷・事故発生時の対応マニュアルがあること
これらを証明するため、管理日誌や点検記録の提出を求められる場合があります。
チェックポイント④:車両への表示義務
許可を得て実際に運搬業務を行う際には、運搬車両の両側面に以下の表示が義務付けられています。
- 「産業廃棄物収集運搬車」と明記
- 文字サイズは縦横10cm以上
- 業許可番号(例:第123456号)
ステッカーやマグネットシートを活用して表示しても構いませんが、取り外し可能なものを使う場合は紛失に注意しましょう。審査段階では、表示位置の説明や、表示方法の証拠写真を求められることもあります。
チェックポイント⑤:廃棄物の種類と車両の適合性
許可を申請する際には、「運搬する廃棄物の種類(積載物)」に応じた車両を用意しているかも問われます。申請する廃棄物ごとに適した車両を用意しなければ、その廃棄物を運ぶ許可が得られないこともあります。
例:
- 金属くず:フックロール車、ダンプ車
- 廃油:専用タンクローリー
- 廃プラスチック類:幌付きトラック、密閉コンテナ車
- 汚泥:防水加工済み密閉容器搭載車両
申請書には、「この廃棄物にはこの車両を使用する」という対応表を記載し、裏付けとして写真添付が求められる場合もあります。
チェックポイント⑥:車両の台数と営業体制
審査時には、業務遂行に必要十分な車両台数があるかも確認されます。特に広範囲での収集運搬を予定している場合や、継続性・安定性を重視する都道府県では、複数台の車両保有が実質的な要件となっている場合もあります。
加えて、運転手の確保状況(雇用関係や運転免許の有無)、車両の稼働計画も含めた体制全体の整合性が審査されることがあります。
まとめ:車両は「持っていればよい」ではなく「適切に管理されているか」が重要
産業廃棄物収集運搬業の許可申請において、運搬車両の要件は非常に重要なチェックポイントです。「所有しているだけ」では不十分で、廃棄物の性質に応じた構造、管理体制、表示、車両台数など、細かい点まで確認されます。審査に通過するためには、書類だけでなく、写真や管理記録も含めて準備を進めることが大切です。
しっかりと準備を整え、スムーズな許可取得を目指しましょう。行政書士などの専門家のアドバイスを活用するのも一つの手です。