パソコンやスマートフォンでファイルを送受信するとき、「ZIPファイル」や「RARファイル」などの圧縮ファイルを目にする機会は多いのではないでしょうか。
ファイルが「圧縮」されると、データのサイズが小さくなり、送信も保存も効率的になります。でも、どうしてファイルサイズが小さくなるのでしょうか?
この記事では、ファイル圧縮の基本的な仕組みから、なぜ圧縮が可能なのか、そして代表的な圧縮方式まで、初心者にもわかりやすく解説します。
ITの基礎を理解したい方や、業務効率化を目指す方は、ぜひ参考にしてください。
「圧縮」とは、元のデータから情報の意味を損なうことなく、記録方法を工夫してデータサイズを小さくすることです。たとえば、文章・画像・音声など、どんなデータも内部的には0と1の組み合わせ、すなわち「ビット列」で構成されています。
このビット列の中には、何度も繰り返されているパターンや、冗長(ムダ)な情報が存在することが多く、それを効率よく表現し直すことでサイズを小さくできるのです。
たとえば以下のようなデータを考えてみてください:
AAAAAAAAAA
これは「Aが10個続く」という情報です。これを「A×10」というように短く表すことができれば、データ容量は小さくなります。これが圧縮の基本的な考え方です。
ファイルが圧縮できるのは、データの中に「冗長性(Redundancy)」があるからです。つまり、「繰り返し」や「予測可能なパターン」があるということです。
圧縮アルゴリズムはこうした冗長な情報を見つけて、より少ないビットで表現する工夫をしています。
ファイル圧縮には大きく分けて2種類あります。それが「可逆圧縮(Lossless Compression)」と「非可逆圧縮(Lossy Compression)」です。
元のデータを完全に復元できる圧縮方式です。ZIPやPNG、GIF、FLACなどがこの方式を使っています。主に、文章やプログラムファイルなど、データの損失が許されないケースで使われます。
一部の情報を捨てる代わりに、高い圧縮率を得る方式です。JPEG画像やMP3音声、MPEG動画などが代表例です。「人間には気づきにくい部分」を取り除くことで、容量をぐっと小さくできます。
たとえば、JPEG画像は「人間の目は細かい色の違いをあまり認識できない」ことを利用し、色の情報を一部削減して圧縮します。
文字の出現頻度に応じて、よく使う文字には短い符号を、あまり使わない文字には長い符号を割り当てる方法です。テキストやプログラムファイルの圧縮に使われます。
データ内の繰り返しを記録する方法です。同じパターンが前に出現していれば、「どこから何文字分繰り返すか」を記録します。ZIP形式やPNG、GIFなどに応用されています。
画像を小さなブロックに分け、それぞれに「離散コサイン変換(DCT)」という数式を使って周波数成分に変換し、「目立ちにくい成分」からデータを削減します。非可逆圧縮の典型です。
全てのファイルが圧縮できるとは限りません。すでに高圧縮されたデータや、元々の情報が少ないファイル(例:乱数データや暗号化ファイル)には、パターンや冗長性がないため、むしろ圧縮できないこともあります。
たとえば、一見ランダムに見える暗号化ファイルや、動画をすでにMP4にしているファイルなどは、圧縮してもほとんどサイズが変わらなかったり、逆に少し大きくなったりする場合もあります。
特に業務で使う際には、ファイル形式や圧縮率のバランスを考えて利用することが大切です。
圧縮とは、データの中にある「ムダ」や「繰り返し」を取り除き、効率的に記録する技術です。
この仕組みを理解すれば、普段使っているファイルや通信がどれほど工夫されているかが見えてきます。
また、ファイルの種類や用途に応じて適切な圧縮方法を選ぶことで、作業の効率化やコスト削減にもつながります。
圧縮の技術は、ITの基本でありながら非常に奥が深い分野。これを機に、自分の業務や生活にどう活用できるかを見直してみてはいかがでしょうか。