雇用保険とは、働く人が失業したときや、仕事を続けることが難しくなったときに生活を支えるための公的な保険制度です。会社員であれば多くの人が加入していますが、「どんなときに、いくらもらえるのか」「自分は対象になるのか」など、詳しく理解している人は意外と少ないかもしれません。本記事では、雇用保険の基本から給付の種類、加入条件、受給までの流れ、注意点までをわかりやすく解説します。これから転職を考えている方や、万が一に備えて制度を理解しておきたい方は、ぜひ参考にしてください。
雇用保険とは、労働者が失業した場合や、育児・介護などで働くことが難しくなった場合に、一定の給付を行う公的保険制度です。厚生労働省が所管し、全国のハローワークが窓口となっています。
もともとは「失業保険」と呼ばれていましたが、現在は単なる失業時の保障だけでなく、再就職支援や育児・介護休業時の給付など、働く人を総合的に支える制度として整備されています。
雇用保険は、労働者と事業主の双方が保険料を負担する仕組みです。毎月の給与から一定額が天引きされており、知らないうちに加入しているという人も多いでしょう。
雇用保険の目的は、大きく分けて次の3つです。
1つ目は、失業した場合の生活の安定です。突然職を失うと、収入が途絶えてしまいます。雇用保険は、次の仕事を探す間の生活を支える役割を果たします。
2つ目は、再就職の促進です。単にお金を給付するだけでなく、職業訓練や就職支援を通じて、早期の再就職を後押しします。
3つ目は、雇用の安定と継続です。育児や介護など、人生のさまざまな事情に対応しながら働き続けられるよう支援します。
つまり、雇用保険は「失業した人のためだけの制度」ではなく、「働く人すべてを守る制度」といえます。
雇用保険は、すべての労働者が自動的に加入できるわけではありません。一定の条件があります。
基本的な加入条件は次のとおりです。
・1週間の所定労働時間が20時間以上であること
・31日以上の雇用見込みがあること
正社員はもちろん、パートやアルバイトでも、この条件を満たしていれば加入対象となります。
ただし、学生アルバイトなど一部は適用除外となる場合があります。自分が対象かどうか不安な場合は、会社の総務担当者やハローワークに確認するとよいでしょう。
雇用保険料は、労働者と事業主がそれぞれ負担します。保険料率は毎年見直されることがありますが、基本的には給与額に対して一定の割合で計算されます。
給与明細を見ると「雇用保険料」として数百円から数千円が差し引かれているはずです。これが将来の給付の原資となります。
会社も労働者とは別に保険料を負担しており、国からの財源も加わることで制度が成り立っています。
雇用保険の代表的な給付が「基本手当」です。一般的に「失業保険」と呼ばれるものです。
基本手当を受け取るには、以下の条件を満たす必要があります。
・離職していること
・働く意思と能力があること
・積極的に求職活動を行っていること
・一定期間、雇用保険に加入していたこと
自己都合退職と会社都合退職では、受給開始までの期間や給付日数に違いがあります。
給付日数は、年齢や雇用保険の加入期間、退職理由によって異なります。おおよそ90日から330日程度です。
給付額は、離職前の賃金をもとに計算されます。一般的には、離職前の賃金の50〜80%程度が目安です。ただし、上限額と下限額が定められています。
早期に再就職した場合に支給されるのが「再就職手当」です。
基本手当の支給日数を一定以上残した状態で再就職すると、その残り日数に応じて手当が支給されます。
これは「早く仕事を見つけた人が損をしないようにする」ための制度です。積極的に就職活動を行うインセンティブとなっています。
スキルアップを支援する制度として「教育訓練給付金」があります。
一定の条件を満たす人が、厚生労働大臣指定の講座を受講した場合、受講費用の一部が支給されます。
対象となる講座には、資格取得講座や専門的な訓練コースなどがあります。キャリアアップを目指す人にとっては非常に有用な制度です。
子どもが生まれた場合に受け取れるのが「育児休業給付金」です。
育児休業中は会社からの給与が支払われないことが多いですが、雇用保険から一定割合の給付が行われます。
原則として、休業開始から一定期間は賃金の約67%、その後は約50%が支給されます。これにより、育児と仕事の両立がしやすくなっています。
家族の介護のために休業する場合にも、雇用保険から給付が行われます。
一定期間、賃金の約67%が支給され、介護と仕事の両立を支援します。
高齢化社会において、ますます重要性が高まっている制度といえるでしょう。
退職後に基本手当を受けるには、まずハローワークで求職の申し込みを行います。
必要書類としては、離職票、本人確認書類、マイナンバー、通帳などが必要です。
その後、雇用保険説明会に参加し、待機期間を経て、失業認定を受けながら給付を受け取る流れとなります。
定期的に求職活動の実績を報告する必要があるため、制度を正しく理解して行動することが大切です。
雇用保険を受給する際には、いくつかの注意点があります。
まず、自己都合退職の場合は給付制限期間があります。すぐに受給できない場合があるため、事前に確認しておきましょう。
また、不正受給は厳しく取り締まられています。アルバイトをしながら申告しないなどの行為は、重いペナルティの対象となります。
さらに、給付には期限があります。手続きを怠ると受給できなくなることもあるため注意が必要です。
雇用保険は社会保険の一部ですが、健康保険や厚生年金とは目的が異なります。
健康保険は医療費の負担軽減、厚生年金は老後の生活保障を目的としています。
一方、雇用保険は「働くこと」に関連するリスクをカバーする制度です。失業や休業というリスクに備えるための保険と理解するとよいでしょう。
原則として、フリーランスや自営業者は雇用保険の対象外です。
雇用保険は「雇用されている労働者」を前提とした制度だからです。
ただし、一定の特別加入制度や、他の公的支援制度が設けられている場合もあります。働き方によって利用できる制度が異なるため、自身の状況に応じて確認が必要です。
転職や退職は、人生の大きな転機です。その際に雇用保険の制度を理解しているかどうかで、受け取れる支援や対応が大きく変わります。
また、育児や介護など、予想外の出来事にも備えることができます。
「いざというとき」に慌てないためにも、普段から制度を知っておくことが大切です。
雇用保険とは、失業や休業といった働く人のリスクに備えるための公的保険制度です。基本手当をはじめ、再就職手当、教育訓練給付金、育児休業給付金、介護休業給付金など、多様な支援制度が用意されています。
加入条件を満たしていれば、正社員だけでなくパートやアルバイトも対象になります。制度を正しく理解し、必要なときに適切に手続きを行うことが重要です。
雇用保険は、単なる「失業時の保険」ではなく、働く人生全体を支える大切な仕組みです。ぜひこの機会に、制度の内容をしっかり理解しておきましょう。