会社にとって「給与」は毎月必ず発生する重要な経費です。正しい仕訳処理は、経理や会計業務の信頼性を支える土台になります。しかし、社会保険料や所得税などの控除が絡んでくると、仕訳は少し複雑に感じられるかもしれません。
この記事では、給与の仕訳について基本的な考え方から具体的な仕訳例までをわかりやすく解説します。経理初心者の方はもちろん、実務での再確認にも役立つ内容になっています。
給与の仕訳は「総額」ではなく、「手取り額」や「控除項目」に分けて記録する必要があります。
給与の仕訳には主に以下の要素が含まれます。
たとえば、ある社員に対して総支給額が30万円で、控除額が以下の通りだったとします。
この場合、会社が実際に現金で支払う手取り額は 23万8千円 です。
しかし仕訳上は、この23万8千円だけでなく、控除額や法定福利費も分けて記録する必要があります。
以下に給与支給時の仕訳を示します。
例:社員1名に給与30万円を支給し、以下を控除。
この場合の仕訳は次のようになります。
(借方)
給与手当 300,000円
(貸方)
預り金(所得税) 10,000円
預り金(住民税) 12,000円
預り金(社会保険料) 40,000円
普通預金 238,000円
ここでのポイントは「預り金」として控除額を処理することです。
これらは一時的に会社が預かっており、後日税務署や市区町村、社会保険事務所に納付する義務があります。
給与に関連して、会社が負担する社会保険料(健康保険、厚生年金、雇用保険など)についても仕訳が必要です。
例:会社負担分の社会保険料が45,000円だった場合
(借方)
法定福利費 45,000円
(貸方)
未払金(または未払費用) 45,000円
この費用は、会社が負担する「福利厚生費」として処理されるため、給与手当とは別になります。
給与と同時に計上するのが望ましいです。
賞与も給与と同様に仕訳処理を行いますが、項目が変わるだけで基本的な構造は同じです。
例:賞与50万円支給、控除額として社会保険料6万円、所得税2万円、住民税1万円を差し引き、手取り41万円
(借方)
賞与 500,000円
(貸方)
預り金(社会保険料) 60,000円
預り金(所得税) 20,000円
預り金(住民税) 10,000円
普通預金 410,000円
賞与の場合も「法定福利費」として会社負担分を別途計上する必要があります。
給与から控除した所得税や社会保険料などは、後日所轄機関に納付します。そのときの仕訳も忘れてはいけません。
例:控除済みの社会保険料40,000円を納付
(借方)
預り金(社会保険料) 40,000円
(貸方)
普通預金 40,000円
同様に、会社負担分も同時に納付する場合は、未払金や未払費用から支払い処理を行います。
給与の仕訳でありがちなミスは次の通りです。
このようなミスは、決算時の正確性に影響を与えたり、税務調査で指摘されることがあります。
帳簿を見たときに、誰が見ても「どう処理されているか」がわかるように整理することが重要です。
給与の仕訳処理を効率化するためのヒントもいくつか紹介します。
給与に関する仕訳は、単に金額を記録するだけでなく、法的な義務や税務上のルールとも密接に関わっています。
支給額、控除額、会社負担の項目を正しく分類・記録することが、正確な帳簿作成と健全な経営管理の第一歩です。
この記事で紹介した基本的な流れと仕訳例を押さえておけば、給与処理の基礎はしっかりカバーできます。経理初心者の方も、定期的に内容を見直して、仕訳の精度を高めていきましょう。