企業活動の中で、寄付金を支出する場面は少なくありません。災害への支援や地域貢献、NPO団体への寄付など、社会的な責任を果たす手段として寄付金は重要な役割を持ちます。
しかし、会計処理の面では「寄付金ってどう仕訳すればいいの?」「税務上の扱いは?」「交際費とどう違うの?」といった疑問も生じやすいところです。
この記事では、寄付金の仕訳方法を中心に、関連する勘定科目、税務上の注意点、よくある事例とその処理方法まで、分かりやすく解説します。経理初心者の方にも理解できるように丁寧に説明していますので、ぜひ参考にしてください。
寄付金とは、企業が金銭や物品を対価なしで提供する行為です。見返りを求めず、純粋に支援や援助を目的とした支出であり、慈善活動や公共団体への支援などが該当します。
企業会計において寄付金は「費用」に分類されますが、その処理は一律ではなく、支出先や内容によって分類や仕訳方法が異なるため、注意が必要です。
寄付金の仕訳には主に以下の勘定科目が用いられます。
(借方)寄付金 100,000円 /(貸方)普通預金 100,000円
これは、現金で支払った場合の典型的な仕訳例です。
税務上、寄付金は全額損金にできるわけではありません。法人税法では寄付金を以下のように分類しています。
資本金等の額 × 当期月数 / 12 × 0.25% + 所得金額 × 2.5%
この限度を超える部分は、会計上は費用でも、税務上は損金不算入(=課税対象)となるため注意が必要です。
寄付金と似た勘定科目として「交際費」がありますが、この2つは明確に区別される必要があります。
観点 | 寄付金 | 交際費 |
---|---|---|
対象 | 公共団体・不特定多数 | 得意先・取引先 |
目的 | 社会貢献・慈善 | 関係強化・営業目的 |
税務処理 | 損金算入限度あり | 資本金によって非課税枠あり(中小企業優遇) |
(借方)寄付金 100,000円 /(貸方)普通預金 100,000円
※法人税申告で全額損金扱い可
(借方)寄付金 50,000円 /(貸方)普通預金 50,000円
※限度額内で損金扱い
(借方)交際費 30,000円 /(貸方)普通預金 30,000円
※目的と相手によって交際費になる可能性
金銭以外にも、物品を無償で提供する「現物寄付」もあります。
(借方)寄付金 100,000円 /(貸方)商品 100,000円
この場合、商品を原価ベースで評価し、仕訳するのが基本です。
また、消費税の取り扱いにも注意が必要です。現物寄付には「みなし譲渡」として消費税がかかるケースもあるため、税理士への相談が望ましいです。
参考として、寄付を「受けた側」の処理についても触れておきます。
(借方)普通預金 100,000円 /(貸方)雑収入 100,000円
寄付金に関する経理処理では、以下のポイントを押さえておきましょう。
また、社内規定に「寄付は誰の承認が必要か」「どの勘定科目で処理するか」を明記しておくと、ミスを防ぐことができます。
寄付金は社会貢献としての価値がある一方、会計処理・税務処理ともに慎重な扱いが必要な項目です。
正しい勘定科目の選定、寄付先ごとの損金算入の可否、交際費との明確な区別など、経理担当者は多くの判断を迫られます。
本記事で紹介した仕訳例やポイントを参考に、寄付金に関する処理を適切に行いましょう。最終的な判断が難しい場合は、税理士などの専門家に相談することも大切です。