契約書や領収書など、ビジネスの現場では印紙を貼付する場面がよくあります。特に経理業務では、印紙代の取り扱いや仕訳の方法を正しく理解することが必要不可欠です。印紙税は一見すると細かいルールが多く、ミスが起きやすい分野でもあります。この記事では、「印紙」に関する会計上の仕訳方法を中心に、基本的な考え方から具体的なケースまでわかりやすく解説します。経理初心者の方にも理解できるよう、丁寧に解説していますので、ぜひ参考にしてください。
印紙税とは、特定の文書に対して課税される税金のことです。契約書や領収書など、法律で定められた「課税文書」を作成したときに、その内容や金額に応じて印紙を貼ることで納税します。
たとえば、5万円を超える領収書には200円の印紙が必要ですし、不動産売買契約書や建設工事請負契約書などでは数千円以上の印紙が必要になることもあります。印紙は「印紙税納付の証明」として文書に貼り付け、消印(割印)をして使用します。
印紙を購入したときの会計処理は、原則として「租税公課」または「仮払金」として処理するのが一般的です。使用時点で経費とするか、購入時点で経費とするかで処理が異なります。
【印紙を購入したとき】
(借方)仮払金 1,000円 /(貸方)現金 1,000円
【契約書に印紙を貼ったとき】
(借方)租税公課 1,000円 /(貸方)仮払金 1,000円
この方法は、「印紙を貼付した時点で納税義務が発生する」という法的な建付けに沿っているため、実務的にもよく使われます。
印紙購入時にすぐ経費処理する方法もありますが、この場合は、すぐに契約書等に貼ることが前提です。
(借方)租税公課 200円 /(貸方)現金 200円
この処理は簡単ですが、購入後しばらく使用しない場合や管理が不明瞭になると、税務上の指摘を受ける可能性があるため注意が必要です。
取引先や子会社などのために印紙を立て替えた場合は「立替金」勘定を使います。
【印紙を立て替えたとき】
(借方)立替金 1,000円 /(貸方)現金 1,000円
【後日、返金を受けたとき】
(借方)現金 1,000円 /(貸方)立替金 1,000円
このように、印紙が実際には自社のためのものではない場合は、経費として処理せず「立替金」で対応します。
印紙税は、消費税の対象外です。そのため、「租税公課」や「仮払金」として計上する際に、消費税区分は「対象外」に設定する必要があります。税務ソフトを利用している場合でも、誤って課税仕入れとして処理しないように確認しましょう。
→使用前に経費計上してしまうと、未使用分の印紙も経費とされてしまいます。使ったときに計上する「仮払金処理」をおすすめします。
→仕訳以前の問題として、印紙の貼付漏れは税務調査で指摘を受けやすいです。印紙が必要な文書の一覧を社内で整備しておくとミスを防げます。
→たとえば「領収書が5万円以下なのに印紙を貼ってしまった」など。事前に金額別の印紙額表を確認し、社内に周知しておくことが大切です。
以下に、印紙税が発生する代表的な書類ごとの仕訳例を紹介します。
(借方)仮払金 10,000円 /(貸方)現金 10,000円
→
(借方)租税公課 10,000円 /(貸方)仮払金 10,000円
(借方)仮払金 2,000円 /(貸方)現金 2,000円
→
(借方)租税公課 2,000円 /(貸方)仮払金 2,000円
(借方)仮払金 200円 /(貸方)現金 200円
→
(借方)租税公課 200円 /(貸方)仮払金 200円
印紙は現金同様に取り扱う必要があります。管理がずさんだと、税務調査で不適切と判断され、過少申告加算税や延滞税の対象になることも。
印紙税の取り扱いは、金額は小さくても税務上のトラブルになりやすい項目です。仕訳では「仮払金」と「租税公課」を正しく使い分け、消費税区分にも注意を払いましょう。加えて、印紙の必要な場面を把握し、管理体制を整えておくことで、税務リスクを未然に防ぐことができます。
経理業務は細かいルールの積み重ねが求められますが、一つひとつの対応を丁寧に行えば、安心して業務を進めることができます。印紙代の仕訳もしっかり押さえて、経理スキルをさらに高めていきましょう。