企業会計において、有価証券の取得や売却はよくある取引のひとつです。特に株式や債券といった投資目的の有価証券は、企業の資産管理や利益調整に大きく関わります。しかし、その会計処理は複雑に感じられることもあります。
本記事では、有価証券の分類から始まり、それぞれの取得・売却時の仕訳方法や評価方法までを、実務で役立つ形で解説します。会計初心者から実務担当者まで、しっかり理解できる内容になっていますので、ぜひ最後までご覧ください。
有価証券とは、財産的価値を有する証券のことで、主に以下の4つに分類されます。
それぞれの目的に応じて会計処理が異なるため、分類が最初の重要ポイントになります。
株式を取得したときには、原則として取得原価で記帳します。たとえば、取引手数料や印紙代も含めて取得価額に算入します。
10万円分の株式を現金で取得し、手数料として1,000円を支払った場合:
(借)売買目的有価証券 101,000円
(貸)現金 101,000円
※目的によって勘定科目が「その他有価証券」などに変わります。
債券の取得には、額面金額と取得価額の差が重要です。たとえば、利回りを調整するために額面より高く(プレミアム)あるいは安く(ディスカウント)取得することがあります。
その場合、差額は償却原価法を用いて償却していきます。
額面100,000円の債券を101,000円で購入した場合:
(借)満期保有目的債券 101,000円 (貸)現金 101,000円
決算時にプレミアム分を償却:
(借)有価証券利息 500円 (貸)満期保有目的債券 500円
売却時は、取得価額との差額を「売却益」または「売却損」として認識します。
取得価額10万円の株式を12万円で売却し、手数料1,000円を支払った場合:
(借)現金 119,000円 (貸)売買目的有価証券 100,000円
(借)支払手数料 1,000円
(貸)有価証券売却益 20,000円
※売却損の場合は「有価証券売却損」になります。
決算時には、保有している有価証券を評価替えする必要があります。評価の方法は、保有目的によって異なります。
区分 | 評価方法 | 損益処理の有無 |
---|---|---|
売買目的有価証券 | 時価評価(洗替法) | 損益に反映 |
満期保有目的債券 | 償却原価法 | 損益に反映しない |
その他有価証券 | 時価評価 | 純資産の部に計上(評価差額金) |
取得価額100,000円の株式の時価が決算時に110,000円になった場合:
(借)その他有価証券 10,000円 (貸)その他有価証券評価差額金 10,000円
※評価差額は「その他の包括利益累計額」に計上されます。
有価証券の会計処理では、まず保有目的によって分類をしっかりと行い、それに基づいた仕訳や評価を行うことが重要です。特に株式や債券は金額も大きくなりがちで、会計上の影響も大きいため、誤りのないよう慎重に処理しましょう。
企業の資産構成や財務戦略を理解するためにも、有価証券の正しい処理は欠かせません。この記事を通じて、その基本がしっかり押さえられていれば幸いです。