簿記3級は、企業のお金の流れを理解するうえで最初のステップとなる資格です。経理や会計の基礎が身につくため、学生や社会人にとっても人気の高い試験です。しかし、初めて学ぶ方にとっては、仕訳や試算表、帳簿のルールなど、慣れない用語やルールに戸惑うこともあるでしょう。
この記事では、簿記3級試験の出題内容から具体的な解き方、効率的な学習法までを、初学者にもわかりやすく解説します。これから受験を目指す方も、学習の途中でつまずいている方も、この記事を読めば合格への道筋がクリアになります!
簿記3級は、全国商工会議所が主催する「日商簿記検定試験」の一つで、企業における日々の経理業務を理解し、帳簿を作成できるレベルが求められます。
企業会計の基本ルールである「複式簿記」をベースに、現金の出入りや商品の売買など、日常業務でよく発生する取引について学びます。
簿記3級の試験は、5つの大問に分かれて出題されます。内容は決まっていて、それぞれの分野をしっかり対策しておけば得点源にできます。
5つの仕訳が出題され、各9点。
出題範囲:現金取引、掛取引、減価償却、貸倒引当金など。
対策ポイント:
基本的な仕訳パターンを繰り返し解く。パターン暗記ではなく、意味を理解しながら学ぶのが大切です。
出題例:補助簿(仕入帳・売上帳)、勘定記入(Tフォーム)
対策ポイント:
帳簿の構成と役割を理解すること。何の取引がどこに記録されるのかを整理すると解きやすくなります。
残高試算表や合計試算表が出題されます。
対策ポイント:
仕訳から勘定転記、そして試算表への集計の流れをつかむ。ケアレスミスを防ぐ丁寧さが求められます。
伝票会計(3伝票制・5伝票制)や、仕訳訂正がテーマになることがあります。
対策ポイント:
伝票会計を扱う企業は減っているものの、出題頻度は高め。ルールを押さえておきましょう。
精算表や損益計算書、貸借対照表の作成。
対策ポイント:
数字の流れを図として把握。特に精算表は仕訳→転記→集計→財務諸表という全体像を理解することが大事です。
60分という限られた時間内で全問を解くには、戦略が不可欠です。
最低5分は見直し時間を取ることで、計算ミスを防げます。
仕訳は、解き方というより「反復練習」がカギです。代表的な仕訳を一部紹介します。
取引内容 | 借方 | 貸方 |
---|---|---|
現金で商品を仕入れた | 仕入 | 現金 |
売上を掛けにした | 売掛金 | 売上 |
商品を返品された | 売上 | 売掛金 |
備品を購入 | 備品 | 現金 or 買掛金 |
給料を支払った | 給料 | 現金 |
この基本原則をベースにすれば、複雑な取引も冷静に整理できます。
簿記3級の第2問は、帳簿や勘定に関する知識が問われる問題です。毎年、形式は異なりますが、主に以下の3つが出題されます。
それぞれの出題形式に対して、具体的な解き方を見ていきましょう。
5つの取引が与えられ、仕入帳または売上帳に記入する形式。
3月1日 ABC商店より商品¥50,000を掛で仕入れた。
→仕入帳に以下のように記入:
日付:3月1日 取引先:ABC商店 内容:商品仕入 金額:¥50,000
数個の取引が与えられ、現金勘定や売掛金勘定などをTフォームで完成させる問題。
3月5日:売上¥30,000を現金で受け取った。
→仕訳:現金 30,000 / 売上 30,000
→現金勘定に「借方:3月5日 売上 30,000」
→売上勘定に「貸方:3月5日 現金 30,000」
与えられた数日間の取引を、現金出納帳に記入する問題。
簿記3級の第3問は、「試算表の作成」に関する問題で、30点前後と配点が高く、合否を左右する重要な問題です。複数の取引を仕訳し、それをもとに各勘定科目の金額を集計する必要があります。
しっかりと手順をおさえ、ケアレスミスを防げば得点源にできる問題です。
試算表(しさんひょう)は、帳簿に記録された取引の金額が正しく集計されているかを確認するための一覧表です。簿記3級でよく出題されるのは以下の2種類です。
(1) 商品¥50,000を仕入れ、代金は掛けとした
→ 仕訳:仕入 50,000 / 買掛金 50,000
各勘定科目ごとに、借方・貸方の金額を合計します。
現金勘定:
合計試算表なら勘定ごとの借方合計・貸方合計
残高試算表なら借方残高・貸方残高を記入します。
勘定科目 | 借方残高 | 貸方残高 |
---|---|---|
現金 | 60,000 | |
売上 | 100,000 | |
仕入 | 50,000 | |
買掛金 | 50,000 | |
資本金 | 500,000 | |
備品 | 20,000 |
よくあるミス | 解決策 |
---|---|
仕訳の貸借逆 | 各仕訳の意味をしっかり理解する(暗記より理解) |
転記ミス(数字違い) | 一度メモしてから清書、電卓使用で検算 |
勘定科目の重複や記入漏れ | 使った勘定を一覧でチェックする表を用意しておく |
簿記3級の第4問は、伝票会計や訂正仕訳に関する問題が中心です。
配点は10点前後とやや少なめですが、手堅く得点できる分野なので、落とさずに取りたいところです。
伝票とは、企業の取引内容を記録・管理するための「証拠書類」です。簿記3級では、特に3伝票制がよく出題されます。
まず、取引内容を仕訳します。これが解答のベースになります。
取引の種類 | 該当伝票 |
---|---|
現金の受取 | 入金伝票 |
現金の支払 | 出金伝票 |
現金を使わない取引 | 振替伝票 |
5月1日 商品¥30,000を現金で販売した
→仕訳:現金30,000 / 売上30,000
→解答:
・入金伝票(現金が増えたから)
・摘要欄:売上
・金額:30,000円
「間違った仕訳をしてしまった」ケースで、その修正方法を問う問題です。
実務でもよくある処理なので、しっかり覚えておきましょう。
訂正仕訳には主に2種類あります。
→ 誤って仕訳を2回してしまった
→ 正しい仕訳を 逆仕訳で1回分取り消す
例:商品¥10,000を仕入れた仕訳を2回してしまった
誤:仕入10,000 / 買掛金10,000(×2)
訂正:買掛金10,000 / 仕入10,000(1回分を逆仕訳)
→ 金額だけ間違った(例:本当は5,000円→誤って8,000円)
方法:差額を仕訳で調整する
誤:備品8,000 / 現金8,000
正:備品5,000 / 現金5,000
差額:3,000円分を取り消す
→訂正仕訳:現金3,000 / 備品3,000
よくあるミス | 防ぐための対策 |
---|---|
入金・出金伝票を混同する | 「現金が動いたか?」を基準に判断する |
振替伝票を書く場面で入出金伝票を選ぶ | 売掛金・買掛金などの掛取引=振替伝票 |
訂正仕訳で仕訳の方向を間違える | 誤仕訳→正仕訳を両方書き出して比較する習慣を |
簿記3級の第5問は、**精算表または財務諸表(損益計算書・貸借対照表)**の作成問題です。
配点は25点前後と高く、合格のカギを握る問題の一つです。
以下のいずれか、または組み合わせが出題されます:
**精算表(せいさんひょう)**とは、決算整理前の試算表に対して、決算整理事項を反映し、損益計算書・貸借対照表の数字を導くための一覧表です。
1枚の表で、以下の3つのステップを同時に整理できます:
問題文に与えられる「試算表(残高)」の金額を、精算表の「試算表欄」に写します。
問題文には「決算整理事項」が5〜6個程度提示されます。それぞれを仕訳にして整理しましょう。
「当期の保険料のうち¥2,000は翌期分である」
→ 前払費用を使う
→ 仕訳:前払保険料2,000 / 保険料2,000
決算整理仕訳を、精算表の「修正記入欄」に記入します。
試算表+修正記入の結果をもとに、それぞれの金額を「損益計算書欄」「貸借対照表欄」に記入します。
勘定科目 | 記入欄 |
---|---|
売上、仕入、給料、保険料など | 損益計算書欄(費用・収益) |
現金、売掛金、備品など | 貸借対照表欄(資産・負債・資本) |
損益計算書欄と貸借対照表欄、それぞれの借方・貸方の合計金額が一致しているか確認します。
稀に、精算表ではなく財務諸表(損益計算書や貸借対照表)そのものを作成する問題も出題されます。
ミス内容 | 対策 |
---|---|
修正記入欄の左右を間違える | 必ず仕訳を紙に書いてから転記 |
同じ勘定科目が2つに分かれる(例:保険料と前払保険料) | 合計・差引を正確に計算する |
損益と貸借の区別ミス | 勘定科目の「性質」を覚える(資産・負債・収益・費用) |
借方・貸方の合計が合わない | 電卓で再集計、1行ずつチェック |
一般的には30〜50時間が必要とされます。1日1〜2時間なら、1ヶ月〜2ヶ月で合格レベルに達します。
簿記3級は、近年CBT方式(パソコン上で受験)も選べるようになっています。
簿記3級は、独学でも十分に合格が狙える資格です。ただし、内容が体系的である分、最初のうちは理解が難しく感じることもあります。そんなときは「仕訳のパターン化」「流れを図で捉える」「過去問で慣れる」といった勉強法を意識してみてください。
経理職を目指す方はもちろん、会社経営に関心のある方や副業で帳簿管理をする人にも役立つ知識です。まずは、毎日少しずつでも手を動かして、合格を目指していきましょう!