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PostgreSQLのVACUUMとは?仕組みと実行タイミング、運用のベストプラクティスを解説

PostgreSQLを運用していると、一度は「VACUUM(バキューム)」という言葉に出会います。VACUUMはPostgreSQL独自の仕組みで、データベースのパフォーマンスを保つために欠かせない重要なメンテナンス処理です。しかし、VACUUMの役割や実行タイミング、手動と自動の違いなどについて、正しく理解している人は意外と少ないかもしれません。
本記事では、PostgreSQLのVACUUMの基本から、実運用での活用方法までをわかりやすく解説します。これからPostgreSQLを学ぶ人も、既に使っている人も、VACUUMの仕組みをしっかり理解しておくことで、安定したデータベース運用に役立てましょう。


VACUUMとは何か?PostgreSQL特有の仕組み

PostgreSQLは、MVCC(Multi-Version Concurrency Control)という仕組みを採用しており、データの整合性を保ちながら並列処理を可能にしています。
しかしこの仕組みでは、データの更新や削除があっても、すぐには古いバージョンの行(tuple)が消されることはありません。代わりに、新しいバージョンの行が作成され、古い行は「不要な行(デッドタプル)」としてテーブルに残り続けます。

このデッドタプルが増え続けると、テーブルのサイズが肥大化し、クエリの性能が劣化していきます。
そこで登場するのが「VACUUM」処理です。VACUUMは、これら不要な行を物理的に削除し、テーブルを整理することで、パフォーマンスを維持します。


VACUUMの種類:通常、FULL、ANALYZEの違い

PostgreSQLには、いくつかのVACUUMの種類があります。状況に応じて使い分けることが重要です。

通常のVACUUM

VACUUM;

これは不要なタプルを削除しますが、テーブルのサイズは縮まりません。処理中も他のクエリに影響が少ないため、定期的に自動実行される仕組み(autovacuum)でも使われています。

VACUUM FULL

VACUUM FULL;

デッドタプルを削除するだけでなく、テーブルの物理サイズを縮小します。効果は大きいですが、排他ロックがかかり、処理中はテーブルにアクセスできなくなるため、運用には注意が必要です。

VACUUM ANALYZE

VACUUM ANALYZE;

VACUUMに加えて、統計情報も収集します。この統計情報はクエリプランナーが最適な実行計画を選ぶために利用されるので、定期的な実行が推奨されます。


Autovacuum(自動バキューム)の仕組み

PostgreSQLでは、自動的にVACUUMを実行する「autovacuum」という仕組みが標準で有効になっています。
postgresql.conf で細かいチューニングが可能で、以下のようなパラメータが関係しています。

  • autovacuum_vacuum_threshold
  • autovacuum_vacuum_scale_factor
  • autovacuum_naptime

これらの値を調整することで、どのくらいの頻度で自動バキュームが実行されるかをコントロールできます。たとえば、トラフィックの多いテーブルでは、閾値を下げることでより頻繁にVACUUMを走らせることができます。

autovacuumは便利ですが、負荷が集中する時間帯に動いてしまうと、性能低下の原因になることもあるため、監視と調整が必要です。


実行タイミングはいつがベスト?VACUUMの運用ポイント

VACUUMの実行タイミングを間違えると、かえってシステム全体に負荷がかかり、パフォーマンスが落ちる可能性があります。以下のような方針で運用するとよいでしょう。

  • 通常のVACUUM は自動に任せる(ただし監視は必要)
  • VACUUM FULL は夜間やメンテナンス時間に手動実行
  • 大規模な更新処理の後 にVACUUM ANALYZEを実行

また、pg_stat_user_tables や pg_stat_all_tables の n_dead_tup(死んでいるタプル数)を監視することで、どのテーブルがVACUUMを必要としているかを判断できます。


VACUUMの実行例とログの確認方法

以下は手動でVACUUMを実行するシンプルな例です。

VACUUM ANALYZE my_table;

実行後はログや統計ビューを確認して、効果をチェックしましょう。ログ出力は以下のように設定します。

log_autovacuum_min_duration = 0

この設定により、自動バキュームの実行がすべてログに記録されるようになります。ログファイルに記録された内容から、どのテーブルにどのくらい時間がかかったのか、デッドタプル数がどれだけ減ったのかを確認できます。


VACUUMでよくあるトラブルとその対策

テーブルロックが発生する

VACUUM FULLを実行すると、排他ロックがかかるため、他のセッションがテーブルにアクセスできなくなります。事前にメンテナンスウィンドウを設定し、ユーザー影響が少ない時間帯に実行しましょう。

ディスク容量の問題

VACUUMはディスクI/Oを伴います。また、一時的にディスク使用量が増えることもあるため、ディスク容量には常に余裕を持たせておきましょう。

自動バキュームが追いつかない

頻繁に更新されるテーブルでは、autovacuumが処理しきれない場合があります。その際は、手動でVACUUMを補完する、autovacuum設定を強化する、またはパーティショニングを検討することが対策となります。


まとめ:VACUUMはPostgreSQL運用の要

PostgreSQLにおいて、VACUUMは性能維持とデータ整合性を支える重要な処理です。MVCCの仕組みによって発生する不要なデータを定期的に掃除することで、クエリ性能の劣化を防ぎます。

自動バキュームに頼りつつも、状況に応じて手動でVACUUM FULLやANALYZEを適切に実行できるようになると、より効率的な運用が可能になります。

データベースの運用は、「見えない部分のメンテナンス」が鍵です。VACUUMをしっかり理解し、賢く使いこなして、快適で安定したPostgreSQLライフを手に入れましょう。

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