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生成AIの仕組みを徹底解説:RAG・ファインチューニング・ベクトルDB・モデルの全体像

近年、ChatGPTをはじめとする生成AIがビジネスや日常生活に広く浸透し、多くの人がその便利さを実感しています。
しかし「どうしてAIは自然な文章を作れるのか?」「RAGやファインチューニング、ベクトルDBとは何か?」といった仕組みの部分は意外と知られていません。
この記事では、生成AIの基盤であるモデルから、精度を高めるためのファインチューニング、知識を拡張するRAG(Retrieval-Augmented Generation)、さらにその裏側を支えるベクトルデータベースまでを体系的に解説します。
専門用語もわかりやすく噛み砕いて説明しますので、AIの仕組みを基礎から理解したい方におすすめです。


生成AIの仕組みとは

生成AI(Generative AI)とは、大量のテキストや画像、音声などのデータを学習し、新しいコンテンツを自動的に生成するAIのことです。
特に文章生成の分野では「LLM(Large Language Model:大規模言語モデル)」が中心的役割を担っています。

例えばChatGPTは、インターネット上の膨大な文章を学習し、「次に来る単語」を予測する形で自然な文章を生み出します。これは単なる検索ではなく、文脈を理解した上で新しい文章を「創造」している点が大きな特徴です。

この仕組みの根底にあるのがモデルです。そしてモデルの能力を特定用途に合わせて調整する技術がファインチューニング、不足する知識を補う仕組みがRAG、そのRAGを実現する基盤がベクトルDBです。


モデル(LLM)の基本

「モデル」とは、AIが持つ知識と推論能力の土台です。人間で例えるなら「脳」にあたります。
大規模言語モデルは数百億から数兆のパラメータを持ち、それらを調整することで文章生成や質問応答を可能にします。

学習の流れは以下のようになります。

  1. 大量のテキストデータを入力
  2. 単語や文のパターンを統計的に学習
  3. 「この文脈では次に来る単語は〇〇」と予測する能力を獲得

結果として、文脈に沿った自然な回答や記事、要約などを出力できるのです。

ただし、モデルには学習時点の知識に依存する限界があります。最新の情報や企業固有の文書には対応できないこともあるのです。ここで登場するのがファインチューニングRAGの技術です。


ファインチューニングとは

ファインチューニング(Fine-tuning)とは、既存のモデルに追加学習を行い、特定の用途や専門領域に適応させる技術です。

具体例

  • 医療用に特化したモデル
  • 法律相談に対応するモデル
  • 社内マニュアルを学習させたカスタムAI

例えば、一般的なChatGPTは「病院の予約方法」や「契約書の基本構造」など一般的な回答はできますが、医療の専門用語や自社規定に沿った詳細までは答えにくいことがあります。
そこで、医療論文や社内マニュアルを追加学習させることで、その分野に強いAIを作り出すのです。

メリットとデメリット

  • メリット:高精度、分野特化、誤答の減少
  • デメリット:学習コストが高い、更新が大変

ファインチューニングは「深く狭く」モデルを強化するイメージです。


RAG(Retrieval-Augmented Generation)とは

RAGは「検索拡張生成」と訳されます。これはAIの回答に外部知識を組み合わせる手法です。

仕組みは以下の通りです。

  1. ユーザーが質問をする
  2. AIが質問の意味を理解し、関連する文書をベクトルDBから検索
  3. 見つかった文書をAIが読み込み、回答に反映

つまり、AIが「自分の記憶(モデルの知識)」だけで答えるのではなく、「外部の辞書やデータベース」を参照しながら答えるイメージです。

具体例

  • 最新の法改正情報を取り入れた法律相談
  • 社内文書を読み込んで答える業務ヘルプデスク
  • FAQデータベースを参照するカスタマーサポート

RAGを使うと、モデルを再学習することなく、常に最新の情報を取り込める点が大きな利点です。


ベクトルDBとは

RAGを支える重要な仕組みが**ベクトルデータベース(Vector Database)です。

ベクトルDBは「文章や画像を数値ベクトルとして保存し、高速に検索できるデータベース」です。
通常のデータベースは「完全一致検索」が得意ですが、文章検索では「似た内容」を探すことが重要です。

  • 「犬」と「子犬」は意味的に近い
  • 「車」と「自動車」も似ている
  • 「犬」と「車」は遠い

これを数値空間(ベクトル空間)で表現し、ユーザーの質問と近い文章を探すのがベクトルDBの役割です。

代表的なベクトルDBには以下があります。

  • Pinecone
  • Weaviate
  • Milvus
  • FAISS(Facebook AI Research製ライブラリ)

これらを活用することで、AIは「意味的に近い情報」を素早く引き出し、自然な回答に組み込めるようになります。


モデル × ファインチューニング × RAG × ベクトルDBの関係

ここまで紹介した要素は独立して存在するのではなく、組み合わせて使われます。

  • モデル:AIの脳
  • ファインチューニング:脳に専門的な知識を追加学習
  • RAG:外部の知識をリアルタイムで取り込み
  • ベクトルDB:その知識を効率的に探す辞書

例えば、社内FAQに対応するAIを作る場合は以下の流れになります。

  1. 基盤モデル(GPTなど)を利用
  2. 社内用語や手順をファインチューニングで学習
  3. 常に最新のマニュアルや報告書はベクトルDBに保存
  4. ユーザーの質問時にRAGで検索 → 回答に反映

これにより、AIは「知識が古い」「分野に弱い」といった課題を解消できるのです。


生成AIの今後の展望

生成AIは今後、さらに多くの分野に浸透していきます。特に注目されるのは以下の方向性です。

  1. 企業ごとのカスタムAI
    ファインチューニングやRAGを組み合わせ、会社固有の情報に対応。
  2. マルチモーダル化
    テキストだけでなく、画像・音声・動画を統合的に扱う。
  3. プライバシー重視
    社内データを安全に扱うため、オンプレミス型のベクトルDBやモデル活用が増加。
  4. 自律エージェント化
    単に回答するだけでなく、タスクを自動的に実行するAIが普及。

生成AIの仕組みを理解しておくことは、これからの時代を生き抜くための重要な知識になるでしょう。


まとめ

この記事では、生成AIを構成する重要な要素を解説しました。

  • モデル:AIの基盤となる大規模言語モデル
  • ファインチューニング:特定分野に適応させる追加学習
  • RAG:外部知識を検索して回答に活用する仕組み
  • ベクトルDB:意味検索を実現するデータベース

これらを理解することで、AIが「なぜ人間のように答えられるのか」「どうやって最新情報を取り込めるのか」が見えてきます。
生成AIは決して魔法ではなく、明確な仕組みの積み重ねによって成り立っているのです。

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