現代のビジネスでは、日々膨大な量のデータが生成され、それをいかに活用できるかが企業の競争力を左右しています。そんな中で注目を集めているのが「データレイク」です。データウェアハウスとの違いや、活用方法、導入に役立つツールについてわかりやすく解説します。初めてデータレイクに触れる方にも理解できる内容になっていますので、ぜひ最後までご覧ください。
データレイクとは、さまざまな形式のデータをそのまま保存しておける大容量のストレージシステムのことです。構造化データ(例:ExcelやSQL)、半構造化データ(例:JSONやXML)、非構造化データ(例:画像や動画、PDFなど)を区別なく格納することができるのが特徴です。
従来のデータウェアハウスは、整理されたデータを分析目的で保管することに特化していますが、データレイクは「とりあえず全て保管しておいて、あとで必要に応じて加工・分析する」という柔軟な考え方が基本です。
この考え方により、リアルタイム分析、機械学習、AI活用などにも活かせる環境が整うのです。
データレイクとよく比較されるのが「データウェアハウス(DWH)」です。違いを表にして見てみましょう。
項目 | データレイク | データウェアハウス |
---|---|---|
データの形式 | すべての形式(構造化・非構造化) | 構造化データが中心 |
スキーマ | 書き込み時に不要(スキーマオンリード) | 書き込み時に必要(スキーマオンライト) |
コスト | 比較的安価 | 高価になりがち |
主な用途 | 機械学習、AI、探索的分析 | 定型レポート、BI分析 |
処理スピード | 分析前の加工が必要 | 即時性あり |
つまり、より柔軟で実験的な分析をしたい場合はデータレイクが、整った業務レポートを重視するならデータウェアハウスが向いているということになります。
では、実際にデータレイクはどんな場面で役立つのでしょうか。いくつか代表的な活用シーンをご紹介します。
WebアクセスログやSNSデータ、アンケート結果など、さまざまな形式のデータを統合して顧客行動を分析できます。
センサーやデバイスから取得した時系列データをリアルタイムで保存し、故障予測や保守タイミングの判断に活用されます。
画像、音声、テキストなど多様なデータを保持して、AIモデルの学習データとして利用できます。
法的な保存義務がある業務ログや電子書類を一元管理できます。後で必要になったときにすぐに抽出可能です。
データレイクには多くのメリットがありますが、導入する上での注意点も存在します。
したがって、導入時には「何のためにデータを集めるのか」「どう加工・分析するか」を見据えた設計が不可欠です。
現在では、クラウドを利用すれば比較的手軽にデータレイクを構築することが可能です。代表的なサービスをいくつか紹介します。
もっとも一般的なクラウド型ストレージ。AWS GlueやAthena、Redshiftと組み合わせることで、強力なデータレイク基盤を構築可能です。
Azureベースでのデータ分析に最適化されたストレージ。大規模な企業に人気です。
GCPでのデータ活用に向いた構成。BigQueryを使えば高速なクエリも実現できます。
オンプレミスでの構築に強いオープンソースの代表格。独自に設計する場合には柔軟性が高いですが、管理には高いスキルが求められます。
「データレイクは大企業向け」と思われがちですが、クラウドサービスの登場により、中小企業でも十分活用可能です。
たとえば、以下のような工夫で導入ハードルを下げられます。
最初はWebログの蓄積や営業活動の履歴保存など、身近なところから始めるのがおすすめです。
データレイクは、今やビジネスにとって欠かせない「情報の資産庫」です。未加工の多様なデータを保持しておくことで、将来の分析や意思決定に役立つ大きな力になります。
もちろん、無計画にデータを溜めるのではなく、目的をもって整備・活用していくことが大切です。ツール選定や運用設計を工夫することで、中小企業でも無理なく導入できます。
今後ますます重要になるデータドリブン経営に備え、ぜひデータレイクの導入を検討してみてください。