Exchange Onlineを利用している企業で、社員数が多くなるにつれて「連絡先の検索が不便」「組織構造に沿った閲覧ができない」といった悩みが出てきます。そんなときに活躍するのが「階層型アドレス帳(Hierarchical Address Book、HAB)」です。HABを活用することで、Outlook上に組織図のような階層構造を実現し、連絡先の検索効率を大きく向上させることができます。この記事では、HABの基本的な仕組みからExchange Onlineでの活用方法、導入のメリット、注意点までを詳しく解説します。
HAB(Hierarchical Address Book)とは、Microsoft Exchangeが提供する機能のひとつで、ユーザーやグループを組織階層に沿って表示するアドレス帳です。
通常のアドレス帳は名前やメールアドレスのアルファベット順に並びますが、HABを使うと「本社 > 営業部 > 第一課 > 田中太郎」のような構成で表示され、部署ごとの関係性を視覚的に確認できるようになります。
HABはMicrosoft OutlookやOutlook on the Webで利用可能で、ユーザーが誰にどのように連絡を取るべきかを素早く判断できるようになるため、大規模組織にとって特に有効です。
Exchange Onlineでは、オンプレミスのExchangeと同様にPowerShellを使ってHABを設定することができます。以下は基本的な手順の概要です。
Connect-ExchangeOnline -UserPrincipalName youradmin@yourdomain.com
New-DistributionGroup -Name "Company" -DisplayName "Company" -Alias "Company" -OrganizationalUnit "Users"
Set-Group -Identity "Sales" -CustomAttribute1 "100"
Set-Group -Identity "Marketing" -CustomAttribute1 "200"
Add-DistributionGroupMember -Identity "Sales" -Member user1@domain.com
Set-OrganizationConfig -HierarchicalAddressBookRoot "Company"
階層型アドレス帳を利用することによって得られるメリットは多岐にわたります。以下に代表的な利点を紹介します。
部署名や役職に基づいてユーザーを探せるため、階層をたどることで誰に連絡をすればよいかが一目でわかります。新人社員でも迷わず連絡先を探せるのが大きなメリットです。
HABにより、組織間の垣根を越えた連携がしやすくなります。特に部門間でプロジェクトを進める際には、必要な関係者を素早く把握し、メール送信や会議招集が容易になります。
Microsoft Outlookにシームレスに統合され、既存のワークフローを変えることなく利便性を高められます。Outlookのアドレス帳内に自然な形で階層が表示されるため、ユーザー教育も最小限で済みます。
HABの導入には以下のような注意点もあります。
HABに表示される情報は、管理者がPowerShellを使って構成した内容に基づいて表示されるため、人事異動があった際には手動で更新作業が必要です。
階層構造を実現するためには、部署ごとに配布グループを作成し、それぞれにユーザーを所属させる必要があります。適切な命名規則と運用ルールをあらかじめ整備しておくことが重要です。
現時点では、モバイル版Outlookなど一部のクライアントではHABの階層表示が反映されない場合があります。利用環境を確認したうえで導入を検討しましょう。
Exchange Onlineの階層型アドレス帳(HAB)は、大規模な組織や部署の多い会社にとって非常に便利な機能です。
組織構造に沿ったアドレス帳の表示により、社内コミュニケーションの円滑化と効率化を実現できます。導入には一定の設定作業が必要ですが、日常の業務で得られる利便性はその労力に十分見合うものです。
Outlookの利活用をさらに推進したい企業にとって、HABはぜひ取り入れたいソリューションといえるでしょう。