法要や偲ぶ会、葬儀後の会食などで行われる「献杯」は、故人を偲び、参列者が思いを一つにする大切な儀式です。乾杯とは違い、喜びを分かち合うのではなく、静かに故人の冥福を祈る意味を持っています。そのため、挨拶や言葉選びには慎重さが求められます。
本記事では、献杯の意味やマナーを解説したうえで、実際に使える挨拶例文を場面別に紹介します。遺族代表や参列者の立場など、状況に応じた言葉を準備しておけば、当日も安心して臨むことができるでしょう。
献杯は「故人に杯を捧げる」という意味があります。乾杯が「健康や繁栄を祈る」ために行われるのに対し、献杯は「冥福を祈り、静かに杯を上げる」ことを目的としています。
乾杯のように声を張り上げる必要はなく、落ち着いた声で「献杯」と述べるのが一般的です。グラスを合わせる動作も不要で、静かに目の高さまで持ち上げて一口いただくのが基本的なマナーです。
献杯の挨拶には、一定の流れがあります。以下の順序で進めると、落ち着いた進行ができます。
マナーとしては、
といった点に注意するとよいでしょう。
遺族代表の挨拶は、参列者への感謝を込めながら、故人を偲ぶ言葉を中心にまとめます。
例文1
「本日は、亡き父 ○○ のためにこのようにお集まりいただき、誠にありがとうございます。父も生前、皆さまとのご縁を大切にしておりました。きっと今も喜んでいることと思います。それでは、故人 ○○ の冥福を祈りまして、献杯。」
例文2
「本日はお忙しい中、母 ○○ の偲ぶ会にお集まりいただき、心より御礼申し上げます。母はいつも明るく、周囲の人々を気遣う人でした。本日も皆さまに囲まれ、きっと微笑んでいることでしょう。それでは皆さま、母の冥福を祈りまして、献杯。」
友人や知人代表として挨拶をする場合は、故人との思い出を短く紹介すると心に残ります。
例文3
「私は故人 ○○ さんと学生時代からの友人でございます。いつも優しく、仲間を大切にする人でした。本日こうして皆さまと共に○○さんを偲べることを嬉しく思います。それでは、○○さんのご冥福を祈り、献杯。」
例文4
「○○さんとは長年の職場の同僚として共に過ごしてまいりました。仕事に真摯に取り組み、周囲への思いやりを欠かさない方でした。今夜はその思い出を胸に、静かに杯を捧げたいと思います。献杯。」
四十九日や一周忌など、法要後の会食の場での献杯挨拶は、やや改まった表現が好まれます。
例文5
「本日は○○の一周忌に際し、皆さまにお集まりいただき、誠にありがとうございます。生前は多くの方に支えられ、○○も幸せでございました。今宵は思い出を語り合いながら、故人を偲んでいただければ幸いです。それでは、献杯。」
例文6
「本日は故○○の三回忌にご参列いただき、ありがとうございます。皆さまのおかげで無事に法要を終えることができました。○○も皆さまに囲まれて安らかに眠っていることと思います。献杯。」
献杯では、冥福を祈る場であるため、以下のような言葉は避けるべきです。
また、グラスを打ち合わせたり、大きな声で叫んだりするのもマナー違反となります。
状況によっては、簡潔にまとめたい場合もあります。その際には以下のように短い言葉で十分です。
例文7
「故○○の冥福を祈りまして、献杯。」
例文8
「皆さまと共に○○さんを偲び、心を込めて献杯いたします。」
献杯を終えた後は、静かにグラスを口に運びます。すぐに雑談を始めるのではなく、少し間を置くと雰囲気が引き締まります。その後、会食や懇談が始まりますが、故人を偲ぶ言葉を交えながら過ごすとよいでしょう。
献杯は、故人への敬意と感謝を込めた大切な儀式です。挨拶は長くなくてもよく、落ち着いた言葉で参列者と心を一つにすることが大切です。遺族代表として述べる場合、友人として語る場合、法要後の場面など、立場に応じた言葉を事前に準備しておくと安心できます。
本記事で紹介した例文を参考に、自分の言葉で故人を偲び、心を込めた献杯の挨拶をしてみてください。