会社員や公務員の方が加入する「厚生年金保険」。毎月のお給料やボーナスから天引きされる金額は決して小さくなく、「どうやって決まっているの?」と疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。実は厚生年金保険料は、単純に給与の何%という形で決まっているわけではなく、「標準報酬月額」や「標準賞与額」といった仕組みに基づいて算出されています。この記事では、厚生年金保険料の決まり方をわかりやすく解説し、毎月の給与からどのように保険料が引かれているのか、将来の年金額とどうつながっているのかを詳しく見ていきます。
厚生年金保険は、会社員や公務員などが加入する年金制度で、国民年金に上乗せされる「2階建て」の仕組みを持っています。自営業者やフリーランスは国民年金のみですが、厚生年金に加入している人は、老後に受け取る年金額が国民年金より多くなるのが特徴です。
また、老齢年金だけでなく、病気やケガで働けなくなった場合の「障害厚生年金」、加入者が亡くなったときに遺族が受け取れる「遺族厚生年金」などの保障も含まれているため、生活を支える大切な制度といえます。
厚生年金保険料の金額は「標準報酬月額」と「標準賞与額」を基に決まります。
この2つに「厚生年金保険料率(2025年現在:18.3%)」をかけて算出します。なお、保険料は会社と労働者が折半するため、実際に給与から天引きされるのはその半分の 9.15% となります。
標準報酬月額は、4月から6月に支払われた給与を平均して決められ、その年の9月から翌年8月まで適用されます。
例えば、基本給30万円+残業代5万円+通勤手当2万円=37万円をもらっている人の場合、標準報酬月額は「38万円の等級」に該当します。この「等級」は全国一律で決まっており、1等級(8.8万円)から32等級(65万円)まで幅広く用意されています。
つまり、毎月の給与が1円単位で保険料に反映されるのではなく、ある程度の幅をもって「区切られた額」で計算されるのがポイントです。
ボーナスからも厚生年金保険料は天引きされます。これを計算する基準が「標準賞与額」です。
支給された賞与額を1,000円未満切り捨てにした金額が標準賞与額となり、そこに保険料率をかけて計算します。
例:ボーナス50万円の場合
賞与の上限は年間で 573万円まで と定められており、それを超える部分には保険料はかかりません。
厚生年金の保険料率は、かつて段階的に引き上げられてきましたが、現在(2025年)は 18.3% で固定されています。
この18.3%を労使折半する形で、会社と従業員がそれぞれ9.15%ずつ負担します。例えば標準報酬月額が30万円なら、月々の保険料は以下のように計算されます。
この仕組みによって、従業員の負担が軽減されつつも制度が維持されています。
具体的にどのくらいの給与で、どのくらいの厚生年金保険料がかかるのかをシミュレーションしてみましょう。
このように給与が上がるほど保険料も増えますが、将来の年金額も増える仕組みになっています。
厚生年金保険料は単に「今の負担」ではなく、将来の「受け取り額」に直結しています。
年金額は大きく分けて以下の式で計算されます。
つまり、現役時代にどれだけの標準報酬でどれだけの期間加入していたかによって年金額が決まります。高い給与を長期間もらっていた人ほど、将来の年金額が増える仕組みです。
はい、基本給だけでなく、残業代や通勤手当なども含まれます。これらもすべて「報酬」として扱われるため、保険料計算に反映されます。
昇給や降給があった場合、「随時改定」という手続きが行われ、標準報酬月額が見直されます。これにより、適切な保険料が反映される仕組みになっています。
給与明細に「厚生年金保険料」として天引き額が記載されているほか、日本年金機構の「ねんきんネット」でも確認できます。
厚生年金保険料は、「標準報酬月額」と「標準賞与額」を基にして決まり、保険料率18.3%を会社と従業員が折半して負担しています。給与やボーナスの増減に応じて保険料も変わり、将来の年金額にも直結する重要な仕組みです。
一見すると複雑に見えますが、実は「給与や賞与をもとに保険料が決まる」というシンプルな仕組みです。毎月の給与明細にある「厚生年金保険料」は、単なる支出ではなく、将来の生活を支える投資でもあると理解すると、納得感を持てるのではないでしょうか。