ITや設備更新のプロジェクトに関わると、「要件定義書」「仕様書」「設計書」といったドキュメントを作成・確認する場面が多くあります。
しかし、それぞれの役割や違いが曖昧になっていることも少なくありません。今回の記事では、UPS(無停電電源装置)の更新プロジェクトをサンプルに、要件定義書・仕様書・設計書の違いを明確にし、それぞれのドキュメントがどのような内容を含むべきかを具体的に解説します。実務でそのまま応用できるよう、現場目線で分かりやすく紹介していきます。
要件定義書は、「なぜこのプロジェクトを行うのか」「何を達成したいのか」といった目的や背景、制約条件を明確にするドキュメントです。
UPS交換プロジェクトにおいては、以下のような背景があると想定されます。
背景の例:
要件定義書に記載すべき項目:
この段階では、「どの製品を使うか」「どう設置するか」といった話はしません。あくまで“目的”と“達成すべき条件”を明確にすることがポイントです。
要件定義で決めた「何を実現するか」に対して、「どのような仕様のものを使って実現するか」をまとめるのが仕様書です。
UPS交換プロジェクトの場合、次のような内容が仕様書に含まれます。
UPS機器の仕様例:
設置場所の仕様:
電源条件:
この仕様書がベンダーへの見積依頼や、機器選定時の比較基準となります。要件に対する具体的な技術的条件を記述するのがポイントです。
設計書は、仕様を実現するための“作業設計図”です。ネットワーク構成や接続方法、導入スケジュール、切り替え手順など、具体的な設置作業の指示を含みます。
UPS交換プロジェクトの設計書例:
設計書は“現場で何をどうするか”を分かるように書くことが重要です。作業者が見て迷わず動ける内容にすることを心がけましょう。
要件定義書・仕様書・設計書の3つは、それぞれ段階の異なるドキュメントですが、プロジェクトを成功させるためにはどれも欠かせません。
特にITや設備保守では、誰か1人の属人的な判断ではなく、文書による共有と合意がトラブルを防ぎます。
UPSの交換は小さなプロジェクトに見えるかもしれませんが、これを丁寧に文書化することで、次回以降の資産更新にも役立つ“ナレッジ”になります。
実際の現場では、このような文書をテンプレート化しておくとスムーズです。小さな改善の積み重ねが、組織のIT資産運用の品質を高めていきます。
プロジェクトの成功のカギは、「正しく書いて、正しく伝えること」。まずは小さなプロジェクトから、ドキュメント作成を意識して取り組んでみましょう。