宅地建物取引士(宅建)の試験では、税金に関する知識も問われます。中でも重要なのが「所得税」と「譲渡所得税」に関する問題です。特に不動産取引と深く関わる譲渡所得税は、計算方法や特例制度も含めて出題されやすい項目の一つです。この記事では、宅建試験に必要な範囲で所得税の全体像と、譲渡所得税のポイントについてやさしく解説します。はじめて学ぶ方でも理解できるよう、具体例を交えながら丁寧にまとめていますので、ぜひ学習の参考にしてください。
所得税とは、個人の1年間の所得に対して課される国税のことです。「所得」とは、収入から必要経費を引いた金額を指します。宅建試験では、所得税の中でも「所得の分類」と「課税方法」がよく問われます。
所得は次の10種類に分類されます:
このうち、宅建試験で最も重要なのが「譲渡所得」です。これは不動産などの資産を売却して得た利益に対して課される所得税のことで、不動産取引と非常に深く関係しています。
譲渡所得税は、不動産などの資産を売却して得た利益にかかる税金です。たとえば、自宅や土地、建物などを売って利益が出た場合、その利益に対して課税されます。これを「譲渡所得」と呼びます。
譲渡所得は次の式で求められます。
譲渡所得 = 譲渡収入金額 −(取得費 + 譲渡費用)− 特別控除
ここで使われる用語を整理しておきましょう。
譲渡所得税では、不動産の保有期間によって課税の区分が異なります。
注意点として、「所有期間」は売却した年の1月1日時点で5年を超えているかどうかで判定されます。
税率は次のように異なります。
区分 | 所得税 | 住民税 | 合計税率 |
---|---|---|---|
短期譲渡所得 | 30% | 9% | 39% |
長期譲渡所得 | 15% | 5% | 20% |
つまり、長期保有した不動産の方が税率が低くなり、有利になります。
宅建試験でよく出るのが、「居住用財産を譲渡した場合の特例」です。マイホームを売却した場合、一定の条件を満たせば譲渡所得から最大3,000万円まで控除が受けられます。
たとえば、譲渡所得が2,800万円だったとしても、3,000万円控除を適用すれば課税対象はゼロになります。
この制度は非常に有利であるため、試験でも繰り返し出題されます。
居住用財産の売却に伴って新しい住宅に買い替えた場合、「買換えの特例」が適用されることもあります。一定の要件を満たすと、譲渡益に対する課税を将来に繰り延べることができます。
また、不動産の「交換」が行われた場合、実質的な利益が発生しないとして、課税が繰り延べられる「交換の特例」も存在します。
これらは詳細な条件が複雑なため、宅建試験では「適用される・されない」の判断や、概要レベルでの理解が求められます。
宅建試験における所得税・譲渡所得税の出題ポイントは以下の通りです。
暗記だけでなく、問題を数多く解いて、出題のされ方に慣れることも重要です。
宅建試験では、「譲渡所得税」は頻出かつ得点源になりやすい分野です。計算問題も出題されますが、パターンを覚えれば難しくありません。所得の分類、譲渡所得の仕組み、居住用財産に関する特例は必ず押さえましょう。
日頃から繰り返し問題演習を行い、「税金」の分野を得意分野にしておくことが、合格への近道です。