会社で働くサラリーマンは、日々の業務に追われる中で法律を意識することは少ないかもしれません。
しかし、労働時間や残業代、有給休暇、パワハラ・セクハラといった問題は、すべて法律と深く関わっています。知らずに働いていると不利益を被ったり、逆に知らないうちに自分が加害者になってしまうこともあります。
本記事では、サラリーマンが最低限知っておきたい主要な法律をわかりやすく解説します。法律の知識は「自分の身を守る盾」であり、「働きやすい職場を作るための武器」にもなります。ぜひ参考にしてみてください。
労働基準法は、労働者を守るための最も基本的な法律です。労働時間、休憩、休日、残業代など、働き方のルールを定めています。
例えば、労働時間は原則として1日8時間、週40時間が上限とされています。これを超えて働かせる場合には、会社は「36協定」を結んだ上で残業代を支払う義務があります。
この法律を理解していないと、「サービス残業」や「過重労働」に巻き込まれても気づけません。逆に経営側に立つ場合も、知らずに法律違反をしてしまうリスクがあります。
入社時や転職時に交わす雇用契約のルールを定めたのが労働契約法です。
契約書には労働時間、業務内容、勤務地、給与などが明記されており、会社はこれを一方的に変更できません。例えば、急な配置転換や労働条件の悪化があった場合、合理的理由や本人の合意がなければ無効とされることがあります。
契約書は形式的に署名するものではなく、自分の働き方を縛る「ルールブック」として理解しておくことが大切です。
仕事中の事故や病気を防ぐための法律が労働安全衛生法です。職場における安全確保、メンタルヘルス対策、定期健康診断の実施などが義務付けられています。
最近では長時間労働や職場のストレスからうつ病を発症するケースも増えています。労働安全衛生法では、ストレスチェック制度の導入が義務化され、従業員50人以上の事業所では年1回の実施が必要です。
「健康第一」はサラリーマンにとっても最重要課題です。
この法律は、性別による差別を禁止し、均等な機会を保証することを目的としています。採用、昇進、配置、教育訓練などで「性別を理由に不利益を与えること」は違法です。
さらに、職場でのセクシュアルハラスメント防止も企業に義務付けられています。被害に遭った場合、相談窓口や外部機関に訴えることで解決に進むことができます。
知らずに差別的な言動をしてしまうと、自分自身が法律違反者になる可能性もあるため注意が必要です。
2020年から施行された改正労働施策総合推進法、いわゆる「パワハラ防止法」により、会社は職場のパワーハラスメントを防止する義務を負うことになりました。
具体的には、暴言・無視・過大な業務の押し付け・プライベートへの過干渉などがパワハラに該当します。企業は相談窓口の設置や調査体制の整備が求められています。
サラリーマンとしては、「これはパワハラにあたるのか?」を判断できる知識を持っておくことが大切です。
サラリーマンは顧客データや社内資料など、多くの個人情報を扱います。個人情報保護法は、それらの情報を正しく管理するための法律です。
例えば、USBに顧客リストを入れて持ち帰ったり、誤ってメールで情報を流出させたりすると、会社だけでなく本人も責任を問われる可能性があります。
リモートワークが普及した現在では、情報管理の重要性はますます高まっています。
プレゼン資料や社内報、SNS運用などで画像や文章を引用する機会も多いでしょう。その際に注意しなければならないのが著作権法です。
インターネット上に公開されている画像や文章は、自由に使えるとは限りません。無断使用は著作権侵害となり、損害賠償を請求されるリスクがあります。
引用ルールを守り、必要に応じて著作権者の許可を得る習慣を持つことが大切です。
2017年の改正で、サラリーマンにとっても身近な契約ルールが大きく変わりました。たとえば、保証人制度や消滅時効の期間、契約解除のルールなどです。
社内外で契約書を扱う場面は少なくなく、内容を理解しておくことはトラブル防止につながります。「署名・押印=安心」ではなく、条文を理解してリスクを把握する意識が必要です。
仕事だけでなく、サラリーマンの生活にも関わる法律が消費者契約法です。訪問販売やインターネット契約で不利な条件を押し付けられても、一定条件で契約を取り消すことができます。
クーリングオフ制度もこの法律に基づいており、知っているかどうかで損失を防げるケースが多くあります。日常生活の安心にも直結する法律です。
労働者が不当な扱いを受けたときに団体交渉を行う権利を定めたのが労働組合法です。労働組合は賃金交渉や職場改善のための活動を行います。
もし会社と個人で対立すると不利になりがちですが、労働組合を通じて交渉することで労働者の立場を守ることができます。サラリーマンとしては、「困ったときに相談できる仕組み」として覚えておくと安心です。
サラリーマンにとって、法律は難しい条文の世界ではなく「自分の働き方と生活を守る身近なルール」です。
労働基準法や契約関連の法律を押さえておくだけで、不利益を避け、安心して働ける環境を作ることができます。さらに、パワハラ防止や個人情報保護など、現代の働き方に即した法律も増えています。
「知らなかった」では済まされない時代だからこそ、最低限の法律知識を身につけ、自分と周囲を守ることが大切です。