手紙やビジネスメールでよく使われる「拝啓」という言葉。普段あまり深く考えずに使っている方も多いのではないでしょうか。しかし、拝啓には決まった使い方やルールがあり、誤った使い方をしてしまうと、相手に違和感を与えたり、失礼にあたってしまう場合もあります。本記事では、「拝啓」の意味や役割、実際の例文を交えてわかりやすく解説します。フォーマルな手紙だけでなく、ビジネスメールに応用できる文例も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
「拝啓(はいけい)」とは、手紙の冒頭で使う頭語(とうご)と呼ばれる言葉の一つです。
「拝」は「つつしんで」「敬意を持って」という意味、「啓」は「申し上げる」「お伝えする」という意味を持っています。つまり「拝啓」は「つつしんで申し上げます」という丁寧な挨拶の言葉です。
現代ではほとんどのフォーマルな手紙や挨拶状で用いられ、「こんにちは」に相当するかしこまった言葉と捉えるとイメージしやすいでしょう。
拝啓は単体で使うのではなく、必ず「結語」と呼ばれる言葉とペアで使います。
主なルールは以下の通りです。
拝啓の後には、時候の挨拶を添えるのが一般的です。季節感を表すことで、読み手に親しみや礼儀を伝えられます。
拝啓 陽春の候、皆様にはますますご健勝のこととお慶び申し上げます。
平素より格別のご厚情を賜り、心より御礼申し上げます。
拝啓 盛夏の折、いかがお過ごしでしょうか。
暑さ厳しき折ではございますが、皆様のご健康を心よりお祈り申し上げます。
拝啓 秋涼の候、貴社ますますご発展のことと存じます。
日頃よりご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
拝啓 寒冷の候、貴殿におかれましてはますますご清祥のことと拝察いたします。
本年も残すところわずかとなり、改めてご厚誼に感謝申し上げます。
近年では、メールで「拝啓」を使うケースは少なくなっています。理由は以下の通りです。
しかし、改まった依頼や挨拶メールでは「拝啓」を使う場合もあります。特に取引開始の挨拶や年始のご挨拶など、手紙に近い形式が求められる場面では有効です。
拝啓 時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
このたびは弊社とお取引を賜り、誠にありがとうございます。
今後ともご期待に添えますよう努力してまいりますので、何卒よろしくお願い申し上げます。
敬具
拝啓 新春の候、貴社ますますご繁栄のことと存じます。
さて、このたび弊社は下記の通り移転いたしましたのでご案内申し上げます。
これを機に社員一同気持ちを新たにし、業務に邁進する所存でございます。
敬具
拝啓 若葉の候、皆様にはますますご健勝のこととお慶び申し上げます。
私たちはこのたび結婚いたしました。ささやかながら新生活を始めましたので、今後とも温かく見守っていただければ幸いです。
敬具
拝啓 秋晴れの候、いかがお過ごしでしょうか。
私たち夫婦に新しい家族が誕生いたしました。母子ともに元気に過ごしております。
これからもご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。
敬具
拝啓はフォーマルな場面で使われますが、逆に使わない方がよいケースもあります。
この場合は「お疲れ様です」「こんにちは」で始める方が自然です。
「拝啓」は、手紙文化の名残として今も大切に使われている頭語です。フォーマルな場面で使うと、相手に対する敬意をしっかりと表すことができます。一方、日常的なメールや社内連絡では不要な場合も多いため、状況に応じて使い分けることが大切です。
本記事で紹介した例文を活用すれば、改まった挨拶状や重要なビジネス文書も安心して作成できるでしょう。ぜひ「拝啓」を上手に取り入れて、より信頼感のある文章を目指してください。