会社員や公務員として働く人が加入している厚生年金。毎月の給与から保険料が天引きされていますが、その金額は「標準報酬月額」という基準をもとに決まっています。標準報酬月額は単なる給与額とは異なり、社会保険の仕組みに合わせて区分された金額です。将来の年金額や、病気・出産時の給付金額にも関わる重要な要素ですが、仕組みをきちんと理解している人は意外と少ないのではないでしょうか。
本記事では、厚生年金における標準報酬月額の基本から、計算方法、等級表の仕組み、注意点までをわかりやすく解説します。これを読めば、自分の社会保険料がどのように決まっているのか、将来の年金額にどのようにつながるのかを理解できるようになります。
標準報酬月額とは、厚生年金や健康保険といった社会保険料を計算する際の基準となる金額のことです。実際の給与額をそのまま使うのではなく、一定の区分(等級)に当てはめて算出されます。
たとえば、月給が27万3,000円の人の場合、その金額がそのまま基準になるのではなく、「標準報酬月額28万円」という区分に割り当てられます。このように区切ることで、社会保険の計算を簡潔にし、事務処理の効率化を図っているのです。
標準報酬月額は、次の2つの役割を持っています。
つまり、標準報酬月額は「今」と「将来」の両方に大きな影響を与える数値なのです。
標準報酬月額の基準となる「報酬」には、基本給だけでなくさまざまな手当が含まれます。
一方で、賞与(ボーナス)は「標準賞与額」という別の基準で扱われるため、標準報酬月額には含まれません。
ここで注意が必要なのは、交通費や家賃補助といった一見給与とは別に思える手当も「報酬」として含まれることです。実際の給与明細を見て、自分がどの範囲まで含まれているのか確認してみるとよいでしょう。
標準報酬月額は、次の3つの方法で決まります。
このように、標準報酬月額は一度決まったらずっと同じではなく、毎年や給与の変動時に見直される仕組みになっています。
厚生年金の標準報酬月額は、現在1等級(88,000円)から32等級(650,000円)まで設定されています。
例:一部の等級
このように、実際の給与をある範囲ごとに区切って等級を割り当てています。自分がどの等級に当たるかを知っておくと、毎月の保険料や将来の年金額の目安を把握しやすくなります。
厚生年金の保険料は、標準報酬月額に「保険料率」をかけて算出されます。2025年現在、厚生年金保険料率は 18.3% です。
例えば、標準報酬月額が30万円の場合:
つまり、標準報酬月額が高いほど、保険料も高くなる仕組みです。
標準報酬月額は「現役時代の負担」だけでなく、「老後の年金額」にも直結します。
老齢厚生年金の年金額は、ざっくり言うと次の式で求められます。
年金額 = 平均標準報酬月額 × 給付乗率 × 加入月数
たとえば、平均標準報酬月額が30万円で40年間加入した場合、年金額は200万円以上/年となります。実際には経過措置や調整がありますが、標準報酬月額が高いほど将来の年金額も多くなるという基本は変わりません。
標準報酬月額について理解しておきたい注意点をまとめます。
とくに、扶養判定では標準報酬月額が一定額を超えると配偶者の扶養に入れなくなることがありますので注意が必要です。
標準報酬月額は、厚生年金や健康保険の保険料を計算するだけでなく、将来の年金額を左右する重要な仕組みです。
自分の標準報酬月額を理解することは、社会保険料の仕組みを正しく知る第一歩です。給与明細や通知書を確認し、自分の等級がどこにあるのかを把握しておきましょう。そうすることで、将来のライフプラン設計にも役立ちます。